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ガイドライン外来診療2009

誤嚥性肺炎/嚥下性肺炎

  • 順天堂大学医学部附属順天堂医院 呼吸器内科 准教授 佐藤 弘一

診断

  • 多くの症例では、発熱、喀痰、咳嗽、頻呼吸、頻脈などを伴うが、高齢者では食欲低下や日常活動低下、意識障害、失禁など症状が非典型的な場合があり注意が必要である。
  • 誤嚥を来しやすい病態(脳血管障害、神経筋疾患、認知症、胃食道逆流など)があり、発熱、咳嗽、喀痰、日常活動低下や意識障害などがみられたら誤嚥性肺炎/嚥下性肺炎の可能性も考える。
  • 明らかな誤嚥が確認される症例では診断は容易であるが、誤嚥の確認が困難である不顕性誤嚥によるものも多い。
  • 胸部X線写真では肺炎像が認めがたいものもある。
  • 嫌気性菌を含む口腔内常在菌が原因となることが多く、喀痰検査では起因菌の決定が難しいことも多い。
  • いったん改善しても繰り返して発症することも多い。

治療

    急性期の治療

  • 急性期には水分バランス、栄養状態に注意しながら全身状態の管理と肺炎に対する抗菌薬の投与を行う。
  • 患者は基礎疾患を有する高齢者であることが多く、重症度は中等症以上の肺炎として対処する。
  • 起因菌としては、肺炎球菌、嫌気性菌、インフルエンザ菌、黄色ブドウ球菌、緑膿菌などの頻度が高い。
  • 抗菌薬はβラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系薬を第1選択として、その他に第3世代セフェム系薬、カルバペネム系薬を投与し、適宜クリンダマイシン(ダラシン®など)を併用する。
  • 高齢者では特に腎機能低下に注意し、使用量は通常量の3/4程度にとどめ、成人常用量を最高量と考えて投与することが望ましい。
  • 安定期の予防

  • 誤嚥性肺炎は反復して起こることが多いため、肺炎発症時の治療に加えて、その予防が重要である。
  • 口腔ケア:歯磨きの徹底、義歯の手入れ、うがいにより口腔内を清潔に保つ。歯周病の治療を行う。
  • 脳血管疾患の予防:高血圧や糖尿病などの生活習慣病のコントロールと、脳血管障害の進展を防止。
  • 体位:胃食道逆流を防ぐ体位をとる。食後、就寝時にはできるだけ頭位を高く保つ。
  • 経管栄養:嚥下障害が強く、自力での食事摂取不能な場合や、誤嚥を反復する場合は経管栄養(胃瘻造設)を考慮。
  • 薬物療法:嚥下反射、咳反射を担っている内因性物質であるサブスタンスP、ドパミンを増加させる(ACE阻害薬やパーキンソン病治療薬)。

処方例

    抗菌薬

    (経験的治療としていずれかを選択。起因菌が判明すれば感受性に合わせて変更する)

  • ユナシン-S静注用(1.5g) 1回3g 1日2回 点滴静注
  • カルベニン点滴用(0.5g) 1回0.5g 1日2回 点滴静注
  • ・高齢者では特に腎機能低下に注意し、使用量は通常量の3/4程度にとどめ、成人常用量を最高量とする。

    嚥下機能改善の薬物療法

    (いずれかを選択)

  • タナトリル錠* (5mg) 1錠 分1
  • シンメトレル錠* (50mg) 3錠 分3 食後
  • *保険適用注意

患者・家族への説明のポイント

  1. 誤嚥性肺炎は、吐瀉物や雑菌を含んだ口腔内容物、食物が気道内へ流入(誤嚥)することによって生じたものである。
  2. 明らかな誤嚥を認めないような少量の反復性の誤嚥(不顕性誤嚥)によっても生じる。
  3. 誤嚥は反復することもあり、肺炎も再発の危険がある。
  4. 抗菌薬による治療も必要であるが、誤嚥予防も重要である。
  5. 誤嚥予防に加えて口腔ケアなども肺炎予防に役立つ。

どのような場合に専門医に紹介すべきか

  • 低酸素血症、意識障害、血圧低下などのみられる重症肺炎例
  • 栄養状態の低下、電解質バランスの異常など持続的な輸液管理を必要とする場合
  • 肺炎の再発を繰り返す場合
  • 嚥下評価、誤嚥予防指導が困難な場合

参考文献

  • 嚥下性肺疾患研究会:嚥下性肺疾患の診断と治療.ファイザー,東京,2003.
  • American Thoracic Society and Infectious Diseases Society of America : Guidelines for the management of adults with hospital-acquired, ventilator-associated, and healthcare-associated pneumonia. Am J Respir Crit Care Med 171 : 388, 2005.
  • 日本呼吸器学会市中肺炎診療ガイドライン作成委員会 編:日本呼吸器学会「呼吸器感染症に関するガイドライン」成人市中肺炎診療ガイドライン.日本呼吸器学会,東京,2007.
  • 日本呼吸器学会呼吸器感染症に関するガイドライン作成委員会 編:日本呼吸器学会「呼吸器感染症に関するガイドライン」成人院内肺炎診療ガイドライン.日本呼吸器学会,東京,2008.
ガイドライン外来診療2010
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編集主幹:泉 孝英(京都大学名誉教授/京都・中央診療所)

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