2006.03.07

COPD患者は十分な終末期ケアを受けていない可能性、米研究で指摘

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、米国では死因の第4位になっている。終末期の痛みや苦痛、不安などはがん患者に匹敵するとされていながら、肺がん患者と比較した場合、鎮痛剤などが十分に投与されていないことがわかった。一方、COPD患者は外来受診回数、ICU入院頻度が高いため、医療費は約4000ドル余分にかかっていた。死亡までの6カ月間に、COPDと肺がんの患者に行われた治療を比較する後ろ向きコホート研究の成果で、米Washington大学のDavid H. Au氏らが、Archives of Internal Medicine誌2006年2月13日号に報告した。

 これまでに行われた研究から、手術不能の肺がんの患者と比べると、COPD患者の健康関連QOLは低く、鬱や不安が強く、緩和ケアの適用が少ないことが判明している。著者らは、その原因が、症状やQOLのレベルではなく、病気の一般的な性質(悪性か良性かなど)に基づいて、医師たちが緩和治療を行うかどうかを決めている点にあるのではないかと考え、これら患者に行われる治療をさらに比較した。

 Au氏らは、退役軍人医療センター(VAMC)7カ所のいずれかの外来で治療を受け、1997年4月から2001年9月までに死亡した1949人のCOPDまたは肺がんの患者。このうち1490人はCOPD、349人は肺がん、110人は両方と診断されていた。併発者は肺がん単独の患者と同等の治療を受けていたため、肺がん患者群に加えて分析した。

 まず、外来で処方された薬剤を比較したところ、選択的セロトニン再吸収阻害剤(SSRIs)には差がなかったが、麻薬系鎮痛剤と抗不安薬のベンゾジアゼピンの処方を受けた患者はCOPD群で有意に少なかった。

 がん患者よりCOPD患者の方が、外来受診頻度が高かった(6カ月間の平均は1.87回と2.36回、p<0.001)。しかし、入院した患者の割合は少なかった(68.6%と61.3%、p=0.004)。入院の原因は、がん患者の場合、55.3%が肺がんだったが、COPD患者群では、COPDによる入院は17.0%と少なく、感染が17.4%、心血管疾患が16.2%、がんが13.5%など、多様な病気が入院を引きおこしていた。

 COPD患者は集中治療部門(ICU)に入院する頻度は高く、肺がん患者の2倍弱(18.3%と32.6%、p<0.001)で、ICUへの再入院の頻度は約2倍、2週間以上の入院の頻度は約5倍で、これらの値は、年齢、合併症、自宅から医療センターまでの距離で調整後も有意だった。院内死亡は、肺がん患者47.6%、COPD患者52.8%で有意差はなかった。

 1人あたりの6カ月間の医療費の総額は、COPD患者の方が約4000ドル高かった。これはICU使用に起因する差と考えられた。ICUに入院した場合の費用は、COPD群の方が約5万ドル高かった。

 COPD患者の痛み、鬱、呼吸困難、不安のレベルは、がん患者と同等という報告もあり、麻薬系鎮痛剤やベンゾジアゼピンの投与が推奨されている。にもかかわらず投与量は少ないことが今回明らかになった。著者たちは、治療現場で、COPDもまた、末期的な状態だという認識が浅く、患者の望む治療が行われていない可能性があると考えている。また、肺がん患者とは異なり、患者自身も、自分の病気が死に向かうものであることを十分に認識していない可能性があり、患者に対する教育も必要だろう、と述べている。

 終末期には、COPDという病気について十分に理解した上で、医療従事者と患者、家族が話し合い、余命延長のための治療と緩和治療のバランスを決定する必要があるのではないだろうか。

 本論文の原題は「Differences in Health Care Utilization at the End of Life Among Patients With Chronic Obstructive Pulmonary Disease and Patients With Lung Cancer」、概要はこちらで閲覧できる。(大西淳子、医学ジャーナリスト)


■ 関連トピックス ■
◆2004.6.1 欧米二大学会がCOPDの指針改訂、米国胸部学会のホームページ上で公開

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