2006.03.29

楽観的な高齢者の心血管死リスクは悲観的な人の半分、オランダの研究

 これまでにも、楽観性が、あらゆる原因による死や、心血管疾患の有病率と死亡率に関係するという報告があったが、いずれの研究も交絡因子による調整が十分でなかった。オランダUtrecht大学のErik J. Giltay氏らは、オランダ人男性高齢者を15年間追跡し、心血管危険因子、うつ病などで調整しても、楽観的な人の心血管死のリスクは有意に低く、ほぼ半分であることを示した。詳細は、Archives of Internal Medicine誌2006年2月27日号に報告された。

 楽観性の評価には、大きく異なる方法が用いられている。物事の解釈の仕方が楽観的かどうか(楽観的説明スタイル)を調べる方法と、気性が楽観的かどうか(属性的楽観性)を調べる方法の2つだ。今回は、過去に心血管死亡率との関係の研究に適用されており、肯定的な将来予測ができるかどうかに基づく評価が可能な、属性的楽観性に焦点を当てた。

 もちろん、楽観性が本人の行動やライフスタイルに影響し、間接的に死亡率を下げる可能性はある。そこで著者たちは、多様な心血管危険因子と社会人口学的特性で調整した。また、悲観性とうつ病は関係すると考えられていることから、うつ病を組み込んだ多変量解析も行い、楽観性が心血管死亡率低下の独立した因子であるかどうかを調べた。

 対象となったZutphen Elderlyコホートは、1900年1月29日から1920年8月30日までにオランダZutphenで生まれ、そこで暮らしている男性からなる。1985年に生存していた64〜84歳の1266人のうち、心血管疾患とがんの既往がなく、楽観性調査に参加したのは887人。1990年の調査に応じたのは560人、1995年には343人、2000年には171人で、15年間に4回の調査すべてを受けたのは115人。ベースラインで、心血管危険因子および社会人口学的特性に関する完全なデータが得られたのは545人だった。

 楽観的な気質は質問票により評価した。質問事項は「いまだ人生に多くを期待する」「今後数年間に自分の人生に何が起こるか楽しみだ」「日々はゆっくりと過ぎていく」「将来に向けた計画はまだたくさんある」の4つ。回答を3ポイント式で集計した。「全くそう思う」がスコア2、「ある程度はそう思う」と「わからない」がスコア1、「そうは思わない」がスコア0。スコアの平均が大きいほど楽観的といえる。スコアの平均値に基づいて対象者を最低三分位群(0-1.25)、第2三分位群(1.33-1.75)、最高三分位群(2.00-2.00)に分類。

 ベースラインで楽観性が高かったのは、年齢が若い人、自己申告による健康状態がよい人、より運動している人、独居期間が少ない人、教育レベルが高い人、うつ病スコアが低い人など。また、総コレステロール値が高い人の方が楽観的だった。それ以外の心血管危険因子(BMI、高血圧、糖尿病、HDLコレステロール値)と楽観性の間に関係は見られなかった。

 楽観性スコアの全体の平均は、1985年の1.50から2000年の1.27まで、15年間に有意に減少した。が、楽観性の信頼性係数としてCronbachのアルファ係数を算定したところ、1985〜1990年の5年間で0.72、15年間、4回の検査をすべて受けた115人では0.78(P<0.001)で、一貫性、すなわち、楽観的な気質の持続が示された。

 15年間に545人中373人(68.4%)が死亡、うち187人(50.1%)が心血管死だった。1985年に最高三分位群に分類された人を最低三分位群の人と比較すると、心血管危険因子で調整した心血管死のハザード比は0.45(95%信頼区間0.29-0.68)。自己申告による健康状態、運動、飲酒その他の交絡因子で調整すると、関係は弱まったが、なお有意だった(0.57、0.36-0.89、p=0.01)。心血管死のリスクは、楽天的な気質と逆相関していた(傾向のP値は<0.001)。

 さらに1990年のデータを利用して、調整にうつ病(Zungうつ病自己評価尺度に基づく)を加えた。うつ病スコアが軽-重度のうつ病であることを示した患者は分析から除いた。10年間の追跡で、すべての交絡因子とうつ病で調整した心血管死亡率のハザード比は、0.51(0.26-0.98、P=0.04)で、引き続き有意だった。

 得られた結果は、楽観的だと心血管死のリスクが約半分になることを示した。著者たちはその理由の一部は、楽観性が高い人ほど社会的な支援を自ら積極的に求め、心血管疾患を発症した後も治療に励み、リハビリのための運動も確実に行うからではないか、と考えている。さらに、悲観性を心血管死の危険因子に加えるべきだという。が、楽観性を高めることによって心血管死のリスクを減らせるかどうかは、今後の研究で明らかになるだろうと述べている。

 本論文の原題は「Dispositional Optimism and the Risk of Cardiovascular Death」。アブストラクトはこちらで閲覧できる。(大西淳子、医学ジャーナリスト)


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