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ガイドライン外来診療2009

脂質異常症

  • 国際医療福祉大学大学院 創薬育薬医療分野 教授 佐々木 淳

診断

  • 脂質異常症の診断はLDLコレステロール値140mg/dl以上(スクリーニングには総コレステロール値220mg/dl以上を用いる)、トリグリセライド値150mg/dl以上であり、HDLコレステロール値40mg/dl未満も管理の対象になる。
  • 原発性高脂血症(家族性高コレステロール血症など)、2次性高脂血症(糖尿病、甲状腺機能低下症など)の病因診断を行う。
  • 高LDLコレステロール血症以外の危険因子(男性45歳以上、女性55歳以上、高血圧、糖尿病、喫煙、冠動脈疾患の家族歴、低HDLコレステロール血症)の数、重症度などを考慮して個々にトータルリスクを考える。
  • メタボリックシンドロームの診断を行う。

治療

    治療の目標

  • LDLコレステロール値を含む目標値は目安として用いる。
  • 2次予防をはじめトータルリスクの高い者ほど管理を強化する。
  • 食事・運動療法

  • 治療の基本は食事・運動療法、禁煙を含むライフスタイルの改善である。
  • 標準体重の維持、軽い有酸素運動を30分/日以上行う。
  • メタボリックシンドロームでは食事・運動療法が基本となる。
  • 薬物治療

  • 日本人は欧米人に比べ冠動脈疾患発症の絶対リスクが低く、薬物の効果と安全性を考慮する必要がある。
  • 日本において長期の効果と安全性が確立された薬剤が第1選択薬になる。
  • 重症例では併用療法(スタチンとエゼチミブ〈ゼチーア®〉、レジンなど)が効果と安全性のうえから勧められる。
  • LDLコレステロール低下作用が強いほど副作用が多く、脂溶性スタチン(シンバスタチン〈リポバス®など〉、フルバスタチンナトリウム〈ローコール®〉、アトルバスタチンカルシウム水和物〈リピトール®〉)は薬剤相互作用に注意を要する。またアトルバスタチンカルシウム水和物、ロスバスタチンカルシウム(クレストール®)には血糖・HbA1c上昇作用があり注意を要する。
  • 高トリグリセライド血症、特に低HDLコレステロール血症を伴う場合、フィブラート系薬(フェノフィブラート〈リピディル®など〉)、ニコチン酸製剤、 EPA(イコサペント酸エチル〈エパデール®など〉)も適応になる。
  • 保険適用

  • 欧米で実施された臨床試験に用いられた用量は日本では許可されていないことが多い。
  • 治療目標値は治療開始基準でもなく保険適用でもない。高脂血症の診断基準が薬物治療の適応になる。
  • スタチンのなかでプラバスタチンナトリウム(メバロチン®など)、シンバスタチンは高脂血症に保険適用が、フルバスタチンナトリウム、アトルバスタチンカルシウム水和物、ピタバスタチンカルシウム(リバロ®)、ロスバスタチンカルシウムは高コレステロール血症に保険適用がある。

処方例

    高LDLコレステロール血症

    (以下のいずれかを選択、または適宜増量・併用)

  • メバロチン錠(10mg) 1〜2錠 分1 夕食後 
  • リバロ錠(1mg) 1〜2錠 分1 夕食後
  • クレストール錠(2.5mg) 1錠 分1 朝食後
  • ゼチーア錠(10mg) 1錠 分1 朝食後
  • 高トリグリセライド血症

    (以下のいずれかを選択)

  • リピディルカプセル(100mg) 1〜2カプセル 分1 夕食後
  • エパデールSカプセル(600mg) 1〜3包 分1〜3 食直後
  • ペリシット錠(250mg) 3錠 分3 食直後
  • 混合型高脂血症(高LDLコレステロール血症と高トリグリセライド血症の合併)

    (基本的には単剤、場合により併用)

  • メバロチン錠(10mg) 1錠 分1 夕食後
  • リバロ錠(1mg) 1錠 分1 夕食後
  • ゼチーア錠(10mg) 1錠 分1 朝食後
  • リピディルカプセル(100mg) 1〜2カプセル 分1 夕食後
  • エパデールSカプセル(600mg) 1〜3包 分1〜3 食直後
  • 他のスタチン、フィブラート系薬、ニコチン酸製剤を使用してもよい。

患者・家族への説明のポイント

  1. 脂質異常症は心筋梗塞、脳梗塞などの動脈硬化性疾患発症の原因となる。
  2. 脂質異常症のおもな原因は動物性脂肪・コレステロールの過剰摂取、糖質過剰摂取、摂取カロリー過剰、喫煙、運動不足である。
  3. 脂質異常症治療の目的は動脈硬化性疾患の予防にある。
  4. 治療は食事・運動療法、禁煙などライフスタイルの改善が主体になる。
  5. リスクの高い場合は薬物療法が必要となること、薬の種類、効果と副作用、特に日本人のデータについて説明する。
  6. 脂質異常症の治療は生涯にわたる可能性があることを説明する。

どのような場合に専門医に紹介すべきか

  • 家族性高脂血症で診断および治療が困難な場合
  • 冠動脈疾患を伴う脂質異常症
  • 家族性低HDLコレステロール血症(30mg/dl以下)
  • 治療に抵抗する脂質異常症
  • 著明な高トリグリセライド血症(1,000mg/dl以上)
  • 薬物の重篤な副作用(筋肉痛でCPK 1,000IU/dl以上の場合、トランスアミナーゼ著明上昇など)

参考文献

  • Borg GA : Perceived exertion : a note on“history”and methods. Med Sci Sports 5 : 90, 1973.
  • Fager G, et al : Cholesterol reduction and clinical benefit ; Are there limits to our expectations? Arterioscler Thromb Vasc Biol 17 : 3527, 1997.
  • 佐々木 淳:脂質代謝異常:食事および運動療法.日内会誌 90:1990,2001.
  • メタボリックシンドローム診断基準検討委員会:メタボリックシンドロームの定義と診断基準.日内会誌 94:794,2005.
  • 日本動脈硬化学会 編:動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版.日本動脈硬化学会,東京,2007.
  • 日本動脈硬化学会 編:動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症治療ガイド2008年版.日本動脈硬化学会,東京,2008.
ガイドライン外来診療2010
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編集主幹:泉 孝英(京都大学名誉教授/京都・中央診療所)

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