2006.03.22

お金の悩み対処法 制度フル活用で乗り切ろう

 がんの治療費については、一度に数十万円を支払わなければならないことがあります。参考までに、当院で胃がん、乳がん、大腸がん、肺がん、子宮がんの手術を受けた場合の入院日数と総医療費の概算額の例を表にまとめてみました。

 例えば、胃がんで部分切除を受けると20日間の入院で110万円、3割負担の人であれば33万円くらいの自己負担額が必要になります。乳がんの部分切除であれば、12日間の入院で約73万円、3割負担の人で22万円弱の負担になるということです。また、このほかに、食事代1日780円と、差額室料のかかる部屋に入院した人はその費用などが加算されます。

 ただ、表の中の金額は、あくまで一例と考えてください。同じがんでも治療方法、入院日数、検査や薬の種類で治療費は異なります。同じ胃がんでも、内視鏡治療であれば入院期間はもっと短く自己負担額も少ないでしょうし、手術の前か後に抗がん剤治療が必要であればもっと費用はかさむでしょう。

 がんの患者さんのなかには、手術の前や後に抗がん剤治療や放射線治療を受け、1年間の治療費の自己負担が100万円を超える人もいます。抗がん剤治療を何回か受ける必要があり、さらに治療費がかさむ人もいるかもしれません。どのくらいの費用がかかるのか心配な方は、主治医の先生に、「私がこの治療を受けた場合、治療費はどのくらいかかりますか」と、事前に聞いてみるとよいのではないでしょうか。

 もしかしたら、医療費がかさみ、ため息をつかれている方もいるかもしれません。しかし、皆さんの加入している健康保険などには医療費の負担が軽減される制度がいろいろありますから慌てないでください。

 まず、活用していただきたいのは、支払った医療費が高額だった場合に、その一部が加入している健康保険から約3カ月後に払い戻しされる「高額療養費制度」です。例えば、70歳未満の一般所得の人で、1カ月にかかった医療費の総額が100万円だった場合、30万円の自己負担額のうち約22万円が戻ってきます。つまり、最終的な自己負担額は約8万円ということです。

 なお、長期入院したり、入退院を繰り返したりするなど、1年間に4カ月以上、この高額療養費の対象になった場合には、4カ月目からは自己負担限度額が70歳未満一般所得の人で4万200円になります。その場合には、30万円自己負担があったとしたら、約26万円が払い戻されるということです。

 政府管掌健康保険や国民健康保険など、高額療養費については、申請しないと払い戻しをしてもらえない健康保険組合もあります。自分の加入している保険組合に確認し、申請が必要であれば忘れずに払い戻しを受けるようにしましょう。会社員や公務員の人のなかには、加入している健康保険が本人や家族の療養費をさらに補助する付加制度を独自に持っていて、自己負担額が3万円程度で済むところもあります。自治体によっては独自の医療費補助制度があるところもありますので、加入している健康保険組合や自治体の独自制度も確認してみるとよいでしょう。

 また、70歳以上の一般所得(自己負担1割)の人なら、窓口での医療費の負担額が最高4万200円ですから、総医療費がたとえ100万円かかっても、病院の窓口で支払う金額は4万200円プラス食事代や差額室料だけです。

 健康保険組合によっては、高額療養費の貸付制度があるところもあります。病院の窓口で数十万円の治療費を請求されて支払いが困難だという方は、健康保険組合に確認してみてはいかがでしょうか。民間医療保険や簡易保険などに入っている人は、給付金の申請を忘れないようにしてください。

 さらに、高額療養費で払い戻しされた金額や民間保険から受け取った給付金を除いても、生計を共にしていたり扶養している家族全員の1年間の医療費自己負担額が10万円を上回った場合には、確定申告をすれば税金の医療費控除を受けることもできます。交通費や、治療のために必要であった個室のための差額室料なども医療費として加算できますので、計算してみて10万円を超えるようでしたら最寄りの税務署に申請方法を聞いてみましょう。単純にその分が返ってくるわけではありませんが、所得税と次の年の住民税がかなり軽減されることもあります。

 治療の際、かかるのは医療費ばかりではありません。例えば、1人暮らしの人が退院後に家事援助サービスを受ける必要があるかもしれませんし、乳幼児を抱える母親ががんの治療で入院した場合などには、ベビーシッター料などが大きな負担になることがあります。最近では、市区町村が幼い子どもを抱える親を支えるために家庭支援サービスを行っていたり、社会福祉協議会や生活協同組合などで比較的安価に子どもの世話や家事を頼めるサービスがあるところもあります。

 在宅介護が必要になったときには、65歳以上の人なら介護保険を活用するとよいでしょう。がんの治療後に人工肛門になった方や手足などが不自由になった方は、身体障害者認定を受ければ、医療費の減免などが受けられることもありますから、そういった制度を利用するようにしましょう。

 一方で、抗がん剤治療などで、高額療養費制度を利用しても毎月治療費用がかさみ、生活費にも困る方もいらっしゃると思います。どうしても困ったときには、闘病中、一時的にでも生活保護を利用する手もあります。なかには、様々な制度を知らずに、治療費が払えないからと消費者金融に借金をしてしまい、大変な負債を抱える方もいらっしゃいます。借金を抱える前に、自治体の相談窓口や病院の相談室のソーシャルワーカーに相談し、解決策を見いだしていただければと思います。

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