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ガイドライン外来診療2009

貧血

  • 慶應義塾大学病院 血液内科 教授 池田 康夫 
    慶應義塾大学病院 血液内科 清水 隆之

診断

  • 貧血の一般症状には、顔面蒼白、起立性低血圧、頭痛、めまい、易疲労感、倦怠感、動悸、息切れなどがある。
  • 鉄欠乏の症状には、匙状爪(もろく、平坦)、舌痛、嚥下困難、異食症などがある。
  • 貧血の診断のために、血算一式(白血球分画、網状赤血球数、平均赤血球容積〈MCV〉を含む)、鉄欠乏状態の診断のために、血清フェリチン、総鉄結合能(TIBC)、血清鉄を測定する。
  • 小球性貧血で、血清フェリチンの低下、TIBC増加を認めた場合に、鉄欠乏性貧血(IDA)と診断する。
  • 小球性や正球性貧血で、血清鉄が低値にもかかわらず、血清フェリチンが増加または正常、網状赤血球数が正常または低下し、慢性炎症性疾患が存在する場合は、慢性炎症に伴う貧血(ACD)を疑う。

治療

    IDA

  • 原因疾患の検索と治療を行う。
  • 経口鉄剤を3〜6カ月、Hbと血清フェリチンが正常化するまで投与する。
  • 経口鉄剤の副作用である消化器症状が強い場合には、静注療法へ切り替える。
  • 原則、輸血は不要である。

臨床検査項目/臨床検査値(正常値/基準値)

    表4 健常日本人のヘモグロビン,TIBC,血清フェリチン値

    年齢(例数)
    ヘモグロビン
    g/dl
    TIBC
    μg/dl
    血清鉄
    μg/dl
    Tf飽和率
    血清フェリチン
    μg/l
    男性 25〜35(26)
    15.0±0.9
    333±46
    119±31
    36±11
    63(32〜126)
    女性 20〜29(40)
    13.5±0.6
    348±49
    100±36
    29±11
    18(9〜37)
    30〜39(31)
    13.5±0.8
    351±49
    96±36
    28±12
    19(9〜39)
    40〜49(32)
    13.1±0.8
    341±50
    98±32
    29±9
    23(12〜45)
    50〜59(31)
    13.4±0.9
    328±38
    81±37
    25±1
    30(14〜67)
    60〜75(27)
    13.4±0.9
    302±28
    74±27
    26±8
    48(25〜94)

    Tf飽和率:トランスフェリン飽和率

    (日本鉄バイオサイエンス学会ガイドライン作成委員会,2004)

処方例

    IDA

    (以下のいずれかを選択)

  • フェロミア錠(50mg) 2〜4錠 分2 朝 夕 食後
  • フェロ・グラデュメット錠(105mg) 1錠 分1 朝食後
  • フェジン注(40mg) 1〜3アンプル 分1
  • 必要総鉄量(mg)=[15−患者Hb(g/dl)]×体重(kg)×3

患者・家族への説明のポイント

  1. 原因疾患の検索と治療が重要である。
  2. 経口鉄剤は便が黒くなるが、問題はない。
  3. 経口鉄剤の副作用として、悪心、便秘、腹部不快感、腹痛、下痢、嘔吐などの消化器症状がある。副作用が強ければ、食直後に服用してみる。どうしても服用できない場合、静注療法を勧める。
  4. 貧血(Hb)が改善しても、貯蔵鉄(血清フェリチン)が満たされるまで、3〜6カ月の経口鉄剤の服用が必要である。
  5. 鉄欠乏の原因となる食生活がある場合には、改善する。

どのような場合に専門医に紹介すべきか

  • IDAと診断し治療したが、改善を認めない場合(経口鉄剤投与中は、指示通りに服薬できているかも確認する)
  • IDAもしくはACD以外の貧血の場合
  • 分類不能の貧血の場合
  • 原因不明の貧血の場合
  • 以上の場合は、血液専門医に紹介する。また、IDAの原因疾患の専門的治療が必要な場合には、当該専門医に紹介する。

参考文献

  • 木崎昌弘:貧血と多血症.標準血液病学(池田康夫 他 編).p17,医学書院,東京,2000.
  • 日本鉄バイオサイエンス学会ガイドライン作成委員会 編:鉄欠乏・鉄欠乏性貧血の予防と治療のための指針[第1版].響文社,札幌,2004.
  • Glader B : Anemia : General considerations. In : Greer JP, et al(eds): Wintrobe’s Clinical Hematology, 11th ed. p948, Lippincott Williams, Philadelphia, London, 2004.
  • 浦部晶夫:貧血.三輪血液病学 第3版(池田康夫 他 監修).p952,文光堂,東京,2006.
ガイドライン外来診療2010
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編集主幹:泉 孝英(京都大学名誉教授/京都・中央診療所)

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