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ガイドライン外来診療2009

口内炎

  • 鳥取大学医学部附属病院 歯科口腔外科 教授 領家 和男 
    鳥取大学医学部附属病院 歯科口腔外科 准教授 谷尾 和彦 
    鳥取大学医学部附属病院 歯科口腔外科 講師 小谷   勇 

診断

  • ウイルス性口内炎はウイルスの種類により、水疱やびらんの発生部位、発症年齢に特徴があり、診断に有用である。
  • カンジダ性口内炎の白苔はガーゼにより剝離可能で、カンジダ菌の証明により診断する。
  • 水疱性口内炎の1つである天疱瘡の水疱は、ウイルス性口内炎と比べ大型で、血清の抗上皮細胞間抗体陽性、類天疱瘡は抗基底膜抗体が陽性である。
  • ベーチェット病のアフタ性口内炎は、口腔内に限局する慢性再発性アフタと比べ多発し、活動期では大型になる傾向がある。さらに年3回以上のアフタの出現および外陰部潰瘍、眼症状、皮膚症状、針反応が診断の助けとなる。

治療

  • 口内炎は局所的原因によるもの、全身的原因によるもの、原因不明のものの3つに分けられるが、歯垢、歯石、齲蝕、歯周病、不潔な義歯は口内炎の原因あるいは増悪因子となり、まずこれらの局所的因子の治療や除去が必要である。
  • 次いで、口内炎の原因に応じて抗菌薬、抗真菌薬、抗ウイルス薬による治療を行う。
  • また免疫能、抵抗力を低下させている全身的背景の改善を図るべきである。局所の痛みに対しては、対症療法としての鎮痛薬の投与、表面麻酔薬の使用なども2次感染の予防としての含嗽や抗菌薬の投与と同様重要である。
  • さらに難治性の口内炎の治療として漫然と長期にステロイド軟膏が使用されている場合には、口腔カンジダ症の発症や増悪を来す要因となり、まずはその使用を中止する必要がある。

臨床検査項目

    表1 口内炎を呈する代表的な疾患

    疾患名
    口腔粘膜病変
    臨床検査
    ウイルス性口内炎
    (1)単純疱疹 水疱,びらん 血清ウイルス抗体価,ウイルス分離,ウイルスDNA検出(PCR)
    (2)帯状疱疹 水疱,びらん,痂皮 血清ウイルス抗体価,ウイルス分離,ウイルスDNA検出(PCR)
    (3)ヘルパンギーナ 水疱,アフタ 血清ウイルス抗体価,ウイルス分離,ウイルスDNA検出(PCR)
    (4)手足口病 アフタ 血清ウイルス抗体価,ウイルス分離,ウイルスDNA検出(PCR)
    (5)麻疹 白斑(Koplik斑) 血清ウイルス抗体価,ウイルス分離,ウイルスDNA検出(PCR)
    (6)風疹 紅斑(Forschheimer斑) 血清ウイルス抗体価,ウイルス分離,ウイルスDNA検出(PCR)
    カンジダ性口内炎
    (7)口腔カンジダ症 白苔 培養検査,直接鏡検法(KOH法など)
    水疱性口内炎,びらん性口内炎,カタル性口内炎
    (8)尋常性天疱瘡 水疱,びらん 抗上皮細胞間抗体,Dsg1抗体,Dsg3抗体,病理組織学的検査(Nikolsky現象,Tzanck試験)
    (9)類天疱瘡 水疱,びらん 抗基底膜抗体,病理組織学的検査
    (10)扁平苔癬 白斑,びらん 病理組織学的検査,パッチテスト(口腔内修復物の金属アレルギーが疑われる場合)
    (11)移植片対宿主病(GVHD) 白斑,びらん,潰瘍 病理組織学的検査
    (12)多形滲出性紅斑
    ((1)〜(4))
    紅斑,水疱,びらん 皮膚の病理組織学的検査,白血球数,CRP,肝機能
    アフタ性口内炎
    (13)ベーチェット病 アフタ 皮膚の針反応,連鎖球菌ワクチンによるプリックテスト,白血球数,CRP,HLA-B51検査(陽性率約60%)
    (14)Sweet病 アフタ HLA-B54検査
    (15)クローン病 アフタ,潰瘍,肉芽腫 病理組織学的検査,注腸透視,大腸内視鏡
    (16)周期性好中球減少症
    ((1)(3)(4))
    アフタ 末梢血好中球数
    潰瘍性口内炎
    (17)急性壊死性潰瘍性歯肉炎 歯肉の壊死,潰瘍  
    (18)全身性エリテマトーデス(SLE) 白斑,潰瘍 尿蛋白定量,尿沈渣,抗二本鎖DNA抗体,抗Sm抗体,抗リン脂質抗体,抗核抗体陽性
    (19)白血病 腫脹,出血,潰瘍 白血球数,血液像,LDH,骨髄検査
    (森ら,2008より改変)

処方例

    ・ヘルペス性歯肉口内炎(軽症〜中等症)

    (以下を併用)

    (1)ゾビラックス錠(200mg) 5錠 分5 5日間

    (2)含嗽用ハチアズレ顆粒(2g) 1回1包を約100mLの微温湯に溶解し、1日3〜4回含嗽

    (3)アラセナ-A軟膏 1日3〜4回 患部に塗布

    ・重症例では入院させ、抗ウイルス薬の点滴静注。上記の(2)(3)も併用。

    帯状疱疹

    (以下を併用)

