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ガイドライン外来診療2009

肝炎・肝硬変

  • 東京都品川区 柴田内科・消化器科クリニック 院長 柴田 実

診断

急性肝炎

  • 急性肝炎が疑われた場合はまずウイルス性肝炎を疑う。
  • A型はIgM型HA抗体陽性、B型はHBs抗原陽性かつIgM型HBc抗体陽性、C型はHCV RNA陽性で発症前後でHCV抗体が陽転化。
  • A、B、C型肝炎が否定されたときは、E型肝炎、自己免疫性肝炎(AIH)、薬剤性肝障害を疑う。
  • E型肝炎はHEV RNA陽性あるいはペア血清でHEV抗体価上昇。AIHは抗核抗体陽性、IgG高値(>2,000mg/dl)、薬剤性肝障害は好酸球高値(>6%)、薬剤リンパ球刺激試験(DLST)陽性。
  • PT時間40%以下は急性肝炎重症型。そのうち発症8週以内に凝抂幣紊隆寮脳症を呈するものは劇症肝炎。
  • 慢性肝炎

  • B型のスクリーニングはHBs抗原。陽性例はHBe抗原、HBe抗体、HBV DNA量を測定。
  • C型のスクリーニングはHCV抗体。陽性例はHCVジェノタイプ(グループ分類)、HCV RNA量を測定。
  • 肝機能(AST/ALT)、肝合成能(PT時間、Alb、Ch-E)、血小板数、超音波検査、線維化マーカー(ヒアルロン酸)、可能なら肝生検で活動性と線維化の程度を評価する。
  • B、C型肝炎が否定されたときは、AIH、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、NASH、NAFLD、アルコール性肝障害、薬剤性肝障害などを疑う。
  • PBCは抗ミトコンドリア抗体陽性、ALP高値、IgM高値。非飲酒者の脂肪肝において肝生検でアルコール性肝炎の肝組織像を認めるものはNASH、肝生検未実施はNAFLD。アルコール性肝障害は飲酒歴がありγ-GTP、MCV、IgA高値。
  • 肝硬変

  • 黄疸、腹水、肝性脳症の有無から代償性か非代償性かを鑑別する。
  • ウイルス性(B型かC型)か非ウイルス性かを鑑別する。
  • 肝細胞癌と食道静脈瘤のスクリーニングを行う。

治療

    急性肝炎

  • 黄疸、食欲不振などの症状の強い例は入院し糖質輸液を行う。
  • 急性肝炎重症型、劇症肝炎は専門施設に転送する。
  • B型慢性肝炎

  • 自然経過でHBe抗原からHBe抗体へセロコンバージョン(SC)してALT正常な無症候性キャリアになる可能性があるため、発症後半年くらいは自然経過を観察する。
  • 自然経過を観察してもSCしない例は抗ウイルス療法を行う。自然経過例も治療例もALT高値例ほどSCが期待できる。
  • 抗ウイルス療法はエンテカビル水和物(バラクルード®)あるいはインターフェロン(IFN)を選択する。
  • C型慢性肝炎

  • 年齢、血小板数、ALT、ウイルス量、ジェノタイプを考慮しガイドラインに従った治療を行う。
  • ジェノタイプ1、高ウイルス量(≧5.0LogIU/ml)あるいはIFN再治療はペグIFN+リバビリン(レベトール®など)の48週投与を行う。
  • ジェノタイプ2、高ウイルス量はペグIFN+リバビリンの24週投与を行う。
  • 低ウイルス量(<5.0LogIU/ml)はIFN単独かペグIFNα-2a単独療法を行う。
  • IFN治療中は白血球数、好中球数、ヘモグロビン値、血小板数をフォローし投与量を調節する。
  • 高齢者(65歳以上)、糖尿病、高血圧などを有する例はIFNで合併症を来す頻度が高い。
  • ウイルス駆除でなく肝炎の進展抑制を目的とした場合は、IFN少量長期投与、ウルソデオキシコール酸(ウルソ®など)、グリチルリチン製剤(強力ネオミノファーゲンシー®など)、瀉血療法などを選択する。
  • 肝硬変

