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ガイドライン外来診療2009

感染性胃腸炎

  • 市立堺病院 総合内科 部長 藤本 卓司

診断

  • 摂食歴(卵、肉類、魚介類、乳製品、生野菜など)、旅行歴、ペット飼育、保育園やデイケアセンターの利用、抗菌薬(中止後も2カ月前まで遡って)、近い過去の入院、周囲の同症状者の有無などについて問診する。
  • 便培養を提出し、病態を説明し得る病原微生物が検出されれば診断に至る。
  • 悪寒戦慄があれば血液培養2セットを提出する。1セットでも陽性ならば診断的である。
  • 2カ月以内に抗菌薬投与歴があれば、クロストリジウム・ディフィシルの便毒素迅速検査を提出する。70〜80%程度の感度で診断できる。
  • 原虫を疑えば新鮮な便を直接鏡検する。赤痢アメーバ血清抗体は感度90%以上である。

治療

  • 脱水の補正、電解質・糖の補給によって全身状態を改善させる。
  • 多くの細菌性下痢症で抗菌薬を必要とする場合は少ない。
  • 非チフス性サルモネラ腸炎では抗菌薬の投与は症状や排菌期間を短縮せず、逆に保菌率を高めるため、通常は抗菌薬を用いない。腸管出血性大腸菌(EHEC)による腸炎では、抗菌薬を用いると溶血性尿毒症症候群(HUS)の発症率が高くなるという報告がある。

処方例

赤痢菌、サルモネラ(一部の症例)

  • クラビット錠(100mg) 4錠 分1* 3日間(菌血症では10〜14日間)
  • カンピロバクター(重症例、あるいは発症早期の場合)

  • クラリシッド錠 または クラリス錠(200mg) 2錠 分2 5日間
  • クロストリジウム・ディフィシル(抗菌薬の中止で改善しない場合)

    (いずれかを選択)

  • フラジール錠* (250mg) 6錠 分3 または 4錠 分4 10日間
  • 塩酸バンコマイシン 1日500mg 分4 10日間
  • *保険適用注意

患者・家族への説明のポイント

  1. 脱水・電解質・糖分の補正が重要であり、嘔吐がなければ経口による補給で十分であること、抗菌薬が必要である場合は少ないことを説明する。
  2. 7日以上下痢が続く場合は、比較的まれな微生物による感染性下痢症や感染症以外の疾患の可能性もあるため、必ず再診するように説明する。
  3. EHECによる場合はHUS発症の可能性(数%)があること、尿の色の変化に注意することを前もって説明しておく。
  4. ノロウイルス、ロタウイルス、赤痢菌、EHECなどは特に感染力が強いため、家族内の2次感染を防ぐために、吐物や糞便の処理後やドアノブなど手がよく触れる部分に接触した後の手洗いを励行すること、タオルなども別にするように説明する。

どのような場合に専門医に紹介すべきか

  • 脱水が著明で、意識障害やバイタルサインの乱れがある場合
  • 菌血症を疑う場合
  • 血便があり、腹痛の強い場合

参考文献

  • Guerrant RL, et al : Practice guidelines for the management of infectious diarrhea. Clin Infect Dis 32 : 331, 2001.
  • Thielman NM, et al : Acute Infectious Diarrhea. N Engl J Med 350 : 38, 2004.
  • Musher DM, et al : Contagious acute gastrointestinal infections. N Engl J Med 351 : 2417, 2004.
ガイドライン外来診療2010
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編集主幹:泉 孝英(京都大学名誉教授/京都・中央診療所)

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