一覧

ガイドライン外来診療2009

皮膚瘙痒症

  • 順天堂大学医学部附属浦安病院 病院長/皮膚科 特任教授 高森 建二

診断

  • 皮膚に痒みを来すような皮疹がないのに痒みを訴える場合には皮膚瘙痒症を考える。この場合掻破による紫斑や掻破痕を認めることが多い。
  • 全身性皮膚瘙痒症と限局性皮膚瘙痒症がある。
  • 全身性皮膚瘙痒症の原因としては皮膚の乾燥(ドライスキン)、内服している薬剤、基礎疾患などがある。高齢者は多くの薬を内服していることが多いので薬剤のチェックは大切である。老人性皮膚瘙痒症は秋から冬の季節に多くみられ、ドライスキンが原因で生じることから乾皮症ともいわれる。
  • 治療抵抗性で、季節に関係なく痒みを訴える場合には、内服中の薬剤や基礎疾患の存在を考え精査する。
  • 限局性皮膚瘙痒症には外陰部瘙痒症と肛囲瘙痒症がある。
  • 外陰部瘙痒症の原因としては男性では前立腺肥大症や尿道狭窄、女性では卵巣機能低下、白帯下、ストレスなどがある。
  • 肛囲瘙痒症の原因としては便秘、下痢、痔核、蟯虫、便に含まれる化学物質などがある。

治療

  • 痒みの原因が内臓異常に由来する場合にはその治療を行う。
  • 原因として内服中の薬剤が疑われる場合には内服の中止あるいは疑わしい薬剤を他剤に変更する。
  • ドライスキンが原因の場合には、保湿剤を外用して水分の蒸発を防ぎ、外部刺激から皮膚を保護する。保湿剤には尿素含有軟膏・クリーム・ローション(ウレパール®など)、ヘパリン類似物質含有軟膏・クリーム・ローション(ヒルドイド®など)、セラミド配合軟膏・クリーム・ローション、白色ワセリンなどがある。入浴後できるだけ早く外用する。1日数回外用する。保湿剤含有入浴剤も有用。
  • 第2世代抗ヒスタミン薬には直接的痒み抑制作用はないが、間接的にサブスタンスPを介する痒みを抑制する作用を有する薬剤もあるので使用する。
  • 湿疹化して貨幣状湿疹となった場合にはステロイド薬の外用、自家感作湿疹となった場合にはステロイド薬の内服が必要である。
  • 日常生活での注意事項:石鹼、シャンプーによる過度の洗浄に注意し、入浴温度は低め(38〜40℃)に、入浴時間も短くする。部屋の湿度を低下させる過度な暖房、皮膚の水分を奪うコタツ、電気毛布の使用は適度にする。空気が乾燥している場合には加湿器を使用して部屋の湿度を50〜60%に保つ。下着は毛羽立った衣類を避け皮膚への刺激を少なくする。

処方例

    保湿剤の外用

    (以下のいずれかを選択)

  • ヒルドイド軟膏/ソフト/ローション 1日2〜3回
  • ウレパール軟膏/ローション 1日2〜3回 湿疹部位には外用しない
  • 白色ワセリン 1日2〜3回
  • 抗ヒスタミン薬の内服

    (以下のいずれかを選択)

  • アレジオン錠(10/20mg) 1日20mg 分1 就寝前
  • エバステル錠(5/10mg) 1日5〜10mg 分1 就寝前
  • ジルテック錠(5/10mg) 1日10mg 分1 就寝前
  • アレグラ錠(30/60mg) 1日120mg 分2 朝 夕 食後
  • 第1世代抗ヒスタミン薬は前立腺肥大症がある場合には投与禁忌。
  • 湿疹化した場合

    (以下を併用)

  • リンデロン-VG軟膏 1日2回 外用
  • 亜鉛華軟膏をガーゼにのばしてリンデロン-VG軟膏を外用した上から貼付する。
  • アレロック錠(2.5/5mg) 1日10mg 分2 朝食後 就寝前
  • セレスタミン錠 1日2〜3錠 分2〜3 食後 3日間

患者・家族への説明のポイント

  1. 乾燥した皮膚は外部の刺激に敏感に反応して容易に痒みが誘発されるので、保湿剤を絶えず外用して皮膚に潤いを与え、皮膚を保護しておくことが大切である。
  2. 過度の洗浄、高温・長湯は乾燥をさらに助長することを認識させる。
  3. 入浴後は軽くタオルで拭いたあと、ただちに保湿剤を外用して水分の蒸発を防ぐ。
  4. 部屋の暖房には注意して、湿度を50〜60%に保つこと。

どのような場合に専門医に紹介すべきか

  • 湿疹化して難治な場合
  • 痒みの原因が特定できず、各種の治療に抵抗する場合
  • 痒みの原因が内臓異常に由来すると考えられる場合

参考文献

  • Bernhard JFD : Itch, Mechanisms and Management of Pruritus. McGraw-Hill, New York, 1994.
  • 高森建二:高齢者(老人性)皮膚瘙痒症のかゆみ対策.日本医事新報 4262:1,2005.
ガイドライン外来診療2010
詳細はこちら

詳細は『ガイドライン外来診療2010年度版』で!

◎このコーナーでは、毎年発行されている書籍『ガイドライン外来診療』の2009年度版から、代表的な46疾患の診断、治療、処方例などを簡潔に解説した「要約」を転載しています。
◎書籍の最新版『ガイドライン外来診療2010』では、診断・治療のポイントとともに代表処方例を200以上掲載するほか、専門医の管理・治療が必要な26疾患の解説も掲載しています。また図表200点以上を収載、臨床現場で使いやすい2色刷になっています。

編集主幹:泉 孝英(京都大学名誉教授/京都・中央診療所)

Information PR

ログインしていません

Close UpコンテンツPR

ログインしていません

もっと見る

人気記事ランキング

  1. 医学書を安く買う方法・高く売る方法 Dr.Kの「医師のためのバリュー投資戦術」 FBシェア数:24
  2. ガイドラインではエコー、現場では… 画像診断大国の若手医師へ FBシェア数:148
  3. 「これ以上は無益」と言えない気持ちも伝えよう 国立病院機構東京医療センター倫理サポートチームの尾藤誠司氏に聞く FBシェア数:211
  4. 医師達はいかにして検察を騙してきたか 池田正行の「氾濫する思考停止のワナ」 FBシェア数:0
  5. 訪日外国人が突いた医療保険制度の隙 記者の眼 FBシェア数:221
  6. 成人敗血症患者に対する解熱治療は死亡率を低下させ… Dr.倉原の呼吸器論文あれこれ FBシェア数:68
  7. 認知症700万人時代、数少ない収入アップの道 日経ヘルスケアon the web FBシェア数:21
  8. 医師偏在対策、第7次医療計画への反映目指す 女性医師支援や外来医療の最適化、遠隔診療の推進も課題 FBシェア数:62
  9. 終末期にどこまで抗菌薬を使用すべきか シリーズ◎在宅医療における感染対策(4) FBシェア数:599
  10. 「重症なんだから優先して!」怒る家族の真意は 家族支援CNSの「家族対応」お悩み相談 FBシェア数:19