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ガイドライン外来診療2009

変形性膝関節症

  • 新潟こばり病院 副院長(整形外科) 古賀 良生

診断

  • 50歳を超えた人の膝関節痛のほとんどを占める疾患である。疼痛は安静で軽快することが一般的で、動作の開始時などの運動痛が主体である。
  • 成因を特定できない1次性と原因を持った2次性に分けられ、1次性が多く、その要因として年齢のほか、性(女性)、歩行時の膝横揺れ(thrust)、水症、肥満、内反変形がある。頻度は60歳代では男性20%以下で女性は35%程度であるものが、70歳以上では半数を超える。わが国では内反膝変形に伴う内側型とこれに膝蓋型の合併が圧倒的に多い。
  • 初診時は臥位2方向と膝蓋骨軸写のX線所見(関節裂隙の狭小化、軟骨下骨の硬化、骨棘、骨嚢包、関節面不適合、遊離体などがOA(変形性膝関節症)変化)で、Kellgren-Lawrence分類で明らかな関節裂隙狭小化を認めるgrade 彊幣紊魄貳姪にOAと診断する。
  • 自発痛や夜間痛の出現(大腿骨顆部特発性骨壊死、MRI)や激痛発作と腫脹(軟骨石灰化症、穿刺液ピロリン酸カルシウム〈CPPD〉結晶)、水症の持続や他関節の症状(RA、血液検査)など、治療経過中に症状の変化をみたときには、特徴的症状から鑑別診断を念頭に置き検査を追加する。
  • 症状や治療効果の評価では高齢患者の場合、家族構成や社会的・経済的環境および理解度に個人差が大きいことに留意する。そのため疼痛の強さを日常動作制限の変化で判断することが実際的である。

治療

  • 病態が長期経過で進行し、根治療法はないこと、治療目的が進行の防止と症状への対応であることの理解(教育)が重要である。
  • 膝OA(変形性膝関節症)は慢性の経過をとり、多くが手術を必要としない軽度のもので、日常生活管理と各種保存療法の対象である。
  • 保存療法は「運動器の生活習慣病」との位置づけで、廃用性変化の防止のため活動性を維持し、疼痛が増強する具体的動作の制限や減量などの生活指導を優先する。運動療法の筋力強化の対象は主として膝伸展筋で、膝の屈曲拘縮の防止と安定性確保にある。伸展脚挙上(SLR)運動や枕つぶし運動を自宅で継続させることが重要で、理学療法士の協力やパンフレットの使用が有効である。1〜2週後の再診で練習方法の理解について確認する。
  • 外側楔状足底(挿)板などの装具療法は安定性保持のために広く用いられ、除痛効果を認めるが、長期の効果は期待できない。
  • 薬物療法としてOAに対するNSAIDsが対症療法薬物として用いられる。全身薬物治療の補助手段、置換療法として外用療法が有効である。サプリメントにOAに対する鎮痛、軟骨破壊抑制効果があるとされ、特定機能食品として扱われているが、効果の科学的検証は明らかではなく、長期服用での経済的負担が問題である。
  • 薬剤としてステロイドとヒアルロン酸(HA)が関節内注入療法で用いられ有効である。ステロイドには機能改善がないとされ、重篤な合併症があり慎重に用いるべきである。HAは軽度から中等度に効果があり、週に1回関節内注射を行い、5回程度継続し効果を判定する。継続が必要と判断した場合には、2〜4週に1回の間隔で投与を行い、経過観察する。
  • 手術療法は、高位脛骨骨切り術、人工関節置換術、初期の軟骨欠損に対する軟骨移植や変性半月板の摘出をはじめ関節鏡を用いた操作などがある。適応は年齢(活動性)とOA進行度により決定されるが、日常生活でOAの膝機能障害がどの程度それぞれの活動を制限し、手術による治療効果が治療期間と経済的負担に見合うものかを検討する。

臨床検査項目

     2次性膝OAでは各種検査で特徴的所見を示すため、血液、尿、関節液の検査が有用となる。

  • 血液検査

    血球沈降速度(ESR):膝OAではほとんど正常範囲内であるが、全身性OAではときに上昇していることがある。関節リウマチ(RA)や化膿性関節炎などで上昇する。

    生化学検査:血清カルシウム、リン、アルカリホスファターゼなどは通常正常である。偽痛風では、ときに血清カルシウムの上昇がある。

    その他:免疫系の検査では、リウマチ因子や抗核抗体などで年齢の上昇に伴って陽性となることがあるが、特に非OA群とは差がない。

処方例

    (1)57歳、女性。BMI 27、主訴:右膝痛

    初診時:ROM(関節可動域):−10 / 135°、X線評価:Grade 供F眤Υ慇疥隙の圧痛を認める。腫脹はない。

    病態と減量の意義を説明し、理学療法士による「枕つぶし運動」を指導。

  • ゼポラス(外用)、ロキソニン1錠+セルベックス1カプセル(1回量)を頓用にて処方
  • 1週後:再来。運動療法の確認を行い、外用薬のみを処方。

    4週後:入浴時正座も可能となり、疼痛悪化時に再来として通院中止。

    1年後:疼痛再発で来院。ROM:−5 / 140°、 BMI 28、X線評価:Grade 供

  • 中止していた訓練再開で疼痛が改善した。
  • コメント:外来患者の運動指導2年後の調査で、2/3が症状の改善が持続、うち半数は筋力も増加していた。1週後の確認時、運動療法は、理学療法士が行った際は理解されていたが、診療中の医師のみの指導では約半数は正確に理解されていなかった。減量指導も診察時の説明だけでは効果なく、栄養士の食事指導を受けたもので効果を認めた。

