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ガイドライン外来診療2009

肺炎(市中肺炎)

  • 信楽園病院 呼吸器内科 部長 青木 信樹

診断

  • 症状:咳嗽、喀痰、胸痛、呼吸困難、チアノーゼなどの呼吸器(局所)症状と、発熱、悪寒、頭痛、全身倦怠感、食欲低下などの全身症状を来す。
  • 細菌性肺炎では膿性痰が多く、非定型肺炎では頑固な乾性咳嗽が特徴的である。
  • 高齢者では発熱があっても気づかないか訴えないことも多く、食欲不振、倦怠感、意識障害などで発症することがしばしばある。
  • 胸部X線所見で細菌性なのか、非定型なのかを鑑別するのは困難なことが多い。
  • 細菌性肺炎では白血球数増多、CRP上昇、赤沈値亢進などが認められるが、マイコプラズマ肺炎、クラミジア肺炎では白血球数増多は著明でないことが多い。
  • 肺炎と診断したならただちに治療の場を決定する。A-DROPスコアのほか、呼吸数、画像所見、経口摂取の可否、宿主病態などから総合的に判断し、外来治療か入院治療か決定する。
  • 肺炎球菌、レジオネラの尿中抗原は有用であるが、陰性であってもそれぞれの感染が否定されるわけではなく、レジオネラの場合は特に病歴聴取が重要となる。
  • 細菌性肺炎と非定型肺炎の鑑別法はマイコプラズマ感染症では合致率が高いが、クラミジア肺炎ではそれほどでなく、レジオネラ症は別に考える。
  • 細菌学的検査は治療開始前に施行する。初期治療無効例で、次の治療を考える場合に有用である。

治療

  • 原因菌が判明しないときは、細菌性肺炎か非定型肺炎か鑑別してエンピリック治療を、原因菌が判明した場合はターゲット治療を開始する。
  • レスピラトリーキノロンはエンピリック治療の第1選択薬とは原則しないが、初期治療が予後を大きく左右すると思われる症例、慢性の心・呼吸器疾患を基礎に有する症例、ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)感染が疑われる症例では薬物動態/薬力学(PK/PD)を考慮した使用を行う。
  • 治療開始3日後には、初期治療の有効性を判定する。それ以前であっても悪化傾向があれば、治療の変更を考慮する。
  • 初期治療が無効の場合には、病原微生物以外の要因によるものか、再度鑑別することも重要となる。

予防(高齢者市中肺炎)

  • 手洗い、うがい、マスク
  • 口腔ケア、歯磨き
  • 咳嗽反射確保(ACE阻害薬*、アマンタジン塩酸塩〈シンメトレル® など〉*投与)
  • 栄養状態を含めた宿主病態のコントロール
  • インフルエンザワクチン接種
  • 肺炎球菌ワクチン接種
  • *保険適用注意

臨床検査項目/臨床検査値(正常値/基準値)*

・末梢血白血球数 男性 3,900〜9,800 /μl
女性 3,500〜9,100 /μl
・CRP 0.3以下 mg/dl
・BUN 5〜20 mg/dl
・AST(GOT) 10〜27 IU/l
・ALT(GPT) 5〜33 IU/l
・LDH 110〜220 IU/l
・CK 24〜170 IU/l
・PaO2 80〜100 Torr
・SaO2 94〜99 %
・肺炎球菌尿中抗原 陰性
・レジオネラ尿中抗原 陰性

*値はすべて参考値。検査方法によって異なることに注意

処方例

    細菌性肺炎が疑われる場合

    基礎疾患、危険因子がない場合

    (いずれかを選択)

  • オーグメンチン錠(250mg) 4錠 分4 食後 就寝前
  • サワシリン錠**(250mg) 6錠 分3 または 8錠 分4 食後 就寝前(分4)
  • 慢性呼吸器疾患を有するか、最近抗菌薬を使用した、あるいはペニシリンアレルギーのある場合

    (以下のいずれかを選択)

  • ジェニナック錠(200mg) 2錠 分1 朝食後
  • アベロックス錠(400mg) 1錠 分1 朝食後
  • グレースビット錠(50mg) 2錠 分2 朝 夕 食後
  • 肺炎球菌と判明した場合

    PRSP感染の可能性が低いと判断された症例

  • サワシリン錠**(250mg) 6錠 分3 または 8錠 分4 食後 就寝前(分4)
  • ・PRSP感染が疑われる症例(65歳以上、アルコール多飲、幼児と同居、3カ月以内にβラクタム系薬の使用あり)

    (以下のいずれかを選択)

  • ジェニナック錠(200mg) 2錠 分1 朝食後
  • アベロックス錠(400mg) 1錠 分1 朝食後
  • グレースビット錠(50mg) 2錠 分2 朝 夕 食後
  • ケテック錠(300mg) 2錠 分1 朝食後
  • その他の細菌感染と判明した場合

