一覧

ガイドライン外来診療2009

更年期障害

  • 京都府立医科大学附属病院 産婦人科 講師 岩佐 弘一

診断

  • 更年期における不定愁訴をチェックする。
  • 問診、血液検査で卵巣機能の減退・消失の確認をする。
  • 器質的疾患を除外する。
  • Self-rating Depression Scale(SDS)を用いて精神疾患との鑑別を行う。

治療

  • 治療は身体症状を取り除くための対症療法およびストレスの緩和である。
  • 典型的なエストロゲン欠落症状であるホットフラッシュにはホルモン補充療法(HRT)が奏効する。
  • 精神症状が伴う場合は、抗うつ薬や抗不安薬を投与することがある。
  • 漢方療法が奏効することも多い。

処方例

    対症療法であるので、更年期に多くみられる愁訴ごとに処方例を示した。

    ホットフラッシュを主症状とした自律神経失調症状、精神症状

    ・通常HRTを選択。患者がHRTを希望しないかできないときは、抗不安薬または漢方薬を選択する。

    子宮を有する場合

    (以下を併用)

  • エストラーナ 1枚 隔日貼付 または ディビゲル 1包 連日塗布
  • プロベラ錠*(2.5mg) 1錠 分1 4週間ごとに10日間連続投与
  • 子宮を有さない場合

    (いずれかを選択)

  • エストラーナ 1枚 隔日貼付
  • ディビゲル 1包 連日塗布
  • 抗不安薬

  • メイラックス錠(1mg) 2錠 分2
  • 漢方薬

    (証に合わせて以下のいずれかを選択)

  • 当帰芍薬散 1日7.5g 分3 食前(虚証)
  • 桂枝茯苓丸 1日7.5g 分3 食前(実証)
  • 加味逍遙散 1日7.5g 分3 食前(精神症状を伴うとき)
  • 肩こり・腰痛

  • モーラステープ 頓用
  • HRTは奏効しない。
  • 筋緊張性頭痛を伴う自律神経失調症状

    (いずれかを選択)

  • 半夏白朮天麻湯 1日7.5g 分3 食前
  • デパス錠(0.5mg) 3錠 分3 食後
  • 身体動揺感を主症状とする自律神経失調症状

  • 苓桂朮甘湯 1日7.5g 分3 食前
  • 不安・緊張

  • デパス錠(0.5mg) 1日3錠まで 頓用
  • 抑うつ・意欲低下

  • トレドミン錠(25mg) 3〜6錠 分3 食後
  • 保険適用は1日4錠まで。
  • 入眠障害

  • マイスリー錠 1日5〜10mg 分1 就寝前
  • 中途覚醒

  • ドラール錠 1日15〜30mg 分1 就寝前
  • *保険適用注意

患者・家族への説明のポイント

  1. 更年期障害は卵巣機能の減退・消失を主因として発症する機能的な身体異常であるが、社会的背景や性格・気質もその発症に関与しており精神症状を伴うことも多い。
  2. 社会的背景や性格・気質はどうしようもないので、ストレス緩和のための自分なりのリラクゼーションを考えるよう指導する。必要に応じて抗不安薬の服用を勧める。
  3. 更年期障害は機能的な身体異常であり、その治療は自律神経失調症状や肩こり・腰痛などの身体症状を緩和するための対症療法である。症状を緩和するために、HRT、漢方療法、対話療法などさまざまな選択肢があることを説明する。
  4. HRTはホットフラッシュ、尿道腟粘膜症状、骨粗鬆症の予防・治療に特に有効であることを説明する。HRTの有害事象として乳癌や血栓症について説明する必要があるが、その危険性ばかり強調しすぎないよう留意する。
  5. 老年期へ移行する時期であるため、今後のトータルヘルスケアの重要性を説明する。

どのような場合に専門医に紹介すべきか

    症状に応じて器質的疾患が疑われるときは、対応する科に紹介する。

    精神科

  • 自殺念慮がある場合
  • SDSのスコアが高い場合
  • 耳鼻科

  • 身体動揺感でなく、回転性のめまいを訴える場合

参考文献

  • Kronenberg F : Hot flashes : epidemiology and physiology. Ann N Y Acad Sci 592 : 52, 1990.
  • Writing Group for the Women’s Health Initiative Investigators : Risks and benefits of estrogen plus progestin in healthy postmenopausal women. JAMA 288 : 321, 2002.
  • The Women’s Health Initiative Steering Committee : Effects of conjugated equine estrogen in postmenopausal women with hysterectomy. JAMA 291 : 1701, 2004.
  • 岩佐弘一 他:HRTと脳機能−HRTのアルツハイマー病に対する予防,治療効果について.日本更年期医学会雑誌 14:99,2006.
  • 日本産科婦人科学会 編:産科婦人科用語集・用語解説集 改訂第2版.金原出版,東京,2008.
ガイドライン外来診療2010
詳細はこちら

詳細は『ガイドライン外来診療2010年度版』で!

◎このコーナーでは、毎年発行されている書籍『ガイドライン外来診療』の2009年度版から、代表的な46疾患の診断、治療、処方例などを簡潔に解説した「要約」を転載しています。
◎書籍の最新版『ガイドライン外来診療2010』では、診断・治療のポイントとともに代表処方例を200以上掲載するほか、専門医の管理・治療が必要な26疾患の解説も掲載しています。また図表200点以上を収載、臨床現場で使いやすい2色刷になっています。

編集主幹:泉 孝英(京都大学名誉教授/京都・中央診療所)

Information PR

ログインしていません

Close UpコンテンツPR

ログインしていません

もっと見る

人気記事ランキング

  1. 認知症ではないと診断した患者が事故を起こしたら医… プライマリケア医のための認知症診療講座 FBシェア数:393
  2. 免許更新の認知症診断に医療機関は対応できるか リポート◎3・12道交法改正で対象者は年間5万人 FBシェア数:94
  3. 言葉の遅れに「様子を見ましょう」では不十分 泣かせない小児診療ABC FBシェア数:121
  4. 院長の「腹心」看護師の厳しすぎる指導で退職者続出 院長を悩ます職員トラブル大研究 FBシェア数:4
  5. 「在宅患者への24時間対応」はやっぱり無理? 日医、かかりつけ医機能と在宅医療についての診療所調査結果を公表 FBシェア数:45
  6. 医療過失の95%を回避する術、教えます 記者の眼 FBシェア数:93
  7. 検査キットに振り回されるインフルエンザ診断 薬師寺泰匡の「だから救急はおもしろいんよ」 FBシェア数:574
  8. 58歳男性。口唇の皮疹 日経メディクイズ●皮膚 FBシェア数:0
  9. 「認知症の診断=絶望」としないために インタビュー◎これまでの生活を続けられるような自立支援を FBシェア数:59
  10. 「名門」を出てもその先は自分次第 木川英の「救急クリニック24時」 FBシェア数:176