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ガイドライン外来診療2009

花粉症

  • 岡山大学病院 耳鼻咽喉科 准教授 岡野 光博

診断

  • 定義:花粉が原因(アレルゲン)となる儀織▲譽襯ー疾患である。
  • 花粉症の種類:これまでに約60種の花粉症が報告されている。代表的な原因花粉は、春の本木花粉(スギ、ヒノキ、カバノキ)、初夏のイネ科花粉、秋のキク科花粉である。
  • 有病率:約30%であり、低年齢化や多重感作例の増加が問題となっている。
  • 症状:鼻症状(くしゃみ、水様性鼻汁、鼻閉など)と眼症状(瘙痒感、流涙など)が主だが、咽喉頭症状や皮膚症状などもみられる。
  • 診断基準:典型的な臨床症状を有すれば、鼻汁好酸球検査、皮膚テスト(または血清総IgE抗体検査)または誘発テストの1つ以上が陽性。

治療

  • QOLの速やかな改善と維持が最大の目的である。
  • 治療法には、花粉抗原の除去・回避(セルフケア)、薬物療法、免疫療法、手術療法がある。
  • 病型(くしゃみ・鼻漏型、鼻閉型)と重症度で治療法を選択する。
  • 初期治療が有用である。

処方例

    初期療法

    遊離抑制薬、第2世代ヒスタミン受容体拮抗薬、Th2サイトカイン阻害薬、プロスタグランジンD2・トロンボキサンA2受容体拮抗薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬より選択する。

    (いずれかを選択)

  • アレグラ錠(60mg) 2錠 分2 朝 夕
  • オノンカプセル(112.5mg) 4カプセル 分2 朝 夕
  • 導入療法

    軽症例

    第2世代ヒスタミン受容体拮抗薬と点眼薬で治療を開始し、必要に応じて鼻噴霧用ステロイド薬を追加する。

    (以下を併用)

  • クラリチン錠(10mg) 1錠 分1 朝
  • リボスチン点眼液 1回1〜2滴 1日4回点眼
  • 中等症例

    くしゃみ・鼻漏型

    第2世代ヒスタミン受容体拮抗薬と鼻噴霧用ステロイド薬を併用する。点眼用ヒスタミン受容体拮抗薬も用いる。

    (以下を併用)

  • アレジオン錠(20mg) 1錠 分1 朝
  • ナゾネックス点鼻液 1回2噴霧 1日1回
  • パタノール点眼液 1回1〜2滴 1日4回点眼
  • 鼻閉型

    ロイコトリエン受容体拮抗薬と鼻噴霧用ステロイド薬を併用する。くしゃみ・鼻漏を訴える例では第2世代ヒスタミン受容体拮抗薬も処方する。点眼用ヒスタミン受容体拮抗薬も用いる。

    (以下を適宜併用)

  • シングレア錠(10mg) 1錠 分1 就寝前
  • スカイロン点鼻液 1回1噴霧 1日2回
  • リボスチン点眼液 1回1〜2滴 1日4回点眼
  • ジルテック錠(10mg) 1錠 分1 就寝前
  • 重症例

    くしゃみ・鼻漏型

    鼻噴霧用ステロイド薬と第2世代ヒスタミン受容体拮抗薬を併用する。点眼用ヒスタミン受容体拮抗薬も用いる。

    (以下を併用)

  • フルナーゼ点鼻液 1回1噴霧 1日2回
  • エバステル錠(10mg) 1錠 分1 朝
  • パタノール点眼液 1回1〜2滴 1日4回点眼
  • 鼻閉型

    鼻噴霧用ステロイド薬とロイコトリエン受容体拮抗薬と第2世代ヒスタミン受容体拮抗薬を併用する。必要に応じて点鼻用血管収縮薬を治療開始時の数日に限って使用する。点眼用ヒスタミン受容体拮抗薬も用いる。

    (以下を適宜併用)

  • スカイロン点鼻液 1回1噴霧 1日2回
  • シングレア錠(10mg) 1錠 分1 就寝前
  • タリオン錠(10mg) 2錠 分2 朝 夕
  • リボスチン点眼液 1回1〜2滴 1日4回点眼
  • トーク点鼻液 1回2〜3滴 1日1〜4回点鼻(鼻閉時のみ)
  • 最重症例

    多くの場合、充全型となり、鼻噴霧用ステロイド薬とロイコトリエン受容体拮抗薬と第2世代ヒスタミン受容体拮抗薬の併用に加え、点鼻用血管収縮薬を治療開始時の数日に限って使用する。鼻閉が特に強い場合、ステロイド薬禁忌疾患の合併のないことを確認して、経口ステロイド薬を4〜7日間に限って用いざるを得ない症例もある。点眼用ステロイド薬を用いることもある。

