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ガイドライン外来診療2009

骨粗鬆症

  • 大阪市立大学医学部附属病院 骨・リウマチ内科 准教授 稲葉 雅章

診断

  • 骨粗鬆症の症状としては特異的なものは存在しない。
  • 骨のどの部位であっても骨量が若年成人平均値(YAM)の70%未満で骨粗鬆症と診断する。
  • 脆弱性骨折がある場合、それに続発する骨折リスクが上昇するため、骨量が正常域であっても骨粗鬆症として診断し、速やかに治療を開始する。
  • 骨粗鬆症による骨折の危険因子を複数有している場合、骨折ハイリスク患者と考えて対応する。
  • 原発性骨粗鬆症と診断する前に甲状腺・副甲状腺機能亢進症などの続発性骨粗鬆症の除外を行う。特に高齢者では多発性骨髄腫を除外する必要がある。
  • 骨代謝マーカーの高値に反映される骨代謝回転の亢進は、fast bone loser(骨密度低下速度が速い例)の選別に有用なだけでなく、骨密度低下とは独立した骨折危険因子である。

治療

  • 骨粗鬆症の治療目的は骨折予防であり、骨格の健康を保ち、身体の健全な形態と運動性を保持することであるため、骨折を起こしてからの治療ではなく起こさないための予防が重要である。
  • 予防については生活習慣の改善が重要で、食事指導と運動指導が両輪をなす。
  • 骨量の減少が骨粗鬆症域(YAM値<70%)まででなく骨量減少領域(70%≦YAM値<80%)であっても、過度のアルコール摂取、現在の喫煙、大腿骨頸部骨折の家族歴があれば治療を開始する。
  • 骨粗鬆症治療での最近の大きな躍進は、骨折を有効に防止するビスホスホネート製剤、選択的女性ホルモン受容体調節薬などの出現である。骨粗鬆症治療薬による骨折防止効果や、投薬人数当たりの骨折防止数(NNT)は、スタチン薬や降圧薬でのイベント抑制より効率が高い。
  • 骨粗鬆症治療により、動脈硬化の進展をも同時に防止する効果が期待できる。
  • ビスホスホネート製剤による長期治療(3年間以上)患者では、抜歯やインプラント処置時には、顎骨壊死との関連から、3カ月の休薬後の処置が望まれる。

処方例

    (1)閉経後女性で、特に軽症で骨折なしの場合

  • エビスタ錠(60mg) 1錠 分1(希望時の定時)
  • 骨粗鬆症のみでなく、コレステロール低下作用、乳癌、子宮癌抑制作用などが期待できる。静脈血栓の発生に対する注意が必要。
  • (2)高齢者、既骨折者の場合

    (いずれかを選択)

  • フォサマック錠 または ボナロン錠(35mg) 週1回1錠 朝食前30分
  • アクトネル錠 または ベネット錠(17.5mg) 週1回1錠 朝食前30分
  • 骨折抑制効果が強いビスホスホネート製剤を使用する。朝起床時に水約180mlとともに経口投与。服用後少なくとも30分は横にならず、水以外の飲食ならびに他の薬剤の経口摂取を避ける。副作用として胃腸障害に注意。
  • (3)高齢者で特にカルシウムバランス(−)の場合

    (いずれかを選択)

  • アルファロールカプセル または ワンアルファ錠(0.25/0.5/1μg) 1日1回0.5〜1μg 朝食後
  • ロカルトロールカプセル(0.25μg) 2カプセル 分2 
  • 上記(1)(2)に用いる薬剤に併用する形で投与。尿中カルシウムを測定し、高カルシウム尿症の場合には減量。(随時尿中Ca/Cre比〈mg/mg〉を0.3以下にするように心がける)

患者・家族への説明のポイント

  1. 食習慣や運動習慣などの生活習慣の改善が骨粗鬆症防止の基礎となる。
  2. 効率よい骨折防止は薬物療法によってのみ可能であり、最初の骨折を起こさない予防治療がQOL維持のために重要となる。
  3. 骨粗鬆症は症状がなくても骨折を引き起こす原因疾患であり、その治療は脳卒中や心筋梗塞を防ぐための高血圧や脂質異常症に対する薬物療法と同等に位置づけられる。

どのような場合に専門医に紹介すべきか

  • 骨粗鬆症が高度で、骨折が多発している場合
  • 骨量測定装置が利用できない場合
  • 続発性骨粗鬆症や骨軟化症合併例で鑑別を要する場合
  • 薬物による有害事象で投薬が困難な場合

参考文献

  • 日本骨代謝学会骨粗鬆症診断基準検討委員会:原発性骨粗鬆症の診断基準(2000年度改訂版).日骨代謝誌 18:76,2001.
  • NIH Consensus Development Panel : Osteoporosis prevention, diagnosis, and therapy. JAMA 285 : 785, 2001.
  • 日本骨粗鬆症学会骨粗鬆症診療における骨代謝マーカーの適正使用に関する指針検討委員会:骨粗鬆症診療における骨代謝マーカーの適正使用ガイドライン(2004年度版).Osteoporosis Jpn 12 : 191, 2004.
  • Nawata H, et al : Guidelines on the management and treatment of glucocorticoid-induced osteoporosis of the Japanese Society for Bone and Mineral Research(2004). J Bone Miner Metab 23 : 105, 2005.
  • 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会 編:骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2006年版.ライフサイエンス出版,東京,2006.
ガイドライン外来診療2010
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編集主幹:泉 孝英(京都大学名誉教授/京都・中央診療所)

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