  • ペニシリン系薬の場合は高用量
  • セフェム系薬は高用量でも有効性は期待しにくい(保険適用に限度あり)
  • ジェニナック錠(200mg) 2錠 分1 朝食後
  • 外来抗菌薬静注療法を行う場合

  • ロセフィン注(1g) 1〜2バイアル 1日1回 点滴静注
  • 非定型肺炎が疑われる場合

    基礎疾患がない、あるいはあっても軽度または若年者の場合

    (以下のいずれかを選択)

  • クラリス錠(200mg) 2錠 分2 朝 夕 食後
  • ジスロマック錠(250mg) 2錠 分1 朝食後 3日間
  • ミノマイシン錠(100mg) 2錠 分2 朝 夕 食後
  • 高齢者、慢性心・呼吸器疾患のある場合

    (以下のいずれかを選択)

  • ジェニナック錠(200mg) 2錠 分1 朝食後
  • アベロックス錠(400mg) 1錠 分1 朝食後
  • ケテック錠(300mg) 2錠 分1 朝食後
  • 細菌性肺炎なのか非定型肺炎なのか鑑別困難な場合

    (以下のいずれかを選択)

  • ジェニナック錠(200mg) 2錠 分1 朝食後
  • アベロックス錠(400mg) 1錠 分1 朝食後
  • グレースビット錠(50mg) 2錠 分2 朝 夕 食後
  • ケテック錠(300mg) 2錠 分1 朝食後
  • ただし、ケテック錠を使用する際は意識消失発作を考慮し、運転しないことを確認する。
  • **用量注意

患者・家族への説明のポイント

  1. 市中肺炎はごくありふれた疾患であるが、高齢になると、死亡率が高い。
  2. 原因微生物は多岐にわたるが、肺炎球菌が最も高頻度で、インフルエンザ菌、肺炎マイコプラズマ、肺炎クラミジア、黄色ブドウ球菌、レジオネラなどがあり、近年、肺炎球菌、インフルエンザ菌、肺炎マイコプラズマ、黄色ブドウ球菌などは抗菌薬に対する耐性化が問題となっている。
  3. 肺炎と診断したならば、治療の場をまず決定する。外来治療が可能なのは、軽症から中等症までで、経口摂取が可能(食欲低下がない)で、かつ、慢性の心・呼吸器疾患などが基礎にない場合に限られる。レジオネラ症が疑われる場合は入院治療が望ましい。
  4. 使用している抗菌薬の有効性の判定は、3日後には少なくとも行うべきであるため、来院してもらう。悪化傾向があればただちに受診するように指導する。
  5. 抗菌薬に限らず、有害事象が出現する可能性があることを説明し、出現時には連絡するように指導するが、可能な限り受診してもらう。
  6. 最も高頻度に原因菌となる肺炎球菌のワクチン接種は、65歳以上の高齢者では有用であることを認識してもらう。

どのような場合に専門医に紹介すべきか

  • A-DROPスコアおよび画像所見、呼吸数などから入院治療が必要と考えられた症例
  • 初期治療が無効で悪化傾向の症例
  • 感染症の経過に影響すると思われる基礎疾患(心・呼吸器疾患、免疫不全、腫瘍など)を有する症例
  • レジオネラ尿中抗原陽性例

参考文献

  • Bartlett JG, et al : Practice guidelines for the management of community-acquired pneumonia in adults : Infectious Diseases Society of America. Clin Infect Dis 31 : 347, 2000.
  • Felmingham D, et al : Increasing prevalence of antimicrobial resistance among isolates of Streptococcus pneumoniae from the PROTEKT surveillance study, and compatative in vitro activity of the ketolide, telithromycin. J Antimicrob Chemother 50(Suppl S1): 25, 2002.
  • 松島敏春:市中肺炎.内科 89:1320,2002.
  • Mandell LA, et al : Update of practice guidelines for the management of community-acquired pneumonia in immunocompetent adults. Clin Infect Dis 37 : 1405, 2003.
  • 日本呼吸器学会呼吸器感染症に関するガイドライン作成委員会 編:日本呼吸器学会「呼吸器感染症に関するガイドライン」成人市中肺炎診療ガイドライン.日本呼吸器学会,東京,2005.
  • 日本呼吸器学会市中肺炎診療ガイドライン作成委員会 編:日本呼吸器学会「呼吸器感染症に関するガイドライン」成人市中肺炎診療ガイドライン.日本呼吸器学会,東京,2007.
  • Mandell LA, et al : Infectious Diseases Society of America/American Thoracic Society consensus guidelines on the management of community-acquired pneumonia in adults. Clin Infect Dis 44(Suppl 2): S27, 2007.
  • Morozumi M, et al : Increased macrolide resistance of Mycoplasma pneumoniae in pediatric patients with community-acquired pneumonia. Antimicrob Agents Chemother 52 : 348, 2008.
ガイドライン外来診療2010
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編集主幹:泉 孝英(京都大学名誉教授/京都・中央診療所)

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