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ガイドライン外来診療2009

かぜ症候群

  • 大同病院 院長(呼吸器科) 吉川 公章

診断

  • 症状から臨床的に診断される。重篤な疾患との鑑別が主体となる。
  • 鼻閉、鼻水で発症し、咽頭痛を伴う。咽頭痛は早期に改善することが多く、その後咳嗽を伴うことがある。微熱、倦怠感など軽微な全身症状を伴う。
  • 鼻水は漿液性から膿性に変化することがある。
  • 3〜7日で軽快するが、2週間程度鼻症状、咳嗽が継続する症例がある。
  • 臨床検査は他疾患を除外するために行う。
  • 鑑別診断

  • アレルギー性鼻炎:鼻症状以外に認められる咽頭痛、全身倦怠感などの症状を欠く。季節性など既往の症状が診断に有効である。かぜ症候群として診断後、鼻症状が遷延する場合など、鼻汁の好酸球の有無、他のアレルギー素因など検討を行う必要がある。
  • インフルエンザ:38℃以上の発熱での急激な発症が典型的である。頭痛、筋肉・関節痛を伴う。流行期に典型的な症状であれば鑑別は容易である。咽頭ぬぐい液、鼻汁などによるインフルエンザウイルス抗原の迅速検査が普及しており、診断に有効である。
  • 急性副鼻腔炎:副鼻腔炎は病初期にはかぜ症候群と症状による鑑別が困難であるが、14日を超える症状の持続、いったん軽快後5〜7日で再度頭痛、顔面痛、咳嗽などで再悪化する場合に副鼻腔炎を考慮する必要がある。顔面痛、膿性の鼻汁、においの減少・消失をしばしば伴う。副鼻腔炎を疑うときには診断にX線写真が有効である。
  • 扁桃炎、咽頭炎:鼻症状を欠く。扁桃、咽頭の理学的所見を観察することで鑑別を行う。HIV感染時の咽頭炎症状は鑑別が困難である。15%程度に認められるA群β溶連菌感染を鑑別する。急な発熱、咽頭痛で発症し、扁桃滲出性変化などを認める。咽頭ぬぐい液でのA群β溶連菌迅速診断が有用である。
  • 急性喉頭蓋炎:急な発熱、咽頭痛で発症し、急激に喘鳴を伴う気道狭窄を起こす疾患で、主としてインフルエンザ菌による。嚥下痛を強く訴えることが多い。救急外来において見逃してはいけない疾患の1つである。
  • 百日咳:感染初期のカタル期はかぜ症候群と症状による鑑別は困難である。成人で痙咳期の症状が軽微で、遷延性咳嗽、慢性咳嗽が持続する症例が少なからず経験される。症状からは、乾性咳嗽が継続する遷延性咳嗽、慢性咳嗽時に咳喘息、アレルギー咳などとの鑑別が必要となる。家族内の発症状況などからカタル期に百日咳を疑った場合は、特殊な培地での百日咳菌の培養は可能である。
  • 下気道病変:2週間以上咳嗽が継続する場合には、胸部X線撮影を行い、肺結核、肺癌、間質性肺炎などの鑑別スクリーニングを行う。

治療

  • 薬物療法は対症療法が主体となり、安静、保温、栄養摂取が重要である。
  • かぜ症候群と診断した場合には、抗菌薬を使用しないことが重要である。
  • 抗菌薬投与で2次感染の防止、罹病期間の短縮を来すことはない。むしろ抗菌薬投与による副作用の発現がみられること、耐性菌の出現が懸念されることなど、患者および社会に不利益となる。
  • 自然治癒する疾患であることを十分患者に説明し、理解を得る努力が必要である。
  • 1週間以上症状が遷延する、軽快後再悪化する、38℃以上の発熱が出現するときなど再度受診を指導する。

処方例

    (以下を併用)

  • PL顆粒 1日3g 分3 食後 または カロナール錠(200mg) 6錠 分3 食後
  • イソジンガーグル 2〜4mLを水で約60mLに稀釈して、1日数回うがい
  • ・PL顆粒には第1世代の抗ヒスタミン薬が含有されており、眠気、倦怠感など副作用に注意が必要。高齢者への使用にはふらつき、転倒などに注意が必要。

    ・全身症状が強い場合

  • ロキソニン錠(60mg) 3錠 分3 食後
  • ・鼻閉症状が強い場合

  • トーク 1回2〜3滴 1日数回点鼻または噴霧
  • ・数日の使用で終了。

患者・家族への説明のポイント

  1. かぜ症候群は多種類のウイルスにより起こる疾患群であり、1つのウイルスは通常1回しか病気を起こさないが、多くの種類のウイルスが関与することで生涯何度も罹患すると考えられている。鼻汁、鼻閉、くしゃみなどの鼻症状が主体で、病初期に出現する咽頭痛は数日で軽快することが多いが鼻症状は継続する。通常3〜7日で軽快するが、咳、くしゃみ、鼻閉が2週間以上継続することもある。
  2. ウイルスに対する特異的な治療方法はない。治療は症状の軽減が主体である。薬物治療により、罹病期間の退縮をさせることはできない。抗菌薬は細菌感染に有効であるが、ウイルスによるかぜ症候群には無効である。かぜは手に付いたウイルスから感染が広がり、その手で目、鼻、口などを触ることによって感染が成立する。ドアノブ、電話などに付着したウイルスが数時間生存することが報告されている。ウイルスを含む粒子が呼吸、咳、くしゃみなどで空気中に飛散しても感染が広がる。日常生活では、生活環境を暖かく保つなど工夫する。早く休む、温かい食べ物をとるなど工夫をする。
  3. 38℃以下の発熱では入浴を制限する必要はないが、入浴時には身体が冷えないよう注意する。旅行時に感染した際は、旅行日程などから無理をせず、早期に帰宅するなどを考慮する。

どのような場合に専門医に紹介すべきか

    かぜ症候群で専門医に相談することは通常不要である。むしろ無用な受診を避けるように指導をする。

  • 鑑別診断で、急性喉頭蓋炎を疑った場合、即時2次救急病院へ転送
  • 急性副鼻腔炎が疑われる場合、耳鼻科へ紹介
  • 2週間以上咳嗽が継続する場合、肺結核、肺癌、間質性肺炎などの疾患鑑別が必要であり、胸部X線撮影を行うなど精査を開始
  • X線所見などから何らかの呼吸器疾患を疑う場合、呼吸器内科へ紹介

参考文献

  • Fendrick AM, et al : The economic burden of non-influenza-related viral respiratory tract infection in the United States. Arch Intern Med 163 : 487, 2003.
  • Heikkinen T, et al : The common cold. Lancet 361 : 51, 2003.
  • 日本呼吸器学会呼吸器感染症に関するガイドライン作成委員会 編:日本呼吸器学会「呼吸器感染症に関するガイドライン」成人気道感染症診療の基本的考え方.日本呼吸器学会,東京,2003.
  • Arroll B, et al : Antibiotics for the common cold and acute purulent rhinitis. Cochrane Database Syst Rev, 2005.
  • Pratter MR : Cough and the common cold : ACCP evidence-based clinical practice guidlines. Chest 129 : 72S, 2006.
ガイドライン外来診療2010
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編集主幹:泉 孝英(京都大学名誉教授/京都・中央診療所)

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