2006.03.29

MRSAの市中感染が増えている! 外来患者から分離した黄色ブドウ球菌は72%が耐性化――米研究で明らかに

 従来、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)への暴露は、主に病院で起きていた。しかし近年、医療とは縁のない人々にもMRSA感染が見られるようになっている。米国ジョージア州アトランタで外来を訪れた黄色ブドウ球菌(S. aureus)による皮膚・軟部組織感染患者を対象に、集団発生ではないMRSA市中感染の状況を調べたところ、感染部位から分離された黄色ブドウ球菌の、実に72%がMRSAであり、その87%が市中感染型のMRSAクローンであることが判明した。米Beacon ClinicのMark D. King氏らの報告で、詳細は、Annals of Internal Medicine誌2006年3月7日号に掲載された。

 これまで、市中感染MRSAによる皮膚・軟部組織感染患者のほとんどは、矯正施設の被収容者や同性愛の男性、スポーツチームの選手など、特定の条件を持つ人々だった。そうした集団から分離されるMRSAの遺伝子型は、主として、パルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)によって「USA 300」に分類される。一方、米国先住民の市中感染MRSAには「USA 400」タイプが多いと報告されている。

 USA 300とUSA 400は通常、ベータラクタム系抗菌剤とエリスロマイシンに耐性で、クリンダマイシン、トリメトプリム-スルファメトキサゾール配合剤、フルオロキノロンには感受性を示す。一方、医療関連MRSAは一般に多剤耐性を示す。

 著者らは、2003年8月1日から2003年11月15日の間に、アトランタの市街地にある1000床の病院と関連する外来施設を受診した外来患者の皮膚と軟部組織から採取された黄色ブドウ球菌の遺伝子型を同定した。また、各患者の医療歴を抽出、抗生物質感受性試験の結果も得た。

 結果として、384人の皮膚・軟部組織に黄色ブドウ球菌の感染があった。389検体を採取し、電気泳動(PFGE)の結果と抗生物質感受性をもとに、次の3群に分類した。

第1群: USA 300またはUSA 400だと確認された検体(244検体、63%)。PFGEを実施できなかった検体についてはベータラクタム系抗菌剤とエリスロマイシンのみに耐性を示したものを市中感染と判定した。
第2群: USA 300/USA 400以外(35検体、9%)。医療関連型に分類されるUSA 500、USA 100、USA 800と、ベータラクタム系抗菌剤とエリスロマイシン以外に1つ以上の抗生物質に耐性を示したもので、非市中感染と判定した。
第3群:メチシリン感受性S. aureus(MSSA)を示した献体(110検体、28%)。

 次に、電気泳動で同定されたMRSA検体175検体について分析したところ、市中感染型が159検体(91%)で、その99%(157検体)がUSA 300型だった。うち136検体(87%)はベータラムタム系抗菌剤とエリスロマイシンのみに耐性を示した。15検体(10%)はレボフロキサシン、4検体(3%)、はクリンダマイシン、1検体(1%)はリファンピシン、1検体はゲンタマイシンにも耐性だった。一方、非市中感染型を示した16検体中14検体(88%)は、ベータラクタム系とエリスロマイシン以外の抗生物質にも耐性を示した。

 感染者の特徴を調べたところ、多変量解析で市中感染MRSAとの関係が有意だったのは、黒人(有病比1.53)、女性(同1.16)、発症前12カ月間の入院(同0.80)だった。

 患者から分離された黄色ブドウ球菌株に対する有効性がin vitroで認められなかった抗生物質が投与された患者の割合は、市中感染型MRSA群では65%、感受性菌(MSSA)では1%で、有意な差が見られた。

 本研究により、黄色ブドウ球菌による皮膚・軟部組織感染の市中発症は、主に、USA 300によるものであり、多くの医師がMRSA感染だと認識していないために、MRSAには効果がないことが明らかなベータラムタム系抗菌剤などを投与していることが明らかになった。

皮膚・軟部組織の感染が重症化している患者には、市中感染型MRSAに有効なバンコマイシンなどを当初から用いるべきで、さらに重症で入院した患者については、院内感染を予防するためにも、バンコマイシンを第1選択薬にすべきだ、と著者らはいう。さらに、増加する市中感染型MRSAの継続的監視と、他地域における感染規模の評価が必要だ、と述べている。

 本論文の原題は「Emergence of Community-Acquired Methicillin-Resistant Staphylococcus aureus USA 300 Clone as the Predominant Cause of Skin and Soft-Tissue Infections」。アブストラクトは、こちらで閲覧できる。(大西淳子、医学ジャーナリスト)


Information PR

ログインしていません

Close UpコンテンツPR

ログインしていません

もっと見る

人気記事ランキング

  1. インフルエンザ脳症を疑う3つのポイント インフルエンザ診療Next:トピックス FBシェア数:147
  2. レセプト査定される糖尿病処方、教えます 岩岡秀明の「糖尿病診療のここが知りたい!」 FBシェア数:199
  3. 結核病棟からの脱走劇 倉原優の「こちら呼吸器病棟」 FBシェア数:42
  4. 二次予防ならSGLT2阻害薬が第二選択薬に 特集◎生活習慣病 7つの新常識《7》 FBシェア数:79
  5. 記録が伸びないアスリートに多い内科的疾患 記者の眼 FBシェア数:55
  6. 杏林大病院、診療体制維持での働き方改革に挑戦 シリーズ◎医師の「働き方改革」 FBシェア数:29
  7. 今から区分マンション投資?それは自殺行為です Dr.Kの「医師のためのバリュー投資戦術」 FBシェア数:63
  8. あれ・それがどれ?で論文が台無しです! 英文校正者が教える医学論文執筆の極意 FBシェア数:16
  9. アレルギー性鼻炎に世界初の経皮吸収型製剤 最新DIピックアップ FBシェア数:132
  10. 日本一高いアイスクリームに医療費高騰の片鱗を見る Inside Outside FBシェア数:45
医師と医学研究者におすすめの英文校正