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ガイドライン外来診療2009

湿疹(アトピー性皮膚炎・接触皮膚炎)

  • 旭川医科大学附属病院 皮膚科 講師 高橋 英俊

診断

アトピー性皮膚炎

  • 以下の場合に、アトピー性皮膚炎と診断する。
  • (1)瘙痒がある。

    (2)特徴的な皮疹と分布がみられる。

      (1)皮疹は湿疹病変:急性病変と慢性病変とがある。

      (2)分布:左右対側性。年齢により特徴がある。

    (3)慢性・反復性経過

      乳児では2カ月以上、それ以上では6カ月以上の慢性の経過のあるもの。

  • 参考項目:

    家族歴(喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎)

    合併症(喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎)

    毛孔一致性の丘疹による鳥肌様皮膚

    血清IgE値の上昇

  • 除外すべき疾患:接触皮膚炎、脂漏性皮膚炎、単純性痒疹、疥癬、魚鱗癬、皮脂欠乏性湿疹、手湿疹、皮膚リンパ腫、乾癬、膠原病など

接触皮膚炎

  • 外因が皮膚に直接接触する既往があり、接触部位に一致して境界明瞭な急性もしくは慢性湿疹反応をみる。
  • 詳細な問診を行い、疑わしい原因アレルゲンのパッチテストにより原因物質を特定する。

治 療

    アトピー性皮膚炎

  • 完治を目標とするのではなく、患者のバックグラウンドに応じた治療目標を設定し、皮疹をコントロールしていく。
  • 重症度に応じたステロイド外用薬の使い分け(表2)を行い、副作用の出現に注意する。
  • 瘙痒が強い場合は、外用薬以外に抗アレルギー薬を使用し、自覚症状の軽減と掻破による皮疹の悪化を防ぐ。
  • 顔面、頸部の皮疹に対して、タクロリムス軟膏(プロトピック®)は有用である。
  • 皮疹軽快後は再発・再燃防止のため保湿剤などによるスキンケアを行う。
  • 表2 皮疹の重症度とステロイド外用薬の選択

     
    皮疹の重症度
    外用薬の選択
    重症 高度の腫脹/浮腫/浸潤ないし苔癬化を伴う紅斑,丘疹の多発,高度の鱗屑,痂皮の付着,小水疱,びらん,多数の掻破痕,痒疹結節などを主体とする 必要かつ十分な効果を有するベリーストロングないしストロングクラスのステロイド外用薬を第1選択とする。痒疹結節でベリーストロングクラスでも十分な効果が得られない場合は,その部位に限定してストロンゲストクラスを選択して使用することもある
    中等症 中等度までの紅斑,鱗屑,少数の丘疹,掻破痕などを主体とする ストロングないしミディアムクラスのステロイド外用薬を第1選択とする
    軽症 乾燥および軽度の紅斑,鱗屑などを主体とする ミディアムクラス以下のステロイド外用薬を第1選択とする
    軽微 炎症症状に乏しく乾燥症状主体 ステロイドを含まない外用薬を選択する

    (日本皮膚科学会,2008)

    接触皮膚炎

  • 軽症〜中等症ではステロイド外用薬と抗アレルギー薬内服にて治療を行う。重症な場合は上記治療に短期間のステロイド内服治療を行う。
  • 慢性接触皮膚炎ではステロイド外用薬と抗アレルギー薬内服による治療と、原因物質の検索のためパッチテストを行う。
  • パッチテストにより原因物質が判明した場合は、原因物質を避けるよう生活指導を徹底する。
  • 原因物質を避けることが難しい職業性の接触皮膚炎では、治療効果の目標を決めて皮疹をコントロールするのに努める。

処方例

    アトピー性皮膚炎

    各皮疹の重症度に応じて外用薬を使い分ける。

    軽症

    痒みのない乾燥症状が主体の場合

    (いずれかを選択)

  • ヒルドイドソフト または ローション 1日1回 入浴後 全身塗布
  • 白色ワセリン軟膏 1日1回 入浴後 全身塗布
  • 上記皮疹に瘙痒を伴うか、軽度の紅斑、鱗屑を伴う場合
  • リドメックス軟膏+ヒルドイドソフト 1日1〜2回 起床後 入浴後 体幹四肢重層塗布
  • 中等症で紅斑、びらん、鱗屑、掻破痕を伴う場合

    小児例

    (以下を併用)

