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ガイドライン外来診療2009

腰痛症

  • 大阪市立大学医学部附属病院 整形外科 准教授 中村 博亮 
    大阪市立大学医学部附属病院 整形外科 豊田 宏光

診断

  • 腰痛を生物学的な損傷、解剖学的異常として捉えるのではなく“生物・社会・心理的疼痛症候群”と位置づけ、多面的なアプローチが必要な病態と捉える。
  • 診断で重要なことは3つの診断的トリアージと病因分類である。
  • 3つの診断的トリアージとは、(1)Red flag sign、(2)Green light、(3)Yellow flag signのカテゴリーに分類すること。Red flag signは、重篤な疾患の可能性がある腰痛(physical risk factor;器質的危険信号)、Green lightは、非特異的腰痛ともいわれ、神経学的異常や器質的異常のない予後良好な腰痛、Yellow flag signは、慢性腰痛、休職、長期の活動性低下へ移行する可能性がある腰痛(psychosocial risk factor;心理社会的因子)を指す。
  • Red flag signを認めた場合には、(1)感染・炎症、(2)腫瘍、(3)内臓疾患、(4)外傷、(5)神経障害などの病因の検索を行い、MRI検査、血液検査などを行う。
  • Yellow flag signを認めた場合には、診療行為のなかで患者の個人的、社会的背景を評価する必要がある。

治療

  • Red flag signを認めた場合には、専門医による治療が必要な場合がある。
  • Green lightであれば、予後良好な非特異的腰痛であり、経過観察中にYellow flag signを出さないように留意しながら治療を行う。
  • 非特異的腰痛(Green light)治療の基本は、(1)患者教育と適切な医療情報の提供と(2)疼痛管理である。
  • 非特異的腰痛における患者教育とは、腰痛に対する恐怖の除去、疼痛についての簡単な解説、そして身体を動かすことがよい理由を説明し、患者の意識を変えることである(“Stay active. Keep positive.”)。長期臥床や過度の安静はむしろ有害である認識を持たせることが大切である。
  • 非特異的腰痛患者の疼痛管理で重要なことは、(1)自己制御するように指導すること、(2)医療機関で行う治療は活動性を落とさないようにするために行っているというスタンスを持つことである。急性期腰痛症で推奨されている薬剤は、第1にアセトアミノフェン(ピリナジン®など)、第2にNSAIDsである。効果がみられない場合には、短期間のみ筋弛緩薬を併用する。慢性腰痛患者では、上記の薬剤では効果に乏しいことが多く、抗うつ薬の投与が有効な場合がある。
  • 非特異的急性腰痛症では、4〜6週間のマニプレーションが推奨されており、プラスチックコルセット治療は有害と報告されている。 
  • 非特異的慢性腰痛症では、マニプレーションは推奨されているが、その他、温熱・冷却、牽引、レーザー、超音波、マッサージ、コルセット、トリガーポイントブロック、硬膜外ブロック療法に関しては意見が分かれている。また、慢性腰痛患者においては、認知行動療法、管理運動療法が推奨されている。

処方例

    (以下のいずれかを選択)

    非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)

  • ロキソニン錠(60mg) 3錠 分3 食後
  • ボルタレン坐剤(25/50mg) 1回1個 1日2回まで(6時間あける)
  • 高齢者の場合

  • ロキソニン錠(60mg) 2錠 分2 食後
  • ボルタレン坐剤(25/50mg) 1回1個 1日1回まで
  • 筋弛緩薬(NSAIDsと併用)

  • デパス錠(0.5mg) 3錠 分3 食後
  • テルネリン錠(1mg) 3錠 分3 食後
  • 高齢者の場合

  • デパス錠(0.5mg) 2錠 分2 食後
  • テルネリン錠(1mg) 2錠 分2 食後
  • 外用薬

  • モーラステープ 1日1枚 貼付(光線過敏症に注意)
  • アドフィード 1日1枚 貼付

患者・家族への説明のポイント

    (1)神経学的異常所見がなく、画像所見に異常がなければ、3日から1週間程度で症状は軽快する。

    (2)腰痛はさまざまな疾患が原因となり得る。1〜2週間で軽快しない場合は、原因検索が必要で、再検査が必要となる。

    (3)腰痛と向き合っていくには“Stay active. Keep positive.”(活動性を高く、前向きに)が重要。なるべく日常生活を続け、早期に職場復帰したほうが症状は遷延化しにくい。

    (4)疼痛管理の基本は、自己管理すること。他人に依存してはよくならない。自分で治療のゴールを設定し、どうすれば疼痛から解放されるのか考えるようにする。

どのような場合に専門医に紹介すべきか

  • 確定診断がつかず、症状が長期化した場合
  • 外科的治療が必要な場合
    外科的治療が必要になるのは、(1)病変部が画像診断で特定されており、(2)神経障害が存在し、(3)保存治療抵抗性を認めた場合である
  • Red flag sign、Yellow flag signを認めた場合

参考文献

  • 菊地臣一:腰痛.医学書院,東京,2003.
  • 脊椎脊髄ジャーナル編集委員会:脊椎脊髄疾患の治療戦略−方針決定に必要な情報とその提供−.脊椎脊髄ジャーナル 19(6),2006.
  • van Tulder M, et al ; COST B13 Working Group on Guidelines for the Management of Acute Low Back Pain in Primary Care : European guidelines for the management of acute nonspecific low back pain in primary care. Eur Spine J 15 : S169, 2006.
ガイドライン外来診療2010
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編集主幹:泉 孝英(京都大学名誉教授/京都・中央診療所)

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