  • 一般には肝庇護療法を行う。可能な例は抗ウイルス療法を行う。
  • 腹水、肝性脳症、食道静脈瘤、肝癌合併例はその管理を行う。

臨床検査値(正常値/基準値)

  • T-Bil(総ビリルビン):0.3〜1.2mg/dl
  • AST:10〜40U/l
  • ALT:5〜45U/l
  • ALP:104〜338U/l
  • γ-GTP:男性79U/l以下、女性48U/l以下
  • PT時間:80.0〜100.0%
  • Alb:3.7〜5.5g/dl
  • Ch-E:男性245〜495U/l、女性198〜452U/l
  • ヒアルロン酸:50ng/ml以下
  • HBe抗原:陰性、1.0S/CO未満
  • HBe抗体:陰性、阻害率50.0%未満
  • HBV DNA(リアルタイムPCR法):検出せず
  • HCV抗体(3rd):陰性、COI値<1.0
  • HCV RNA(リアルタイムPCR法):検出せず

処方例

    急性肝炎

    食欲のない時期

  • ソリタ-T3号 500mL 点滴
  • B型慢性肝炎

    核酸アナログ製剤 初回治療

  • バラクルード錠(0.5mg) 1錠 分1 食間(食前後2時間あける)
  • IFN治療(ペグIFNはB型肝炎に有効だが保険適用がない)

  • イントロンA注 1回600万IU 筋注 週3回(24週)
  • ゼフィックス投与中のbreakthrough hepatitis出現時

    (以下を併用)

  • ゼフィックス錠(100mg) 1錠 分1
  • ヘプセラ錠(10mg) 1錠 分1  朝食後
  • C型慢性肝炎

    ペグIFN+リバビリン併用療法

  • 初回治療の高ウイルス量のうちジェノタイプ1は48週、ジェノタイプ2は24週。再治療は原則48週投与
  • (以下を併用)

  • ペグイントロン注 1回1.5μg/kg 皮下注 週1回(24〜48週)
  • 体重35〜45kg:60μg、46〜60kg:80μg、61〜75kg:100μg、76〜90kg:120μg、91〜120kg:150μg。
  • レベトールカプセル(200mg) 3〜5カプセル 分2 朝 夕 食後(24〜48週)
  • 体重60kg以下:600mg、60〜80kg:800mg、80kg超:1,000mg。
  • ジェノタイプ1、2とも保険適用。
  • または(以下を併用)

  • ペガシス注 1回180μg/mL 皮下注 週1回(24〜48週)
  • コペガス錠(200mg) 3〜5錠 分2 朝 夕 食後(24〜48週)
  • 体重60kg以下:600mg、60〜80kg:800mg、80kg超:1,000mg。
  • 初回治療はジェノタイプ1のみ保険適用。
  • IFN単独治療

    初回治療の低ウイルス量

    (いずれかを選択)

  • ペガシス注 1回180μg/mL 皮下注 週1回(24〜48週)
  • スミフェロン注 1回600万IU 皮下注 週3回(8〜24週、自己注射可能)
  • 肝発癌抑制のためのIFN少量長期投与

  • ペガシス注 1回90μg/mL 皮下注 週1回(24週以上)
  • ALT基準値1.5倍以下にコントロールできれば2週に1回も可。
  • 肝庇護療法

    (以下を併用)

  • ウルソ錠(100mg) 6錠 分3 食後(C型慢性肝炎では9錠まで増量可)
  • 強力ネオミノファーゲンシー注 1日1回40〜60mL 静注 週2〜3回
  • 1回100mLまで増量可。
  • 瀉血療法