  • ゾビラックス 1回800mg 1日5回 7日間を限度として内服
  • ・重症例では点滴静注用(250mg)を1日3回点滴静注。

  • アラセナ-A軟膏 または ゾビラックス軟膏 1日3〜4回 患部に塗布
  • カンジダ性口内炎

    軽症

    (いずれかを選択)

  • ファンギゾンシロップ 1日数回 口腔内に直接塗布 または 精製水で10〜15倍に希釈し、含嗽
  • フロリードゲル経口用 1日数回 口腔内に直接塗布(義歯装着者では義歯内面にも塗布)
  • 中等症〜重症

    (いずれかを選択)

  • イトリゾールカプセル(50mg) 1〜2カプセル 分1 食後
  • イトリゾール内用液 1回20mL 分1 空腹時
  • 口腔扁平苔癬

    びらん、潮紅の強い症例

    (いずれかを選択)

  • デキサルチン軟膏 塗布
  • ケナログ口腔用軟膏 塗布
  • 抵抗性の症例

    (いずれかを選択)

  • チガソンカプセル 1日1mg/kgまで
  • サルコートカプセル(50μg) 噴霧器を用いて噴霧
  • 尋常性天疱瘡

  • プレドニゾロン 1日20〜80mgから開始し、徐々に減量
  • ・口腔粘膜にもステロイド薬(デキサルチン軟膏、ケナログ口腔用軟膏)の塗布。

    水疱性類天疱瘡

  • プレドニゾロン 1日30〜50mgから開始し、徐々に減量
  • 局所的な外用療法は尋常性天疱瘡と同様。
  • アフタ性口内炎

    ・接触痛緩和のため、ステロイド軟膏(ケナログ口腔用軟膏、アフタゾロン口腔用軟膏、デキサルチン軟膏、デルゾン口腔用など)の塗布や、貼付錠(アフタッチ)、貼付膜(アフタシールS)、噴霧薬(サルコート)。ビタミンCおよびE、パントテン酸の内服。

    ・2次的な感染に対しては抗菌薬含有トローチや抗菌薬の内服が必要なこともある。原因がウイルス性の場合は抗ウイルス薬の投与(ヘルペス性歯肉口内炎の項を参照)。ベーチェット病の場合はステロイド軟膏の塗布。ステロイド薬、コルヒチン* 、免疫抑制薬の内服。

    カタル性口内炎、びらん性口内炎

    ・含嗽薬、2次感染予防のための抗菌薬の内服。

    潰瘍性口内炎

    ・起炎菌がわかればそれに対応する抗菌薬、不明のときは広範囲スペクトルの抗菌薬の投与。含嗽薬の使用。同時に口腔内を清潔にし、2次感染予防のための抗菌薬の投与ならびに、補液や栄養管理を行う。

    ・疼痛の激しい場合は消炎鎮痛薬の投与やキシロカインゼリーの塗布を行う。

    ・褥瘡性潰瘍の場合には、接触痛に対してステロイド軟膏、2次的な感染に対して抗菌薬含有トローチ。

    壊疽性口内炎

    ・抗菌薬の大量投与。栄養管理。

    アレルギー性口内炎

    ・洗口、含嗽、ステロイド軟膏(デキサルチン軟膏)塗布。原因と思われる薬物、食品などを特定し、その使用を中止。

    〈付〉好中球の活性酸素産生が、アフタや種々の口内炎の症状を増悪していることが明らかとなっており、この作用を抑制する目的で以下の薬剤が使用され、症状の寛解(程度、出現頻度)が得られている。

    (以下のいずれかを選択)

  • ムコスタ錠*(100mg) 3錠 分3
  • アゼプチン錠*(1mg) 4錠 分2
  • ガスロンN錠*(2mg) 2錠 分2
  • *保険適用注意

患者・家族への説明のポイント

  1. 原因に応じて、抗菌薬、抗真菌薬、抗ウイルス薬による治療の必要性を説明する。
  2. 疾患によっては治療により短期間に治癒するものもあるが、自己免疫疾患や慢性炎症性の角化性病変には難治性の傾向があることを説明する。
  3. 口腔衛生不良、不潔な義歯の使用、口腔乾燥が口内炎の原因あるいは増悪因子となることがあり、齲蝕、歯周病の治療を含めた口腔ケア、義歯の清掃、保湿剤の使用による局所的誘因の除去の重要性について理解を得る。

どのような場合に専門医に紹介すべきか

  • 2〜3週間経過しても改善しないような場合
  • 鋭縁のある歯や義歯など、物理的な刺激を除去あるいは調整しても口内炎が縮小しない場合
  • 紫斑、血腫、出血、貧血などがみられ、血液疾患が疑われる症例
  • 薬疹などアレルギー性疾患で口腔だけでなく全身皮膚に拡大している症例
  • 最も見逃してはならないものは口腔癌で、特徴的な潰瘍と硬結の増大がみられる症例

参考文献

  • 黒川英雄:口腔粘膜病変,診査・診断・治療のガイドライン.九州歯科大学同窓会,北九州,2003.
  • 福田英嗣 他:皮膚疾患と口内炎.ENTONI 32:7,2003.
  • 山根源之 他:口腔粘膜疾患の診かた.日本歯科評論,東京,2007.
  • 橋本 隆:すべての医師に必要な皮膚科的知識.診断と治療 95:1343,2008.
  • 森 裕介 他:全身疾患に伴う口腔粘膜病変.臨床検査 52:381,2008.
ガイドライン外来診療2010
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編集主幹:泉 孝英(京都大学名誉教授/京都・中央診療所)

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