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ガイドライン外来診療2009

喘息

  • 帝京大学医学部附属病院 呼吸器・アレルギー内科 教授 大田 健

診断

  • 喘息の診断は問診が重要な役割を演じる。喘息症状に加えて、鼻炎、副鼻腔炎、鼻茸やアトピー性皮膚炎などの併発を明らかにする。さらにアレルギー疾患の家族歴や既往歴、本人や同居者の喫煙、住宅・室内環境、ペット、職業と職場環境などを問診する。
  • 喘息の診断には、JGL2006の「成人喘息での診断の目安」が、簡便で有用である。

    (1)発作性の呼吸困難、喘鳴、咳(夜間、早朝に出現しやすい)が反復する。
    (2)可逆性の気流制限:自然に、あるいは治療により寛解する。気流制限の有無の評価にはスパイロメトリーが必要である。結果として得られる1秒量、1秒率が、気道閉塞を評価するゴールドスタンダードであり、フローボリューム曲線は、末梢気道の状態を把握するよい指標となる。またピークフローメーターによるピークフロー(PEF)の測定も気道閉塞を検出することができる。
    (3)気道過敏性の亢進:煙、香料、冷気などで咳や喘鳴が誘発されることで推測できる。
    (4)アトピー素因:環境アレルゲンに対するIgE抗体の存在を認める。
    (5)気道炎症の存在:喀痰・末梢血中の好酸球数の増加を認める。
    (6)鑑別診断:症状が他の心肺疾患によらないことを確認する。高齢社会を迎え、うっ血性心不全による心臓喘息といわれる状態との鑑別、またその原因となり得る急性心筋梗塞の有無まで診断する。中年以降の喫煙者では、慢性閉塞性肺疾患(COPD)との鑑別、あるいは合併の有無を明らかにする。急性発症の呼吸困難という点では、緊急な対応を必要とする気胸と肺血栓塞栓症とを除外する。喘息には気道感染の併発が高率にみられることも考慮することが必要である。

  • JGL2006の「成人喘息での診断の目安」を外来で判定可能な内容に改変すると、以上のようになる。項目(1)、(2)、(5)を満足すれば喘息の診断が強く示唆され、また非発作時の場合で1秒量やPEFが正常で可逆性気道閉塞が検出できないときは、(1)、(3)、(5)を満足しても診断を支持すると考えられる。

治療

  • 治療の目標の第1は、健常人と変わらない日常生活が送れることであり、喘息死の回避、治療薬による副作用がないことである。
  • 治療の標的は、気道閉塞と慢性の気道炎症である。
  • 長期管理は、喘息の症状の有無にかかわらず、慢性の気道炎症をおもな標的として、患者の重症度に応じた内容で継続される。重症度の目安は、ステップ1(軽症間欠型)では症状はあるが毎週はない、ステップ2(軽症持続型)では症状は毎週あるが毎日ではない、ステップ3(中等症持続型)と4(重症持続型)では、ともに症状は毎日あるが、後者では日常生活が妨げられた状態である。
  • 長期管理では、吸入ステロイド薬(ICS)をステップ2以上では第1選択薬とし、低用量、中用量、高用量を重症度に合わせて投与する。ステップ3の治療で治療効果が不十分であれば専門医への紹介を考慮する。
  • ICSの併用薬には、テオフィリン徐放製剤(SR-T)、ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)、長時間作用性β2刺激薬(LABA)が推奨されている。ただしLABAは、必ずICSと併用しなければならない。
  • 気道のリモデリングによる難治化を防止するために早期治療介入(early intervention)としてステップ1へのICS投与が推奨される。
  • 喘息症状の出現時には、気管支拡張薬(吸入β2 刺激薬、あるいは経口β2 刺激薬とテオフィリン薬)を頓用する。
  • 急性増悪(発作)では、患者の状態に応じて手早く問診・診察し、今回の症状が出現してからの治療を確認する。
  • 喘息以外の理由で呼吸困難を起こした疑いがあれば、鑑別に必要な諸検査を行う。
  • 救急受診の基準は、起坐呼吸のみられる中等度以上である。
  • 血管確保、ステロイド薬とテオフィリン薬の点滴投与、β2刺激薬吸入、アドレナリン皮下注射、酸素投与などを発作強度と状態に応じて施行する。中等症や重症で治療効果が不十分な場合は、入院可能な施設に移送する。

臨床検査項目/臨床検査値(正常値/基準値)

  • スパイロメトリーでは予測値が年齢、性別、身長で規定され、1秒量、努力性肺活量、FV曲線の各指標は予測値に対する%値で評価し、80%以上が正常である。また1秒率は70%未満で閉塞性換気障害ありとする。ただし我々は、85%以下で気道の閉塞性疾患を示唆するという検証結果を得ている。
  • 臨床検査の正常値/基準値は、検査室により多少の違いを認める。喘息の場合、血算の白血球数は正常で、好酸球数は増加する。増加の目安としては、分画で6%以上ある いは500/μl以上である。
  • 血清IgEの増加があればアトピー素因を示唆する。特異的IgE抗体は陽性かどうかと陽性度の高さに注目する。その他、薬物療法に関連して、尿所見、血糖値、肝機能や腎機能をチェックし評価しておく。

