2006.03.31

大腸がん肝転移時の肝動注療法はより有効で安全、新たな比較研究で確認

 大腸がんの肝転移治療で、全身投与と肝動脈注入療法のどちらが効果的か、同一の化学療法剤を用いた無作為割付試験の結果、肝動注の方が生存期間が有意に長く、副作用も少ないことがわかった。米Memorial Sloan-Kettering Cancer CenterのNancy E. Kemeny氏らが、フルオロウラシル(FU)とロイコボリン(LV)を用いて、静注と肝動注を比較する試験を行って明らかにしたもので、詳細は、Journal of Clinical Oncology(JCO)誌電子版に2006年3月20日号に報告された。

 米国では、転移性大腸がん患者の約6割に肝転移が見られる。近年、イリノテカン、オキザリプラチンなどの新規化学療法剤が登場するまで、転移性の切除不能大腸がんの標準治療は、FUとLVの静注だった。この治療を受けた患者の生存期間の中央値は12カ月と報告されている。

 正常な肝実質は血液供給を門脈循環に依存する。一方、肝転移部は、血液供給のほとんどを冠動脈から得ている。そのため、肝転移には肝動注が有効と考えられた。実際、全身性の化学療法と肝動注療法を比較した無作為割付試験が複数件行われ、奏功率は肝動注の方が有意に高いことが示されている。しかし、これらの研究は、患者数が少ない、クロス・オーバー試験だった、2通りの方法で投与された化学療法剤が異なっていた、などの問題があった。

 そこで著者たちは、より大規模な比較研究を実施した。対象は、大腸がんで切除不能の転移が肝実質の70%未満、放射線検査で肝外転移がないと判断された患者で、原則、化学療法歴がない135人。試験期間は1996年1月15日から2000年12月29日。

 68人を肝動注に割り付け。ポンプを用いた肝動注(フロキシウリジン+LV+デキサメサゾン)を14日間、その後ヘパリン生理食塩水を14日間投与する治療を平均3回繰り返した。また、67人を全身性化学療法に割り付け。LV(体表面積1m2あたり20mg)に続きFU(同425mg)を静注する治療を5日間連続で4週ごとに平均4回実施した。

 主要エンドポイントである全生存期間は、肝動注群で有意に長かった(中央値は24.4カ月と20カ月、p=0.0034)、肝転移無増悪期間も肝動注群で長かった(9.8カ月と7.3カ月、p=0.034)。しかし、肝外転移無増悪期間は肝動注群のほうが短かった(7.7カ月と14.8カ月、p=0.029)。

 奏功率は肝動注群で有意に高かった。肝動注群では完全奏功3人、部分奏功26人で47%、全身化学療法群では14人が部分奏功で24%(p=0.012)だった。病勢安定は17%と21%で有意差が見られなかった。

 QOLは、3カ月ごとに6回評価した。3カ月後と6カ月後の分析結果は、肝動注群で有意な身体機能改善を示した(それぞれp=0.038、p=0.024)。が、それ以外の指標においては、両群間に有意差は見られなかった。

 肝動注群で有意に少なかった副作用は、グレード3以上の好中級減少症(0%と45%、p<0.0001)、下痢(5%と16%、p=0.075)、口内炎(0%と24%、p=0.00002)。肝動注群ではビリルビン値の上昇(18.6%と0%、p=0.006)が有意に多かった。

 肝動注のアウトカム予測のための分子マーカーとして、TSとp53が有用かどうかも調べた。肝がんの生検標本のチミジル酸合成酵素(TS :thymidylate synthase)レベルをPCRで測定、4未満のグループに比べ、4以上のグループの生存期間は有意に短かった(p=0.014)。また、p53の発現状況を免疫組織化学検査により調べたところ、全生存期間との関係は有意ではなかった。しかし、これら2つを組み合わせると、p53が低発現でTSが4以上の患者群の生存期間が最も短く、p53が低発現でTSが4未満のグループの生存期間が最も長かった。

 肝動注は、全生存期間と肝転移無増悪期間を延長、奏功率を向上させた。身体機能の改善も高かった。が、肝外転移部の進行を抑制する効果は、全身化学療法の方が高かった。これらの結果は、生存期間には、肝臓内病変の進行が大きく関わること、さらに、新たな化学療法剤を用いた全身性の治療を肝動注と併用することでアウトカム向上が望めることを示唆している。著者らは、最新の化学療法剤を用いて、肝動注単独または肝動注と新治療薬の併用の全体的な利益とコストを評価する試験が必要だ、と述べている。

 本論文の原題は「Hepatic Arterial Infusion Versus Systemic Therapy for Hepatic Metastases From Colorectal Cancer: A Randomized Trial of Efficacy, Quality of Life, and Molecular Markers (CALGB 9481)」。アブストラクトはJCO誌Webサイトのこちらで閲覧できる。(大西淳子、医学ジャーナリスト)


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