    (2)61歳、女性。BMI 19、主訴:右膝痛、腫脹 

    初診時:ROM:−10 / 135°、X線評価:Grade 掘F盂安Υ慇疥隙に圧痛を認める。

    血性20ml穿刺、特発性膝出血の診断。「枕つぶし運動」を指導。

  • ゼポラス(外用)、ロキソニン3錠+セルベックス3カプセル(分3、1日量)を処方
  • 1週後:再来時腫脹(血性20ml穿刺)を認めた。入院加療で関節鏡視下に外側半月板の変性断裂とその付近の出血を確認し、半月板切除し出血部位の凝固を行う。その後、腫脹の再発はなく、運動療法を継続した。2カ月に1回程度、外用薬の投薬を求め再来している。

    コメント:高齢者の膝OA患者で特に大きな外傷がなく20ml程度の急激な膝血症を生ずる特発性膝出血は、血管脆弱性を基盤にした膝OAによる血管損傷と考えられてきた。しかし、その多くは外側半月板の後方栄養血管の破綻が原因で、その部位の関節鏡視下手術で完治する症例である。また、膝OA患者で内側半月板の後角の変性(水平)断裂は激しい屈曲時痛を生じ、関節鏡視下手術の適応となることがある。

    (3)69歳、女性。BMI 27、主訴:7年前からの両側膝痛、腫脹 

    初診時:ROM:−15 / 110°、X線評価:Grade 検B臑樔骨角に195°の高度内反変形を認める。

    保存療法では限界があり手術を行う可能性が高いが、その際も筋力の増強が重要で手術時期を遅らせることも可能である、と説明して「枕つぶし運動」を指導し、関節内注入療法(ヒアルロン酸ナトリウム〈アルツ® など〉)を行う。

    (以下を適宜併用)

  • ゼポラス(外用)、ロキソニン2錠+セルベックス2カプセル(分2、1日量)
  • ボルタレン坐剤(25mg)を頓用にて処方(1日2回まで)
  • 3カ月後:疼痛のため、一人暮らしで買い物など外出に困難を生じるようになる。ROM:−10 / 105°、JOAスコア:50点、JKOM:71点。

  • 全身状態の検査で手術に問題がないことを確認し、両側人工関節置換術を施行した。
  • コメント:末期症例で保存療法の限界を確認した際は、日常生活の制限の程度で早期に手術療法に踏み切る。関節内注入療法は術前1カ月間は行わない。

患者・家族への説明のポイント

  1. 病態理解:長年の荷重による、軟骨のすり減りが原因で、そのため関節の炎症を起こして疼痛が出現する。
  2. 治療目標:加齢とともに進行するが、薬物により症状の軽減や、進行要因の対策で進行を遅らせる。また、これらの方法で機能の改善が図れない場合も手術で機能は改善する。
  3. 膝機能と筋力強化の必要性:膝関節には階段昇降時においては体重の4倍近くの力がかかるが、筋力による力の分散で軟骨を保護している。暗闇の穴に脚をとられて膝に響くような痛みを感ずる経験により筋力が関節を保護している状況が理解できる。筋力低下は膝が伸ばせない状況を招き、徐々にO脚化していくことで、内側の軟骨破壊(膝OA)が進行する。日常活動の維持を含め筋力強化が重要となる。

どのような場合に専門医に紹介すべきか

  • 高度の変形や拘縮を有する場合
  • 若年者の2次性関節症の場合
  • 繰り返す水症や炎症が寛解しない場合
  • 手術療法の選択に苦慮する場合
  • 保存療法が有効でなく、その原因が不明な場合

参考文献

  • American College of Rheumatology Subcommittee on Osteoarthritis Guidelines : Recommendations for the medical management of osteoarthritis of the hip and knee : 2000 update. Arthritis Rheum 43 : 1905, 2000.
  • Jordan KM, et al : EULAR recommendations 2003 : an evidence based approach to the management of knee osteoarthritis : Report of a Task Force of the Standing Committee for International Clinical Studies Including Therapeutic Trials(ESCISIT). Ann Rheum Dis 62 : 1145, 2003.
  • Akai M, et al : An outcome measure for Japaneses people with knee osteoarthritis. J Rheumatol 32 : 1524, 2005.
  • 古賀良生 編:変形性膝関節症−病態と保存療法.南江堂,東京,2008.
ガイドライン外来診療2010
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編集主幹:泉 孝英(京都大学名誉教授/京都・中央診療所)

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