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ガイドライン外来診療2009

インフルエンザ

  • 岐阜市・河合内科医院 院長 河合 直樹 
    国立病院機構九州医療センター 名誉院長 柏木 征三郎

診断

  • 季節性のインフルエンザは現在の日本ではA/H1N1(Aソ連)型、A/H3N2(A香港)型、B型のいずれかのインフルエンザウイルスに起因する。
  • 流行は毎年11〜12月頃に始まり、1〜3月頃にピークを迎え4〜5月に終息することが多いが、その規模・時期や流行するウイルス型は年によって異なる。
  • 潜伏期は通常1〜3日程度と考えられ、咳、くしゃみなどによる直接の飛沫感染が主であるが、飛沫核感染(空気感染)や接触感染もある。
  • 通常、突然、悪寒・高熱などで発症し、全身症状(頭痛、全身倦怠感、関節痛、筋肉痛、食欲不振など)、呼吸器・上気道炎症状(咳や咽頭痛、鼻汁など)が出現する。なお高齢者やB型では高熱に至らず微熱程度にとどまることもある。
  • 正確な診断には迅速診断キットが必要で、これにより約5〜15分でA、B型の鑑別を含めた診断が可能である。
  • 検体は鼻腔拭い液、咽頭拭い液、鼻腔吸引液のほかに、鼻汁検体も一部保険適用になっている。
  • 迅速診断キットの感度、特異度は高く、信頼性は高い。発症ごく初期のウイルス量が少ない時期には陰性であっても、症状からインフルエンザが強く疑われれば半日〜1日後に再検査を考慮したほうがよい。
  • インフルエンザは、症状からは他のかぜ症候群やインフルエンザ様疾患との鑑別が困難な場合もあるが、まれに重篤な合併症(脳炎・脳症、肺炎など)を起こすことがあり、的確な診断と治療が求められる。

治療

  • 対症療法中心から、2001年以降はA、B型の両方に有効なノイラミニダーゼ(NA)阻害薬のオセルタミビルリン酸塩(タミフル®)、ザナミビル水和物(リレンザ®)を中心とした抗インフルエンザウイルス薬主体の治療に変貌した。これらの薬は発症48時間以内に使用を開始する必要がある。
  • 管理・治療の目標は、迅速診断キットでなるべく早く確定診断し、必要性があれば抗インフルエンザウイルス薬治療を開始することで、患者を早く軽快させ合併症を防ぐとともに、周囲への感染拡大も防ぐことにある。
  • 抗インフルエンザウイルス薬のなかでもM2蛋白阻害薬のアマンタジン塩酸塩(シンメトレル® など)はA/H3N2型で、またオセルタミビルリン酸塩は最近A/H1N1型で耐性化が進んでいる。しかし現在の迅速診断キットでは、A型の中のA/H1N1型かA/H3N2型かの鑑別はできない。したがってA型の場合、ザナミビル水和物の使用は問題ないが、それ以外の抗インフルエンザ薬を使用する場合は、サーベイランスで流行の主体がA/H1N1型かA/H3N2型かを把握して使用することが望ましい。
  • 一般的な対症療法として、安静、保温、栄養・水分補給などのほか、アセトアミノフェンなどの解熱薬の適時使用、鎮咳去痰薬、抗ヒスタミン薬、蛋白分解酵素薬などの使用は問題ない。また、細菌感染の合併が疑われる場合には抗菌薬投与が行われ、特に高齢者や慢性呼吸器疾患などの基礎疾患を有する患者では抗菌薬投与を躊躇すべきではない。
  • 幼小児や未成年者で問題となっている異常行動は、オセルタミビルリン酸塩のみならず、ザナミビル水和物、アマンタジン塩酸塩、アセトアミノフェンなどの使用後や、無治療の場合でも発生しており、インフルエンザの発症初期には家族などが患者を注意深く見守る必要がある。
  • 一般的な予防法として、うがい、手洗い、マスク着用などがある。またワクチン接種は有効かつ安全であり、毎年の接種が望ましい。ただし本ワクチンは不活化ワクチン(HAワクチン)であり、安全性は高いが、有効率には限界もあり過信は禁物である。

臨床検査項目

  • 血液検査では白血球数やCRPは上昇せず、白血球数はむしろ減少傾向にあり、細菌2次感染例で増加する。なお、血清抗体価測定にはおもにHI(赤血球凝集抑制)法が用いられ、急性期と回復期のペア血清で4倍以上の上昇がみられれば有意である。

処方例

    以下のいずれかを選択。5日間投与

  • リレンザ 1日20mg 分2 1回2吸入
  • ・5歳以上の小児および成人に対しての使用量。

  • タミフルカプセル(75mg) 2カプセル 分2
  • ・成人および体重37.5kg以上の小児に対しての使用量。ただし10歳代(ハイリスクは使用可)およびA/H1N1型耐性ウイルスには推奨されない。

  • タミフルドライシロップ(3%) 1日4mg/kg 分2
  • 1歳以上の小児に対しての使用量で、1回最高用量はオセルタミビルとして75mg。ただし10歳代(ハイリスクは使用可)およびA/H1N1型耐性ウイルスには推奨されない。

  • シンメトレル 1日100mg 分1〜2

    ・成人に対しての使用量で、A型にのみ有効。ただしA/H3N2型耐性ウイルスには推奨されない。

患者・家族への説明のポイント

  1. 普通感冒と異なり、症状や感染力が強く、特に乳幼児や高齢者ではまれに重篤な合併症を引き起こすことがあることを診断確定時に説明する。
  2. 治癒しないうちに無理に学校や仕事に行くと、感染拡大する可能性があることを診断確定時に説明する。
  3. 幼小児や未成年者で問題となっている異常行動は、オセルタミビルリン酸塩のみならず、ザナミビル水和物、アマンタジン塩酸塩、アセトアミノフェンなどの使用後や、無治療の場合でも発生しており、インフルエンザの発症初期には家族などが患者を注意深く見守る必要があることを説明する。

どのような場合に専門医に紹介すべきか

  • 呼吸困難や肺炎などの合併がある場合
  • けいれん、意識障害、循環不全を伴う小児の場合
  • 基礎疾患を有し、全身状態が悪い場合
  • 抗インフルエンザウイルス薬を投与して4日以上経過しても症状の改善がみられない場合

参考文献

  • Kawai N, et al : A comparison of the effectiveness of oseltamivir for the treatment of influenza A and influenza B : a Japanese multicenter study of the 2003-2004 and 2004-2005 influenza seasons. Clin Infect Dis 43 : 439, 2006.
  • 厚生労働省健康局結核感染症課・日本医師会感染症危機管理対策室:インフルエンザ施設内感染予防の手引き 平成18年2月改訂版.
  • Kawai N, et al : Longer virus shedding in influenza B than in influenza A among outpatients treated with oseltamivir. J Infect 55 : 267, 2007.
  • 日本臨床内科医会インフルエンザ研究班 編:インフルエンザ診療マニュアル2008-2009年版.日臨内科医会誌 23(4)臨時付録,2008.
  • Kawai N, et al : A comparison of the effectiveness of zanamivir and oseltamivir for the treatment of influenza A and B. J Infect 56 : 51, 2008.
ガイドライン外来診療2010
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編集主幹:泉 孝英(京都大学名誉教授/京都・中央診療所)

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