2006.03.03

山口大、遺伝子型でイリノテカンの投与量を変えるフェーズ1試験を実施

 山口大学消化器・腫瘍外科講師の硲彰一氏(写真)らの研究グループはイリノテカンの代謝酵素であるUGT1A1の遺伝子の型別にイリノテカンと5'-DFURの併用投与を行ったフェーズ1試験で、変異型ではイリノテカンが少ない投与用量で十分な臨床効果が得られたことを明らかにした。

 イリノテカンは、米Pfizer社がヤクルト・第一製薬から導入し、米国内で販売「CAMPTOSAR」の商品名で販売しているが、2004年11月3日に米食品医薬品局臨床薬理学サブ委員会の添付文書改訂の推薦を受け、2005年6月7日に遺伝子型による副作用の可能性とその型の患者には投与量を減らすことを考えるべきことなどが実際に添付文書に盛り込まれている。

 イリノテカンは体内で、脱炭酸酵素によって細胞を障害する物質(SN-38)に転換され、抗がん効果を発揮するが、SN-38は細胞障害性が強く、そのままでは正常細胞にも作用し、副作用の原因ともなる。実際には、患者の体内でUGT1A1によってグルクロン酸が付加され、細胞毒性が50分の1から100分の1まで減少し、解毒される。ところがプロモーター領域のTAの繰り返し配列が7回あると、UGT1A1の発現が減弱しイリノテカンの解毒が進まず副作用を引き起こしてしまう。

 硲氏らの研究成果はわが国でも遺伝子型別に患者へのイリノテカン投与量を変える必要性を示したといえる。成果は3月3日に福岡市で開催された第39回制癌剤適応研究会の「主題:21世紀の抗癌剤治療−臨床からの提案−」で発表された。

 硲氏らは切除不能・再発大腸がん患者を対象に直接配列決定法でTAのリピート数を調べ、正常型(6回繰り返し)と変異型(7回繰り返しの遺伝子をヘテロでもつ。ヘテロ型は4人に1人いるとされる)に分け、イリノテカンを投与した。イリノテカンはレベル1(70mg/m2)、レベル2(100mg/m2)、レベル3(120mg/m2)レベル4(150mg/m2)に分けて増量して2週間ごとにそれぞれ3例から6例に投与した。5'−DFURは576mg/m2を10投4休で投与した。用量制限毒性(DLT)はグレード3以上の血液学的・非血液学的毒性とし、DLTが6例中3例以上となったレベルを最大耐用量とし、その前のレベルを推奨投与量とした。

 その結果、正常型群はレベル4まで増量可能で、レベル4が推奨投与量となったが、変異型群はレベル2が最大耐用量となり、レベル1が推奨投与量となった。変異型群ではレベル1で評価可能症例4例中2例でPRが得られ、十分な臨床効果を得ることができた。

 現在、得られた推奨投与量をもとにしたフェーズ2臨床試験を行っている。
 硲氏はまた簡単な遺伝子型の判別法として血中ビリルビン値をあげ、ビリルビン値が0.5以下であれば正常型と考えられることを示した。(横山勇生)

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