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ガイドライン外来診療2009

急性胃炎・慢性胃炎

  • 大分大学医学部附属病院 消化器内科 診療教授 村上 和成

診断

    急性胃炎

  • 急激に発症し、上腹部痛、悪心・嘔吐、食欲不振、腹部膨満感を訴え、吐血、下血を伴い、しばしば心窩部圧痛を認める。
  • 診断は、基本的に内視鏡検査によって行われ、胃粘膜の浮腫、発赤、びらんがみられる。急性胃粘膜病変(AGML)では多発性の浮腫、点状・不整・地図状の発赤、びらん、潰瘍を認め、一部に出血を伴うことが多い。
  • 鑑別疾患として、消化性潰瘍、胆石症、急性膵炎などがあり、血液検査、腹部超音波検査などを組み合わせて診断する。
  • 慢性胃炎

  • 組織学的慢性胃炎の診断には、Updated Sydney Systemを用いることが推奨される。原因は、H. pylori 感染に起因するものがほとんどであり、胃粘膜の萎縮性変化を伴う。
  • 形態学的慢性胃炎は内視鏡検査や造影検査で診断する。わが国では木村・竹本の内視鏡検査による胃粘膜の萎縮性変化をもとにした分類が用いられることが多い。
  • 症候性慢性胃炎は、消化性潰瘍や癌などの器質的疾患は認めないが上部消化器症状が持続するもの(機能性ディスペプシア〈FD〉)であり、問診による診断が中心となる。

治 療

    急性胃炎

  • AGMLを含む急性胃炎の治療の基本は誘因の除去を第1に試み、薬物療法、安静および食事療法を行う。特にNSAIDs(低用量アスピリンを含む)などの場合、可能であれば原因薬剤を中止・減量する。
  • 慢性胃炎

  • 組織学的慢性胃炎:組織学的胃炎はほとんどがH. pylori 感染に起因するため、その治療には抗菌薬によるH. pylori 除菌が原則となる。
  • 形態学的慢性胃炎:内視鏡所見やX線所見から診断された胃炎に対しての治療方針は定められていない。患者の症状を聞きながら、以下の症候性慢性胃炎の治療法に準じて薬物治療を行う。
  • 症候性慢性胃炎:自覚症状を伴う場合は胃酸分泌抑制薬、消化管運動機能改善薬、抗不安薬などを用いる。器質的な異常のないFDにはさまざまな心理的要因が関与していることが多いため、身体・精神の両面から治療方法を考えていく必要がある。

処方例

    急性胃炎(AGMLを含む)

    (いずれかを選択)

  • ガスターD錠(10mg) 2錠 分2 朝 夕 食後
  • ・腎臓から排泄されるため、腎機能が低下している患者においては、投与量を減量する。血球減少を起こすことがあるので注意する。

  • サイトテック錠* (200μg) 4錠 分4 食後 就寝前
  • ・アスピリンを含むNSAIDsを投与中止できない場合に用いる。ただし、下痢・悪心などの副作用が出現しやすいので注意を要する。

    慢性胃炎(急性増悪時)

    組織学的胃炎

    (いずれかを選択)

  • ムコスタ錠(100mg) 3錠 分3 食後
  • ガスターD錠(10mg) 2錠 分2 朝 夕 食後
  • H. pylori 除菌

  • ランサップ400*  1シート 分2 朝 夕 食後 7日間
  • 薬疹、下痢、味覚異常などが出現することがあるので注意を要する。
  • 形態学的胃炎

  • ガスターD錠(10mg) 2錠 分2 朝 夕 食後
  • 症候性胃炎(機能性ディスペプシア〈FD〉)

    (以下のいずれかを選択)

  • ガスターD錠(10mg) 2錠 分2 朝 夕 食後
  • ガスモチン錠(5mg) 3錠 分3 食前 または 食後
  • ドグマチール錠* (50mg) 3錠 分3 食後
  • 錐体外路症状、けいれん、QT延長などを起こすことがあり、適時減量・中止する。
  • *保険適用注意

どのような場合に専門医に紹介すべきか

    急性胃炎

  • 嘔気・嘔吐が強く、飲水や薬剤内服が不能な場合
  • 消化管出血と思われる吐血、タール便を認める場合
  • 問診などよりアニサキス症が疑われる場合
  • 腐食性化学物質(酸、強アルカリなど)が原因の可能性がある場合
  • 慢性胃炎

  • H. pylori 感染胃炎が強く疑われ、除菌を専門医で行いたいと希望された場合
  • FDで、内科的薬物治療で効果がなく精神科的な治療が必要と思われる場合

参考文献

  • Schindler R : Gastritis. p29, Grune & Stratton, New York, 1947.
  • Kimura K : Chronological transition of the fundic-pyloric border determined by stepwise biopsy of lesser and greater curvatures of the stomach. Gastroenterology 63 : 584, 1972.
  • Marshall BJ, et al : Unidentified curved bacilli in the stomach of patients with gastritis and peptic ulceration. Lancet 1 : 1311, 1984.
  • 木村 健: 慢性胃炎.最新内科学大系 第41巻 胃炎.中山書店,東京,1993.
  • Dixon MF, et al : Classification and grading of gastritis : The Updated Sydney System. Am J Surg Pathol 20 : 1161, 1996.
  • 日本ヘリコバクター学会ガイドライン作成委員会:Helicobacter. pylori 感染の診断と治療のガイドライン2003年改訂版.日本ヘリコバクター学会誌4(Suppl.):2,2003.
  • Tack J, et al : Functional gastroduodenal disorders. Gastroenterology 130 : 1466, 2006.
  • 胃潰瘍ガイドラインの適用と評価に関する研究班 編:EBMに基づく胃潰瘍診療ガイドライン 第2版−H. pylori 二次除菌保険適用対応−.じほう,東京,2007.
ガイドライン外来診療2010
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編集主幹:泉 孝英(京都大学名誉教授/京都・中央診療所)

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