    男性 1回300〜400mlを瀉血 (2〜)4週に1回

    女性 1回200〜300mlを瀉血 (2〜)4週に1回

  • 血清フェリチンが20ng/ml未満、Hbが10〜11g/dlを目安に繰り返す。その後はALT値、フェリチン値を参考にして、2〜3カ月に一度、維持瀉血を行う。
  • NASH

  • アクトス錠* (15mg) 1〜2錠 分1 朝食後
  • AIH

  • プレドニゾロン 初期30mg/日 分1 朝食後
                           維持療法 5〜10mg/日 分1 朝食後
  • 難治例

    (上記に併用)
  • アザニン錠* (50mg) 1錠 分1 朝食後
  • 軽症例

    (単独もしくはプレドニゾロンに併用)
  • ウルソ錠(100mg) 6錠 分3 食後
  • PBC

  • ウルソ錠(100mg) 6〜9錠 分3 食後
  • 難治例

    (上記に併用)
  • ベザトールSR錠* (200mg) 2錠 分2 朝 夕 食後
  • *保険適用注意

患者・家族への説明のポイント

    急性肝炎

  • ほとんどが1〜3カ月の経過で治癒する。
  • ごくまれに劇症化する例があるので症状の強いときは入院で経過観察。
  • C型肝炎は慢性化する頻度が高い。
  • B型慢性肝炎

  • ALT正常例は治療不要。
  • HBe抗原はウイルスが作る蛋白で、肝炎ウイルスの増殖が盛んなことを意味する。
  • HBe抗体は自分の体が作る蛋白で、陽性になるとウイルスに対する抵抗力がついたことを意味する。
  • HBV DNA量と病勢は相関し、5.0log copies/ml以上になると肝炎が悪化する可能性があり、5.0log copies/ml未満になると肝炎は沈静化する。
  • C型慢性肝炎

  • ペグIFN+リバビリン併用療法でジェノタイプ1は50〜60%、ジェノタイプ2は90%が治癒する。通常はALT高値例が治療適応であるが、ALT正常例も保険治療が可能。
  • IFNは発熱、食欲低下、貧血、白血球減少、うつ病、脱毛、間質性肺炎、甲状腺機能異常など種々の副作用がある。
  • ペグIFN+リバビリン併用療法は催奇形性があるため、男性患者、女性患者とも治療中および治療終了後6カ月間は避妊の必要がある。
  • 肝硬変

  • 進行例は予後不良。肝細胞癌、腹水、黄疸、肝性脳症、食道静脈瘤破裂による消化管出血などがおもな死因である。
  • 肝硬変は肝発癌の危険性が高いので早期発見のため腹部超音波検査などを定期的に受ける必要がある。

どのような場合に専門医に紹介すべきか

  • 急性肝炎:PT時間40%以下の重症例および劇症肝炎
  • 慢性肝炎:公的医療費補助の申請を依頼する例。肝生検を行う例。AIH、PBCなど特殊な疾患が疑われる例
  • 肝硬変:黄疸、腹水、肝性脳症などの肝不全症状を認める例。食道静脈瘤の治療が必要な例。AFP、PIVKA-狭眞洋磧肝細胞癌の合併が疑われる例

参考文献

  • Strader DB, et al : Diagnosis, management, and treatment of hepatitis C. Hepatology 39 : 1147, 2004.
  • 日本肝臓学会 編:NASH・NAFLDの診療ガイド.文光堂,東京,2006.
  • 日本肝臓学会 編:慢性肝炎の治療ガイド2008.文光堂,東京,2007.
  • Lok AS, et al : Chronic hepatitis B. Hepatology 45 : 507, 2007.
  • 肝硬変を含めたウイルス性肝疾患の治療の標準化に関する研究.厚生労働科学研究費補助金肝炎等克服緊急対策研究事業(肝炎分野).平成19年度総括・分担研究報告書.2008.
ガイドライン外来診療2010
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編集主幹:泉 孝英(京都大学名誉教授/京都・中央診療所)

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