2006.03.06

2%クロルヘキシジンによる清拭でICUでのVRE感染頻度が6割減、米国の研究

 院内感染を防ぐためには、感染源の管理強化がカギになる。1日1回の患者の清拭に、固形石けんではなく、2%グルコン酸クロルヘキシジンを含ませた布を用いると、医療従事者の手や環境表面のバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)汚染が有意に減少、患者への感染頻度が6割減ることが明らかになった。米Stroger Cook County病院のMichael O. Vernon氏らが、米医師会雑誌のArchives of Internal Medicine誌2006年2月13日号に報告したもの。

 Vernon氏らは、米Rush大学医療センターの21床の集中治療部門で、2002年10月から2003年12月まで、前向き研究を実施した。ここでは、清拭は固形石けん、洗面器の温湯とテリークロスを用いる方法で行われていた。

 本研究でVREを院内感染のマーカーにしたのは、病院、特にICUで感染を引き起こす細菌であり、患者の皮膚にコロニーを形成し、環境表面と医療従事者の手の汚染を通じて感染が拡大することが明らかになっているためだ。

 研究期間中は、患者全員に毎朝、以下の方法で清拭を実施した。
 期間1(約4カ月間):従来の方法で、より清潔なところから汚れた部分へと清拭。
 期間2(約6カ月間):2%クロルヘキシジンを染みこませた使い捨て布6枚で体の各部分を清拭。顔と首にはクロルヘキシジン非含有布を用いた。いずれも電子レンジで温めてから使用。 
 期間3(約5カ月間):すべてクロルヘキシジン非含有使い捨て布を用いて期間2と同様に清拭。

 感染検査の対象としたのは、ICUに3日以上滞在すると予想された患者。ICUに移った時点で直腸スワブを実施、VRE陰性だった患者については1〜2日ごとに標本を採取し、検査を継続した。VRE陽性だった患者については、いずれかの清拭法が少なくとも3日間適用された後で、朝の清拭前と清拭8時間後に3回、鼠径部と前腕前部の皮膚スワブを採取した。ICUでのVRE感染の成立は、直腸スワブの培養で陰性とされた患者が、ICU入院から3日後以降に直腸スワブ培養で陽性となった場合とした。

 環境表面としては、ベッド柵、シーツ、ベッド・テーブルと、患者と接触後の医療従事者の手から標本を採取した。

 石けん期間のICU入院患者は483人、クロルヘキシジン布期間の入院患者は642人、クロルヘキシジン非含有布期間は662人だった。皮膚のコロニー形成を調べるネステッド研究の対象となったのは、直腸スワブ検査が陽性だった86人。このうち、石けん群34人、クロルヘキシジン含有群34人、クロルヘキシジン非含有布群18人だった。

 鼠径部の皮膚由来標本の培養で1度以上陽性になった患者は、石けん群の32人(94%)に比べ、クロルヘキシジン布群16人(47%)と有意に少なかった(p<0.001)。また、石けん群に比べ、クロルヘキシジン布群のVREコロニー数は、2.5(log10値)有意に少なかった。

 前腕前部由来の標本では、平均のVREコロニー数は、石けん群が0.3 (log10)、クロルヘキシジン布群0.05( log10)、クロルヘキシジン非含有布群0.4( log10)で、石けん群に対し、クロルヘキシジン布群は有意に少なかった(p<0.05)。

 VRE感染者と接触後の医療従事者の手から採取された標本のVRE汚染の頻度は、石けん期間56%、クロルヘキシジン布期間37%、クロルヘキシジン非含有布期間56%。クロルヘキシジン布期間の汚染頻度は、手袋あり(p=0.004)、手袋なし(p=0.04)の両方で有意に低かった。石けん期間に比べたクロルヘキシジン布期間群の手の汚染のリスク比は0.6(95%信頼区間0.4-0.8)だった。

 環境表面の汚染の頻度も同様で、クロルヘキシジン布期間が有意に低かった。石けん期間と比べた場合のP値は0.001未満で、リスク比は0.3(0.2-0.5)だった。

 1000患者日あたりのVRE感染者数は、石けん期間26人、クロルヘキシジン布期間9人(p=0.01)。石けん群に比べたクロルヘキシジン布群のリスク比は0.4(0.1-0.9)となった。なお、クロルヘキシジン非含有布の効果は、すべての評価において石けんと同等だった。

 いずれの方法の清拭でも、89%の患者の皮膚に変化は見られなかった。皮膚の状態が悪化した患者の割合は、石けん群18%、クロルヘキシジン布群3%(p=0.02)だった。

 得られた結果は、2%クロルヘキシジン含有布による清拭は、シンプル、安価で、有効な戦略であることを示した。米国では、血管カテーテル関連感染の予防にも2%クロルヘキシジンの適用が推奨されている(CDC「血管カテーテル関連感染の予防のためのガイドライン」)。

 本論文の原題は「Chlorhexidine Gluconate to Cleanse Patients in a Medical Intensive Care Unit」。アブストラクトはArchives of Internal Medicine誌Webサイトのこちらで閲覧できる。(大西淳子、医学ジャーナリスト)


■ 関連トピックス ■
◆2003.12.5 厚労省、グルコン酸クロルヘキシジン含む洗口剤など、ショック症例発生で対策を指示
◆2002.6.5 カテーテル挿入部の消毒、ポビドンヨードよりクロルヘキシジンが有用


Information PR

ログインしていません

Close UpコンテンツPR

ログインしていません

もっと見る

人気記事ランキング

  1. 誤嚥性肺炎って何科の疾患? 薬師寺泰匡の「だから救急はおもしろいんよ」 FBシェア数:128
  2. 62歳男性。口唇のしびれと呼吸困難 日経メディクイズ●神経内科 FBシェア数:0
  3. 62歳女性。下肢に多発する、浸潤を触れる紫斑 日経メディクイズ●皮膚 FBシェア数:0
  4. 意外と難しい運動誘発性喘息の診断 あなたの知らないスポーツ内科の世界 FBシェア数:35
  5. 卵アレルギーは「微量のゆで卵」で防ぐ リポート◎学会が提言、アトピー乳児は早期から卵摂取を FBシェア数:136
  6. 若年男性に生じた発熱と多関節痛、何を疑う? カンファで学ぶ臨床推論 FBシェア数:1
  7. 外国人診療で増えつつある「母国の親戚」問題 小林米幸の外国人医療奮闘記 FBシェア数:27
  8. 鳥インフルエンザ(H7N9)のヒト化が進む 特集◎いつもと違う! 今冬のインフルエンザ《4》 FBシェア数:6
  9. カフェイン中毒――侮ってはいけない市販薬 EM Allianceの「知っ得、納得! ER Tips」 FBシェア数:1
  10. インフル迅速検査、全例には必要ありません! 特集◎いつもと違う!今冬のインフルエンザ《2》 FBシェア数:466