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ガイドライン外来診療2009

過敏性腸症候群

  • 東北大学病院 総合診療部 教授 本郷 道夫 
    東北大学病院 心療内科 森下   城 

診断

  • 長期間(3カ月以上)にわたって慢性的(月に3日以上)に、排便によって改善する腹部不快あるいは腹痛がある。
  • 便秘もしくは下痢などの便通異常があるが、症状を説明するような器質的疾患がない。
  • 器質的疾患の除外検査は、診療レベルによって簡便なものから詳細なものまで、選択範囲が異なる。

治 療

    保証

  • 疾患自体は生活の質を障害し、治療を要するものであるが、生命に危険をもたらすものではないことを保証する。
  • 現時点の治療では、完全な症状消失を得ることは困難であるが、社会生活に障害のない状況への改善を目指して医師と患者との共同で治療を考える。
  • 生活指導

  • 症状発現に至る状況で、回避もしくは調整が可能なものを是正する。
  • 睡眠や食事を含めて、規則的な生活習慣の獲得を目指す。
  • 高脂肪食、強い香辛料を避け、偏った食事にならないように注意する。
  • 薬物療法

  • 上記の保証と生活指導を行ったうえで行う。サブタイプにかかわらず、便形状のコントロールのためにポリカルボフィルカルシウム(ポリフル®、コロネル®)を用いる。

    下痢型IBS:

    止瀉薬、乳酸菌製剤を基本とする。便通異常と知覚過敏改善のために5-HT3 受容体拮抗薬のラモセトロン塩酸塩(イリボー®)が2008年に発売された(保険適用は男性症例に限定されている)。

    便秘型IBS:

    緩下薬を併用する。

    混合型IBS:

    便通の状況に応じて、上記の治療法を組み合わせて行う。

  • 明らかなストレスや強い心理的偏倚があるとき、抗不安薬、抗うつ薬を併用する。
  • IBS:過敏性腸症候群

処方例

    男性の下痢型IBS

    (以下を併用)

  • ポリフル錠(500mg) 3錠 分3 食後
  • ラックビー散 3包 分3 食後
  • イリボー錠(5μg) 1錠 分1 朝食後
  • 不安を伴う下痢型IBS

    (以下を併用)

  • コロネル細粒(0.6g) 3包 分3 食後
  • セレキノン錠(100mg) 3錠 分3 食後
  • 痛みの強い下痢型IBS

    (以下を併用)

  • ポリフル錠(500mg) 3錠 分3 食後
  • チアトンカプセル(5mg) 3カプセル 分3 食後
  • 便秘型IBS

    (以下を併用)

  • コロネル細粒(0.6g) 3包 分3 食後
  • 酸化マグネシウム末 1日1.5g 分3 食後
  • ラキソベロン錠(2.5mg) 1錠 分1 就寝前
  • 不安抑うつ症状を伴うとき

    (上記に下記のいずれかを追加)

  • デパス錠(0.5mg) 3錠 分3 食後
  • トレドミン錠(25mg) 2錠 分2 朝 夕 食後
  • セディール錠(10mg) 3錠 分3 食後
  • ドグマチールカプセル(50mg) 3カプセル 分3 食後
  • 高齢者に対する投薬上の注意

    高齢者の場合、イリボー® あるいはロペミン® のように強い止痢効果を持つものでは、効果の過剰発現による重症便秘が出現する恐れがあるので、漫然と使用しないこと。

患者・家族への説明のポイント

器質的病変がなく、生命予後にも影響のない疾患であるが、患者の受ける苦痛は重大であり、治療すべき疾病として真摯に取り組むことが必要である。


どのような場合に専門医に紹介すべきか

  • プライマリケアの段階で心理的問題の併存が疑われる場合
  • 一般的治療に反応しない場合
  • 炎症性腸疾患の初期像、大腸の閉塞症状としての便秘の初期像などは、しばしばIBSと混同されがちであり、器質的疾患の除外のための精密検査を要する。
  • IBSではない可能性、進行した精神心理的問題を合併している可能性があるため、より精度の高い検査が必要となる。

参考文献

  • American Gastroenterological Association Medical Position Statement : Irritable Bowel Syndrome. Gastroenterology 112 : 2118, 1997.
  • Thompson WG, et al : Functional bowel disorders and functional abdominal pain. Gut 45 Suppl 2 : 43, 1999.
  • 佐々木大輔 他:過敏性腸症候群に対する治療ガイドラインの作成.Ther Res 21 : 1741, 2000.
  • Longstreth GF, et al : Functional bowel disorders. Gastroenterology 130 : 1480, 2006.
  • 福土 審 他:過敏性腸症候群.心身症診断・治療ガイドライン2006(小牧 元 他 編).p12,協和企画,東京,2006.
  • Spiller R, et al ; Clinical Services Committee of The British Society of Gastroenterology : Guidelines on the irritable bowel syndrome : mechanisms and practical management. Gut 56 : 1770, 2007.
  • Shinozaki M, et al : High prevalence of irritable bowel syndrome in medical outpatients in Japan. J Clin Gastroenterol 42 : 1010, 2008.
  • Miwa H : Prevalence of irritable bowel syndrome in Japan : Internet survey using Rome criteria. Patient Preference and Adherence 2 : 143, 2008.
  • 鳥居 明:本邦における便通異常と過敏性腸症候群患者に関する実態調査−一般生活者を対象としたアンケート調査結果−.診断と治療 96:1611,2008.
ガイドライン外来診療2010
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◎このコーナーでは、毎年発行されている書籍『ガイドライン外来診療』の2009年度版から、代表的な46疾患の診断、治療、処方例などを簡潔に解説した「要約」を転載しています。
◎書籍の最新版『ガイドライン外来診療2010』では、診断・治療のポイントとともに代表処方例を200以上掲載するほか、専門医の管理・治療が必要な26疾患の解説も掲載しています。また図表200点以上を収載、臨床現場で使いやすい2色刷になっています。

編集主幹:泉 孝英(京都大学名誉教授/京都・中央診療所)

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