2006.03.28

高血圧や心不全による脳神経細胞の損失が認知障害を招く

 高血圧や心不全によって脳神経細胞が失われ、認知障害が引き起こされる可能性のあることが、自治医科大学循環器内科学COE教授の苅尾七臣氏や星出聡氏らの研究で明らかになった。日本循環器学会で「Cerebral Neuronal Loss and Cognitive Dysfunction in Relation to Hypertensive Diastolic Heart Failure」と題して発表された。

 高血圧や心不全は認知障害のリスク因子とされる。苅尾氏らは高血圧患者を対象とした研究で、虚血によるダメージを受けやすい脳深部白質の神経細胞の量を測定し、神経細胞の量が減ることで認知障害が起こる可能性を示した。この研究は自治医科大学が進める高血圧研究Jichi Medical School(JMS)ABPM Studyの一環。

 対象は高血圧外来患者54人、男性が6割を占め、平均年齢は70歳、左室駆出分画(LVEF)は平均で67%だった。年齢と性をマッチさせた非高血圧群20人を対照群とした。認知障害の程度をMini-Mental State Examination (MMSE)により調べたところ、MMSEが27未満で認知障害があると判断された人は、高血圧群では3割だったのに対し、非高血圧群では1割だった。

 次にプロトンMRスペクトロスコピーを使い、脳深部白質において脳神経細胞の量の指標としてN-アセチルアスパラギン酸(NAA)を測定した。その結果、NAAは高血圧群において、非高血圧群に比べて有意に低かった。さらに高血圧群を拡張期心不全の既往歴の有無で比較すると、既往がある半数の27人ではNAAが有意に低かった。重回帰分析でも、NAAは年齢と心不全の既往、MMSE と関連性が示された。

 このことから、研究グループは、「認知障害は脳神経細胞の損失と直接関係があり、この脳神経細胞の損失は年齢や高血圧、心不全が起因している」と結論づけていた。

 発表後の質疑応答において、苅尾氏は、「深部白質病変が見られる人では心不全を繰り返しやすい傾向がある。認知障害があって自己管理ができないことも考えられる」と語った。(八倉巻尚子、医療ライター)

Information PR

ログインしていません

Close UpコンテンツPR

ログインしていません

もっと見る

人気記事ランキング

  1. 76歳女性。動悸、ふらつき 日経メディクイズ●心電図 FBシェア数:0
  2. 「診療科の転科に伴うリスクやお勧めの立ち回り方は… 研修医のための人生ライフ向上塾! FBシェア数:21
  3. IT化し過ぎて伝達ミスが多発します… 診療所経営駆け込み寺 FBシェア数:34
  4. 「腹膜透析は使えない」は過去のもの 日本透析医学会理事長の中元秀友氏に聞く FBシェア数:13
  5. 私、モンスターペイシェント? 中山祐次郎の「切って縫うニュース」 FBシェア数:157
  6. 理想は「自分に甘く、他人にも甘い」人 「医療」ってなんだっけ FBシェア数:38
  7. 見えにくい静脈への穿刺を助ける新兵器 リポート【動画付き】◎血管可視化装置の使い勝手は? FBシェア数:95
  8. 汚部屋で眠るハルコさん ぐるぐる訪問看護 FBシェア数:76
  9. フレイル高齢者の処方、医師の8割が見直し 医師1000人に聞きました FBシェア数:25
  10. 熊本大、浜松医大の志願者が4割減少した理由 記者リポート FBシェア数:108
医師と医学研究者におすすめの英文校正