一覧

ガイドライン外来診療2009

前立腺肥大症

  • 九州大学病院 泌尿器科 准教授  関   成人 
    九州大学病院 泌尿器科 髙橋 良輔

診断

  • 自覚症状を国際前立腺症状スコア(I-PSS)とQOLスコアで評価する。
  • 自覚症状が中等症以上と評価された場合、排尿機能を尿流率測定と残尿量測定で、前立腺容積を超音波検査で評価し、全般重症度を判定する。

治療

  • 軽症例では無治療経過観察も選択肢である。
  • 薬物療法の第1選択薬はα1受容体遮断薬である。
  • 過活動膀胱を併発している場合、残尿量が50ml以下であれば抗コリン薬の追加を考慮する。
  • 抗アンドロゲン薬は前立腺縮小効果を有するが、性機能障害や前立腺特異抗原(PSA)低下作用により前立腺癌の発見を遅らせる可能性がある。
  • 手術は最も効果的な治療法であり、経尿道的前立腺切除術(TURP)が標準的手術であるが、レーザーによる手術も開発され、同等の治療成績が報告されている。

処方例

    典型例に対する初期処方例(α1受容体遮断薬)

    (以下のいずれかを選択)

  • ハルナールD錠(0.2mg) 1錠 分1 朝食後
  • フリバス錠(50mg) 1錠 分1 朝食後
  • ユリーフカプセル(4mg) 2カプセル 分2  朝 夕 食後
  • 過活動膀胱を併発する場合

    (上記に以下のいずれかを併用)

  • ベシケア錠(5mg) 1錠 分1 朝食後
  • デトルシトールカプセル(4mg) 1カプセル 分1 朝食後
  • バップフォー錠*(20mg) 1錠 分1 朝食後
  • *保険適用注意

患者・家族への説明のポイント

  1. 一般的に年齢とともに前立腺は肥大し大きくなるが個人差はある。
  2. 前立腺癌とは直接関係ないが、併発することはある。
  3. 前立腺が腫大していても症状がなければ必ずしも治療する必要はない。
  4. α1受容体遮断薬は膀胱出口部の閉塞を改善し、症状を改善するが、前立腺を縮小する働きはない。
  5. 抗アンドロゲン薬には性機能障害を惹起する可能性がある。また前立腺癌の腫瘍マーカーであるPSAを低下させる働きがある。
  6. 手術は最も効果的な治療法であり、標準的方法は経尿道的切除術である。
  7. 残尿の多い状態を放置すると不可逆性の上部尿路合併症を生じる可能性がある。
  8. 多量の飲酒、総合感冒薬などの内服により尿閉となる可能性がある。

どのような場合に専門医に紹介すべきか

  • α1受容体遮断薬で症状が改善しない場合
  • 直腸診で硬結を触れる、あるいはPSA高値にて前立腺癌が疑われる場合
  • 尿閉、水腎症、腎機能障害などを認め、手術が必要と考えられる場合

参考文献

  • Berry SJ, et al : The development of human benign hyperplasia with age. J Urol 132 : 474, 1984.
  • 泌尿器科領域の治療標準化に関する研究班 編:EBMに基づく前立腺肥大症診療ガイドライン.じほう,東京,2001.
  • Athanasopoulos A, et al : Combination treatment with an alpha-blocker plus an anticholinergic for bladder outlet obstruction : a prospective, randomized, controlled study. J Urol 169 : 2253, 2003.
  • AUA Practice Guidelines Committee : AUA guideline of management of benign prostatic hyperplasia(2003). Chapter 1 : Diagnosis and treatment recommendations. J Urol 170 : 530, 2003.
  • Seki N, et al : Instrumental treatments for benign prostatic obstruction. Curr Opin Urol 17 : 17, 2007.
ガイドライン外来診療2010
詳細はこちら

詳細は『ガイドライン外来診療2010年度版』で!

◎このコーナーでは、毎年発行されている書籍『ガイドライン外来診療』の2009年度版から、代表的な46疾患の診断、治療、処方例などを簡潔に解説した「要約」を転載しています。
◎書籍の最新版『ガイドライン外来診療2010』では、診断・治療のポイントとともに代表処方例を200以上掲載するほか、専門医の管理・治療が必要な26疾患の解説も掲載しています。また図表200点以上を収載、臨床現場で使いやすい2色刷になっています。

編集主幹:泉 孝英(京都大学名誉教授/京都・中央診療所)

Information PR

ログインしていません

Close UpコンテンツPR

ログインしていません

もっと見る

人気記事ランキング

  1. 医師・医学生の不祥事報道を目にする度に… 東謙二の「“虎”の病院経営日記」 FBシェア数:29
  2. 「102歳Asystole」に思うこと 薬師寺泰匡の「だから救急はおもしろいんよ」 FBシェア数:222
  3. 医師免許を失う以外はたいしたリスクじゃない 鈴木裕介の「キャリア迷子」に捧げる処方箋 FBシェア数:0
  4. 麻疹集団感染、医療機関の受診者からも陽性者 パンデミックに挑む:トピックス FBシェア数:237
  5. 子どもにとってトイレやうんちは諸刃の剣 田中由佳里の「ハラワタの診かた」 FBシェア数:56
  6. 若年者のピロリ菌スクリーニング検査は簡便な尿中抗… 学会トピック◎第13回日本消化管学会総会学術集会 FBシェア数:2
  7. インフルエンザ脳症が58例に、6人死亡 インフルエンザ診療Next:トピックス FBシェア数:385
  8. 初訪問で患者が激怒!そのワケは? 新井翔の「I love 在宅」 FBシェア数:79
  9. 「怒鳴る」「注意できない」管理者の結末 太田加世の「看護マネジメント力を磨こう」 FBシェア数:6
  10. 2016年の梅毒患者は4500人超、最多の東京都… 前年比で大幅増加 FBシェア数:239