2006.03.24

テリスロマイシン投与後に生じた重症肝障害で3例中1人死亡、投与は慎重に

 テリスロマイシンは、ケトライド系抗生物質で、副鼻腔炎、気管支炎、市中肺炎などの急性細菌感染に適用されている。マクロライド系抗生剤のエリスロマイシンから半化学合成された薬剤で、多くのマクロライド耐性菌に有効と報告されている。このほど米国で、テリスロマイシン投与後に肝障害を起こした3症例についての詳細が報告された。肝機能に異常はなく健康だった3人は、テリスロマイシン以外の処方薬を使用していなかったため、この薬剤の肝毒性が強く疑われた。米Carolinas Medical CenterのKimberly D. Clay氏らの報告で、詳細はAnnals of Internal Medicine誌2006年3月21日号に掲載された。

 報告された3人の患者は、テリスロマイシンの投与開始から数日以内に急性肝炎を発症、全員が黄疸になった。肝機能検査の数値は著しく悪化したが、肝炎ウイルスなどは検出されなかった。1人は自然に回復したものの、1人には肝移植が行われ、他の1人は死亡した。

症例1:46歳男性、投与中止後2週で黄疸消失・回復
 副鼻腔などに炎症が起きたため、テリスロマイシン投与を受けた。2日目に倦怠感と暗色尿に気づき、3日目には黄疸が現れたため、受診。疲労感、軽度掻痒、一過性の発疹、食欲不振を訴えた。毒物暴露や薬剤の使用、飲酒などはなかった。

 体温は36.8度。バイタルサインは安定しており、肺にも異常なし。肝脾腫大も見られず、外面的には慢性肝疾患の兆候はなかった。しかし、ALT(GPT)、AST(GOT)、ALPなどのレベルが著しく上昇していた。HAV、HBV、HCV、伝染性単核症、HIVの感染はすべて陰性だった。

 テリスロマイシン投与を中止したところ、患者の気分は改善した。2週後GPT値が低下、黄疸消失。8週後、GPT値が正常になった。投与期間は3日間だった。

症例2:51歳女性、肝臓に広範な壊死、肝移植を実施
 咳と鼻水が2週間続いたため、かかりつけ医からテリスロマイシン5日分を処方された。それ以外にアスピリン(81mg/日)、マルチビタミン、ビタミンE(1000IU/日)を使用。これらは1年にわたって持続的に服用していた。

 黄疸が現れ、かかりつけ医を再度受診。その時点で、総ビリルビン、直接ビリルビン、ALP、AST、GPT、GGT(ガンマ-GPT、ガンマ-グルタミルトランスフェラーゼ)が上昇していたため、胃腸科に紹介された。 

 患者は、飲酒はするが非喫煙者。バイタルは安定していた。肝脾肥大見られず。肝炎ウイルスの感染は認められなかった。抗ミトコンドリア抗体も検出されず。超音波検査では、肝縮小と腹水あり。中等度の呼吸困難が生じ胸腔穿刺を実施したが胸水の培養結果は陰性だった。

 1カ月後、総ビリルビンがさらに上昇した。CTの結果は、肝縮小、静脈瘤、脾腫を示した。肝移植が検討され、待機患者リストに載った。患者は移植を受け、術後11日目に退院した。摘出された肝臓には広範な壊死が見られた。

症例3:26歳男性、吐血が続き入院、明らかな肝肥大で死亡
 入院2週間前、テリスロマイシン5日分を処方され、その後、黄疸、発熱、黒色便、吐血が8日間持続したため入院。飲酒はするが肝炎既往なし。長期にわたる非ステロイド性抗炎症剤の使用歴や入れ墨、静注薬物、生薬は使っていなかった。

 患者は深刻な状態で、腹部は硬く、明らかな肝肥大が認められた。白血球数の増加、血小板数減少があり、クレアチニン、ALT、AST、ALP、総ビリルビンなどは著しく上昇していた。CT像は中度の腹水貯留と腸壁肥厚を示した。上部内視鏡検査中に低血圧と心肺不全を起こし、蘇生措置が行われた。

 入院2日目には、昇圧剤と人工呼吸器が必要になった。重炭酸塩療法にもかかわらずアシドーシスが深刻で透析も無効。HAV、HBV、HCV、HIV、EB感染は陰性。3日目には治療の甲斐なく状態は悪化し、患者は死亡した。剖検では肝肥大と肝細胞の広範な壊死が見られた。

 3例とも急性肝炎を発症、うち2人は飲酒者だったが、アルコールによる肝障害の既往や肝毒性が懸念される他剤の使用もなかった。症例1の男性がテリスロマイシン投与中止によって回復していることから、この薬剤の関与が強く疑われた。

 FDAの副作用報告システムには、テリスロマイシンによる肝障害が10例(2人が死亡)報告されていた。8例は他剤を併用しており、テリスロマイシンのみ使用していた発症者は2人だった。これらの2人は回復している。

 他剤との併用はさらに肝障害リスクを高める。たとえば、シンパスタチンとテリスロマイシンを併用すると、シンパスタチンの血中レベルが上昇し肝炎が生じやすくなる。ケトコナゾールまたはイトラコナゾールと併用すると、逆にテリスロマイシン・レベルが上昇する可能性がある。その他、ミダゾラム、ジゴキシン、リファンピシン、シサプリドなどとの相互作用も報告されている。

 著者たちは、「テリスロマイシンは重症の肝障害を引きおこす可能性があり、市販後調査データがさらに集まるまで、この薬剤の処方は慎重に行うべきだ」と述べている。

 本論文の原題は「Brief Communication: Severe Hepatotoxicity of Telithromycin: Three Case Reports and Literature Review」。アブストラクトはこちらで閲覧できる。(大西淳子、医学ジャーナリスト)

Information PR

ログインしていません

Close UpコンテンツPR

ログインしていません

もっと見る

人気記事ランキング

  1. 難治性皮膚潰瘍を再生医療で治す リポート◎大リーガー田中将大投手のケガも治したPRP療法とは? FBシェア数:11
  2. トイレにこそ、人間の尊厳がある Dr.西&Dr.宮森の「高齢者診療はエビデンスだけじゃいかんのです」 FBシェア数:470
  3. 輸液の入門書 医学書ソムリエ FBシェア数:0
  4. わいせつ容疑の外科医、初公判で無罪を主張 「乳腺科医のプライドにかけて無罪を主張します」 FBシェア数:568
  5. 医療者は認知症家族との暮らしが分からない 患者と医師の認識ギャップ考 FBシェア数:127
  6. 野菜食べてる? 村川裕二の「ほろよいの循環器病学」 FBシェア数:83
  7. 難治性慢性咳嗽にボツリヌスが効く!? Dr.倉原の呼吸器論文あれこれ FBシェア数:52
  8. 広がる安易な帝王切開、母体死亡率高まる危険性 国境なき医師団が見た世界の医療現場 FBシェア数:27
  9. 金属に対する生体吸収ステントの優位性示せず Lancet誌から FBシェア数:94
  10. 下血? 血便? 赤いの? 赤くないの? 薬師寺泰匡の「だから救急はおもしろいんよ」 FBシェア数:132