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ガイドライン外来診療2009

膀胱炎

  • 京都大学医学部附属病院 泌尿器科 講師 西山 博之

診断

  • 急性単純性膀胱炎の症状は、おもに排尿痛、頻尿、尿意切迫感、残尿感、下腹部痛であるが、ときに肉眼的血尿を伴うことがある。
  • 複雑性尿路感染症では、単純性と同様の症状がみられるが、無症状に近いものから、強い症状を呈するものまで幅が広い。
  • 尿路感染症の症状を呈するが、発熱、悪寒を伴う場合には、腎盂腎炎や精巣上体炎、前立腺炎などの合併を考慮する。
  • 膀胱炎様症状を呈するが、細菌感染を認めない場合を非細菌性膀胱炎と称する。原因によって、放射線性膀胱炎や薬剤性膀胱炎、ウイルス性膀胱炎、アレルギー性膀胱炎、間質性膀胱炎などがある。
  • 急性単純性膀胱炎の診断検査には、検尿(尿沈渣、計算盤における白血球算定)や尿一般細菌培養が行われる。
  • 検尿には、中間尿採取法で得られた尿を用い、尿沈渣法あるいは非遠心尿の計算盤鏡検で、前者は尿中白血球数5個/hpf以上、後者では10個/μl以上を有意の膿尿と判定する。
  • 尿培養は、有意な細菌尿の菌数を104CFU/ml以上とする。女性で外陰部からの汚染が疑われる場合、膀胱カテーテル尿で再検する。
  • 複雑性尿路感染症が疑われた場合には、基礎疾患の有無を明らかにするため、血液検査、超音波検査、残尿測定、膀胱鏡検査などが行われる。
  • 間質性膀胱炎の症状にはおもに、頻尿、夜間頻尿、尿意切迫感、尿意亢進、膀胱不快感、膀胱痛などがある。不快感や疼痛は排尿後には軽減・消失する場合が多い。また、食事や環境、精神的なストレスなどの影響を受けやすい。
  • 間質性膀胱炎に関する明確な定義や広く合意の得られている診断基準はないが、膀胱鏡所見(ハンナー潰瘍か点状出血)を重視したNIDDKの基準が用いられることが多い。

治療

  • 急性単純性膀胱炎の原因菌は、おもに大腸菌であり、ニューキノロン系薬ないしは新経口セフェム系薬が第1選択として推奨される。なお、主要原因菌の大腸菌の約5%、肺炎桿菌では80%以上にペニシリナーゼ高度産生菌が検出されることから、ペニシリン系薬ではβラクタマーゼ阻害薬との合剤を選択する。
  • 急性単純性膀胱炎に対する治療として、妊婦の場合、安全性を最大限考慮し、セフェム系薬が推奨される。妊娠初期では、ニューキノロン系薬、テトラサイクリン系薬、トリメトプリム、妊娠後期では、サルファ剤の使用は避ける。高齢女性やStaphylococcus saprophyticusが検出される症例では、ニューキノロン系薬の1週間投与を考慮する。
  • 急性単純性膀胱炎でも、治療によって自覚症状や尿所見が改善しない場合には、尿培養による感受性の結果を参考に、速やかに有効と考えられる他種抗菌薬に変更する。
  • 複雑性膀胱炎の場合には、感染症の治療のみならず基礎疾患の除去を考慮した治療が必要となる。逆に、細菌尿をみても急性増悪しなければ抗菌薬による治療は必ずしも必要ではない。
  • 複雑性膀胱炎に対する抗菌薬の投与は、想定される原因菌の幅が広いことを考慮する必要がある。ニューキノロン系薬ないしは新経口セフェム系薬、βラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系薬が選択され、常用投与量を7〜14日間投与する。
  • 間質性膀胱炎が疑われた場合には、検査と治療を兼ねて麻酔下に膀胱水圧拡張検査(膀胱水圧拡張術)を施行する。膀胱潰瘍がある症例には電気またはレーザーで内視鏡的に潰瘍を切除または凝固する。
  • 間質性膀胱炎に対する保存的治療としては、行動療法、理学療法、緊張の緩和、食事療法などを行う。内服治療としては、抗ヒスタミン薬*、三環系抗うつ薬*、シメチジン(タガメット®など)*などがある。
  • *保険適用注意