処方例

    各ステップ

  • サルタノールインヘラー 1回1〜2吸入 頓用
  • ・以下の各ステップで症状出現時頓用。

    ステップ1:症状の出現は週1回未満

  • パルミコート200μgタービュへイラー 1回1吸入 1日2回 朝 夕
  • 高齢者で吸入速度が不十分な場合

  • オルベスコ200μgインヘラー 1回1吸入 1日1回 夕
  • ステップ2:症状は毎日ではないが毎週

    (以下を併用)

    ①アドエア100ディスカス 1回1吸入 1日2回 朝 夕

    ②テオドール錠(100mg) 2錠 分2 朝 就寝前

    上記で不十分の場合

    (②を4錠に増量、さらに以下を併用)

    ③オノンカプセル(112.5mg) 4カプセル 分2 朝 夕

    特に女性の若年成人や①で不十分な場合

    (以下を併用)

  • パルミコート200μgタービュへイラー 1回1吸入 1日2回 朝 夕
  • セレベント50ディスカス 1回1吸入 1日2回 朝 夕
  • 高齢者で吸入速度が不十分な場合

    (以下を併用)

  • オルベスコ200μgインヘラー 1回1吸入 1日1回 夕
  • ホクナリンテープ 2mg 1日1回
  • ・テープ剤で皮膚症状が出れば経口薬に変更。

    ステップ3:症状は毎日、日常活動可能

    (以下を併用)

    ①アドエア250ディスカス 1回1吸入 1日2回 朝 夕

    ②テオドール錠(100mg) 4錠 分2 朝 就寝前

    ③シングレア錠(10mg) 1錠 分1 就寝前

    ・上記で不十分なら②を血中濃度チェック後に5錠**、さらに必要なら6錠**へと増量。5錠の場合、分2は朝2錠・就寝前3錠、分3は朝2錠・昼1錠・就寝前2錠とする。

    高齢者で吸入速度が不十分な場合

    (以下を併用)

  • キュバール100エアゾール 1回2吸入 1日2回 朝 夕
  • ホクナリンテープ 2mg 1日1回
  • ステップ4:症状は毎日、日常活動に支障

    (以下を併用)

  • アドエア500ディスカス 1回1吸入 1日2回 朝 夕
  • テオドール錠(100mg) 6錠** 分2 朝 就寝前
  • シングレア錠(10mg) 1錠 分1 就寝前
  • ・上記で不十分なら②を血中濃度チェック後に7錠**、さらに必要かつ血中濃度に問題がなければ8錠**へと段階的に増量。分3とし、7錠では朝2錠・昼2錠・就寝前3錠、8錠では朝3錠・昼2錠・就寝前3錠とする。

    頻脈や動悸がなければ別の剤形のLABAを追加

  • メプチンミニ錠(25μg) 4錠 分2 朝 就寝前
  • さらに間欠的に経口ステロイドを投与

  • プレドニン錠(5mg) 3錠 分1 朝
  • 高齢者で吸入速度が不十分な場合

    (以下を併用)

  • オルベスコ200μgインヘラー 1回2吸入 1日2回 朝 夕
  • ホクナリンテープ 2mg 1日1回
  • **用量注意

患者・家族への説明のポイント

  1. 喘息が治るのは、小児で60%前後、成人で10%足らずといわれており、特に成人では治ることが期待できない。
  2. 十分な薬物療法で、喘息を完全にコントロールすることを目標に治療を継続する。
  3. 不十分な治療は喘息死につながる可能性があるので、勝手に治療を中止しない。
  4. ICSおよび併用する各種薬剤は安全性の高いことが示されている。

どのような場合に専門医に紹介すべきか

  • 中用量のICSを投与するステップ3の治療で十分なコントロールが得られない場合
  • 経口ステロイド薬の投与を必要とする場合
  • 起坐呼吸のある中発作で1時間の治療で反応しない場合、あるいはそれ以上の重症発作の場合(入院する可能性が高くなる)

参考文献

  • 日本アレルギー学会喘息ガイドライン専門部会 監修:喘息予防・管理ガイドライン2006.協和企画,東京,2006.
  • 大田 健 監修:GINA2006日本語版.協和企画,東京,2006.
  • 日本アレルギー学会:アレルギー疾患 診断・治療ガイドライン2007(西間三馨 監修).協和企画,東京,2007.
ガイドライン外来診療2010
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◎このコーナーでは、毎年発行されている書籍『ガイドライン外来診療』の2009年度版から、代表的な46疾患の診断、治療、処方例などを簡潔に解説した「要約」を転載しています。
◎書籍の最新版『ガイドライン外来診療2010』では、診断・治療のポイントとともに代表処方例を200以上掲載するほか、専門医の管理・治療が必要な26疾患の解説も掲載しています。また図表200点以上を収載、臨床現場で使いやすい2色刷になっています。

編集主幹:泉 孝英(京都大学名誉教授/京都・中央診療所)

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