    (以下を適宜併用)

  • ナゾネックス点鼻液 1回2噴霧 1日1回
  • オノンカプセル(112.5mg) 4カプセル 分2 朝 夕
  • アレロック錠(5mg) 2錠 分2 朝 就寝前
  • トーク点鼻液 1回2〜3滴 1日1〜4回点鼻(鼻閉時のみ)
  • プレドニン錠(5mg) 2錠 分1 朝
  • フルメトロン点眼液(0.02%) 1回1〜2滴 1日4回点眼
  • 小児例

    成人に準じた薬物治療を行うが、小児適応の認められている治療薬は少なく、また小児用剤形を持つものでもアレルギー性鼻炎に適応のない薬剤もある。花粉症治療薬の投与量は、小〜中学生は成人の半量が基準となる。

    くしゃみ・鼻漏型

    ヒスタミン受容体拮抗薬が中心となる。

    ドライシロップ希望

  • アレジオンドライシロップ 0.25〜0.5mg/kg(最大で20mgを超えない) 分1
  • 錠剤希望

  • アレグラ錠(30mg) 2錠 分2 朝 夕
  • 鼻閉型

    ロイコトリエン受容体拮抗薬が中心となるが、保険適用は喘息のみである。

    ドライシロップ希望

  • オノンドライシロップ* 7mg/kg 分2 朝 夕 
  • 錠剤希望

  • キプレスチュアブル錠*(5mg) 1錠 分1 就眠前
  • 重症例

    バイオアベイラビリティの少ない鼻噴霧用ステロイド薬を慎重に投与する。

  • フルナーゼ小児用点鼻液(25μg) 1回1噴霧 1日2回
  • *保険適用注意

患者・家族への説明のポイント

  1. 花粉症は花粉が原因で起こるアレルギー疾患である。スギ・ヒノキ花粉症が代表であるが、これまでに約60種の花粉症が知られている。現在の有病率は約30%で急増している。特に患者の低年齢化や多重感作が問題となっている。
  2. 花粉の飛散に一致する鼻眼症状が主体であるが、咽喉頭症状、下気道症状、耳症状、皮膚症状などもみられる。症状のみならずQOLも著しく低下する。
  3. セルフケアとして、花粉情報の利用、マスクやメガネなどで花粉を体内に入れない工夫が重要である。
  4. 花粉症に用いる薬剤にはいくつかの種類がある。病型と重症度に応じて選択する。薬剤の効果と副作用には個人差が大きい。なるべく早く最も適した薬剤をみつけ、次シーズン以降は当該薬剤をベースに初期治療を行うことが望ましい。
  5. 手術療法は対症療法であり花粉症が治るわけではないが、花粉の本格飛散前にレーザーによる鼻粘膜焼灼術を行うこともある。本格花粉飛散後のレーザー照射は避ける。
  6. 花粉症は自然治癒が非常に少ない。薬物療法が無効、あるいは薬物に頼らない長期寛解を望むなら特異的免疫療法を考慮する。即効性はない。より安全で根治的な治療法の開発が続けられている。

どのような場合に専門医に紹介すべきか

  • 治療に反応しない難治例
  • 副鼻腔炎が合併する例
  • 鼻閉が強く、鼻中隔弯曲や肥厚性鼻炎などの鼻腔形態異常、あるいは口蓋扁桃・アデノイド肥大が疑われる例
  • 免疫療法やレーザー治療を希望する例

参考文献

  • 鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会:鼻アレルギー診療ガイドライン−通年性鼻炎と花粉症−2009年版(改訂第6版).ライフ・サイエンス,東京,2008.
  • 馬場廣太郎 他:鼻アレルギーの全国疫学調査2008(1998年との比較)−耳鼻咽喉科医およびその家族を対象として−.Prog Med 28 : 2001, 2008.
  • 岡野光博:下鼻甲介手術.耳鼻・頭頸外科 80:69,2008.
ガイドライン外来診療2010
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◎このコーナーでは、毎年発行されている書籍『ガイドライン外来診療』の2009年度版から、代表的な46疾患の診断、治療、処方例などを簡潔に解説した「要約」を転載しています。
◎書籍の最新版『ガイドライン外来診療2010』では、診断・治療のポイントとともに代表処方例を200以上掲載するほか、専門医の管理・治療が必要な26疾患の解説も掲載しています。また図表200点以上を収載、臨床現場で使いやすい2色刷になっています。

編集主幹:泉 孝英(京都大学名誉教授/京都・中央診療所)

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