処方例

    急性単純性膀胱炎

    (いずれかを選択)

  • フロモックス錠(100mg) 3錠 分3 + セルベックスカプセル(50mg) 3カプセル 分3 7日間
  • クラビット錠(100mg) 4錠 分2 + ムコスタ錠(100mg) 2錠 分2 3日間
  • 複雑性膀胱炎

    (いずれかを選択)

  • シプロキサン錠(100mg) 3錠 分3 + ムコスタ錠(100mg) 3錠 分3 7日間
  • セフゾンカプセル(100mg) 3カプセル 分3 + セルベックスカプセル(50mg) 3カプセル 分3 7日間

患者・家族への説明のポイント

  1. 急性単純性膀胱炎では、基本的には外来での抗菌薬治療で改善する。ただし、1週間の治療で改善を認めない場合には、抗菌薬の変更が必要である。
  2. 反復する細菌性膀胱炎では、基礎疾患の除外が必要である。
  3. 膀胱炎様症状とともに、発熱を伴う場合には、上部尿路や副性器などの感染の合併を考える。
  4. 日常生活では、飲水を推奨する。また、排尿を我慢しないように勧める。

どのような場合に専門医に紹介すべきか

  • 急性単純性膀胱炎の診断であったが、初期治療に反応しない場合(尿培養による感受性を検討しつつ、基礎疾患の有無についての検査が必要)
  • 急性細菌性膀胱炎を反復する場合(膀胱尿管逆流症〈VUR〉や神経因性膀胱などの基礎疾患の除外が必要)
  • 発熱を伴う場合(急性単純性膀胱炎ではなく、上部尿路や副性器への感染を念頭に置く必要がある)
  • 肉眼的血尿を伴う場合(出血性膀胱炎以外に尿路の悪性腫瘍を念頭に置く必要がある)
  • 画像診断にて尿路結石、残尿、膀胱腫瘍などの基礎疾患が疑われた場合
  • 膀胱炎様症状を呈するが、検尿にて異常を認めない場合(非細菌性膀胱炎を念頭に置き、抗菌薬以外の治療法を検討すべき)
  • 骨盤部への放射線治療などの既往がある場合(放射線性膀胱炎などの基礎疾患を念頭に置く必要がある)

参考文献

  • 日本泌尿器科学会尿路感染症臨床試験ガイドライン作成委員会 編:尿路感染症臨床試験ガイドライン 第1版.金原出版,東京,1998.
  • Warren JW, et al : Guidelines for antimicrobial treatment of uncomplicated acute bacterial cystitis and acute pyelonephritis in women. Infectious Disease Society of America(IDSA). Clin Infect Dis 29 : 745, 1999.
  • 日本感染症学会・日本化学療法学会 編:泌尿器科感染症.抗菌薬使用のガイドライン.協和企画,東京,2005.
  • Nicolle LE, et al : Infectious Diseases Society of America Guidelines for the Diagnosis and Treatment of Asymptomatic Bacteriuria in Adults. Clin Infect Dis 40 : 643, 2005.
  • Naber KG, et al : EAU guidelines on the management of urinary and male genital tract infections. Urinary Tract Infection(UTI)Working Group of the Health Care Office(HCO)of the European Association of Urology(EAU). Eur Urol 2006. 〈http://www.uroweb.org/nc/professional-resources/guidelines/online/〉
  • 日本間質性膀胱炎研究会ガイドライン作成委員会 編:間質性膀胱炎診療ガイドライン.ブラックウェルパブリッシング,東京,2007.
  • 〈http://www.uroweb.org/files/uploaded_files/guidelines/chronicpelvicpain.pdf〉
ガイドライン外来診療2010
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編集主幹:泉 孝英(京都大学名誉教授/京都・中央診療所)

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