2006.03.02

仕事上のストレスでメタボリックシンドロームの発症リスクは倍増する、英国の研究

 慢性的にストレスを感じている人々はメタボリックシンドロームを発症するリスクが2倍以上になるという研究成果が報告された。ロンドン大学のTarani Chandola氏らが、ロンドンの公務員を14年間追跡、職務ストレスのレベルとメタボリックシンドローム発症の関係を調べる前向きコホート研究を行ったところ、ストレスが強いほどメタボリックシンドロームの発症リスクが高いという量-反応関係が明らかになった。詳細は、British Medical Journal誌電子版に2006年2月14日に発表された。

 心血管疾患や2型糖尿病のリスクを高める危険因子が重積した状態をメタボリックシンドローム(MS)と呼ぶ。MSは、腹部肥満、アテローム性脂質代謝異常、高血圧、インスリン抵抗性、易血栓性および炎症誘発性の状態などを特徴とする。

 職務ストレスとMSの関係を調べた研究はこれまでにもあるが、ストレス暴露期間に関する情報の入手に問題があった。著者らは、ストレスを繰り返し評価することにより、持続するストレスが健康に及ぼす影響の評価を試みた。

 35〜55歳の男女1万308人。ベースラインでロンドンの公務員だった人々を平均14年追跡した。1985〜1988年に登録し、質問票を用いたストレスレベル調査を1989年、1989年、1991〜1993年(この回は診察も実施)、1997〜1999年(診察も実施)の計4回、郵送で実施した。

 「職務ストレスあり」は、仕事上の要求が多く(集団の中央値より上)、仕事上、決定の自由が少ない(集団の中央値より下)うえに、社会的に孤立している(同僚や上司からの支援のレベルで集団を3段階に分けた場合に、最も支援が少ないグループに属する)人々とした。4回の調査で3回以上「ストレスあり」と判断されたケースを慢性的職務ストレス群とした。

 ベースラインの職場での地位を基に社会経済的状況を評価。健康に影響する生活習慣として、喫煙、野菜・果物の摂取、飲酒、運動のレベルを尋ねた。National Cholesterol Education Programの定義に基づいて、危険因子を3つ以上保有する場合をMSと診断した。男女とも、ベースラインの地位が低いとMSリスクは高かった(傾向のP値は男性0.01、女性は<0.01)。健康を脅かす生活習慣とMSの間には、強力な関係が見られた。野菜と果物の摂取がない人、飲酒量が多い人、喫煙者、運動が少ない人のMSリスクは高かった(いずれも傾向のP値は0.01または<0.01)。

 慢性的職務ストレスとMSの間には有意な用量-反応関係が見られた(傾向のP値は男性<0.05、女性<0.01)。ストレスがない人々と比べた場合、慢性的ストレスのある男性(82人)のMSのオッズ比は1.91(95%信頼区間1.01-3.61)。女性では、慢性的なストレスがある人が18人と少なかったが、オッズ比は5.26(1.79-15.44)になった。

 慢性的ストレス群の男女について多変量解析を実施したところ、年齢、地位のみで調整した場合の慢性的ストレス群のMS発症リスクのオッズ比は2.25(1.31-3.85)、生活習慣を調整に加えると2.39(1.36-4.21)、ベースラインで肥満者を除いても、オッズ比は2.29(1.27-4.12)で有意に発症リスクが高かった。

 得られた結果から、職務ストレスがメタボリックシンドロームの重要かつ独立した危険因子であることが判明した。著者らは、持続するストレスは、自律神経系と神経内分泌機能に直接影響し、MSを引きおこす可能性があると考えている。

 本論文の原題は「Chronic stress at work and the metabolic syndrome: prospective study」。アブストラクトはBMJ誌Webサイトのこちらで閲覧できる。(大西淳子、医学ジャーナリスト)


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