  • アレグラ錠(30mg) 2錠 分2 朝 夕 食後
  • ロコイド軟膏 1日2回 起床後 入浴後 体幹四肢塗布
  • プロトピック小児用軟膏(0.03%) 1日1回 起床後 または 入浴後 顔面塗布
  • その他

    (以下を併用)

  • アレグラ錠(60mg) 2錠 分2 朝 夕 食後
  • リンデロン-V軟膏 1日2回 起床後 入浴後 体幹四肢塗布
  • プロトピック軟膏(0.1%) 1日1回 起床後 または 入浴後 顔面塗布
  • 重症

    高度のびらん、鱗屑、掻破痕を伴う場合

    (以下を併用)

  • アレジオン錠(20mg) 1錠 分1 朝 または 夕 食後
  • メサデルム軟膏 1日2回 起床後 入浴後 体幹四肢塗布
  • キンダベート軟膏 1日2回 起床後 入浴後 顔面塗布
  • 滲出性の強いびらんを伴う場合

    (上記に以下を併用)
  • セフゾンカプセル(100mg) 3カプセル 分3 食後
  • 亜鉛華軟膏 1日2回 起床後 入浴後 体幹四肢重層塗布
  • 苔癬化・痒疹局面

    (以下を併用)

  • アンテベート軟膏 1日2回 起床後 入浴後 体幹四肢塗布
  • ドレニゾンテープ 1日1回 入浴後貼付
  • 顔面難治性紅斑

  • プロトピック軟膏(0.1%) 1日2回 起床後 入浴後 顔面塗布
  • 接触皮膚炎

    急性で、軽症〜中等症の場合

  • フルメタ軟膏 1日2回 起床後 入浴後 体幹四肢塗布
  • リンデロン軟膏 1日2回 起床後 入浴後 顔面塗布
  • 広範囲で重症な場合

    (上記に以下を併用)
  • プレドニン錠(5mg) 3錠 分3 食後
  • 慢性の場合

  • アンテベート軟膏 1日2回 起床後 入浴後 体幹四肢塗布
  • 高齢者・小児に対する投薬上の注意点

    抗アレルギー薬を高齢者に使用する際に、緑内障、前立腺肥大の症状を悪化させない抗コリン作用の少ないものを使用する。また、小児に対しては中枢神経抑制効果が少ない、アレジオン®(10mg)、アレグラ®(30mg)、クラリチン®(10mg)が望ましい。

患者・家族への説明のポイント

    アトピー性皮膚炎

    (1)アトピー性皮膚炎の治療ゴールは完治ではなく、皮疹のコントロールであることを十分に説明する。

    (2)画一的な治療、説明に終始することで標準治療を放棄させないよう、患者との間にしっかりとした信頼関係を築き、患者の治療意欲を低下させないような教育と指導を並行して行う。

    接触皮膚炎

    (1)患者自身が原因アレルゲンとの接触について不明な場合が多いので、具体例(図)を挙げたり、患者の日常生活、習慣を詳細に聞き、アレルゲンとなるべきものがないかを見いだす。

    (2)パッチテストの重要性を患者に説明し、原因さえわかれば接触皮膚炎は完治できることを説明する。

どのような場合に専門医に紹介すべきか

    アトピー性皮膚炎

  • ガイドラインによる標準治療に抵抗性の場合
  • 詳しい検査や専門医の診察を希望する場合
  • アトピービジネスの被害を受けて、症状が悪化したと思われる場合
  • 接触皮膚炎

  • 原因検索が難しい場合
  • 標準治療でコントロール困難な場合
  • パッチテストを希望する場合

参考文献

  • 宮地良樹:アトピー性皮膚炎.最新皮膚科学体系3(玉置邦彦 編).p37,中山書店,東京,2002.
  • 戸倉新樹:光アレルギー性接触皮膚炎.最新皮膚科学体系3(玉置邦彦 編).p9,中山書店,東京,2002.
  • 西岡 清 他:接触皮膚炎.皮膚科専門医テキスト 改訂第2版(植木宏明 他 編).南江堂,東京,2002.
  • 日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎診療ガイドライン作成委員会:日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎診療ガイドライン.日皮会誌 118:325,2008.
ガイドライン外来診療2010
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◎このコーナーでは、毎年発行されている書籍『ガイドライン外来診療』の2009年度版から、代表的な46疾患の診断、治療、処方例などを簡潔に解説した「要約」を転載しています。
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編集主幹:泉 孝英(京都大学名誉教授/京都・中央診療所)

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