2006.03.02

妊娠で抗うつ剤を中止するとうつ病再発リスクは5倍になる

 妊娠した場合に、抗うつ剤投与を継続するか中止するかの判断は難しい。最近、選択的セロトニン再吸収阻害剤(SSRI)が胎児に影響を与えるとする報告が相次いでいるためだ。しかし、うつ病の女性が妊娠をきっかけに抗うつ剤の使用を中止すると、治療を継続していた女性に比べ、妊娠期間中の再発リスクが5倍に跳ね上がることが明らかになった。米Harvard大学医学部のLee S. Cohen氏らの研究成果で、詳細はJournal of American Medical Association(JAMA)誌2006年2月1日号に報告された。

 胎児への影響を心配して抗うつ剤の服用を中止したいと望む女性は多かったが、治療を中止した場合の大うつ病再発リスクは明らかではなかった。著者らは、妊娠発覚後すぐに抗うつ剤の服用を中止した女性と、治療を継続していた女性の再発リスクを分析した。

 1999年3月から2003年4月まで、3医療機関で201人の妊婦を登録した。対象は、妊娠前に大うつ病の既往があり、妊娠16週未満で、最後の月経期間の3カ月以上前からうつ病が寛解期にあり、現在抗うつ剤を使用、または、最近まで抗うつ剤の投与を受けていた患者。平均年齢34.1歳。うつ病歴の平均は15.4年。92%がベースラインでSSRIまたはセロトニン・ノルアドレナリン再吸収阻害剤(SNRI)を使用していた。SSRI使用者は163人。三環系抗うつ剤のみの使用者は4%。抗うつ剤の用量については、201人中、増量が20人、減量が34人、不変が65人、82人が妊娠を期に使用を中止していた。

 被験者201人中86人(43%)が妊娠中にうつ病を再発した。半数が妊娠初期の3カ月間に再発していた。妊娠中も抗うつ剤を継続使用していた82人中再発は21人(25.6%)。使用中止群65人では再発は44人(67.7%)。用量を増やしたグループでは9人(45.0%)、減らしたグループでは12人(35.3%)が再発。使用を中止または用量を減らしていた女性の61%は、妊娠中に通常用量の抗うつ剤の使用を再開した。

 Cox回帰分析を実施。既婚か未婚か、使用していた薬剤の種類、過去のうつ病エピソードなどで調整したハザード比を求めたところ、使用継続群に比べ使用中止群のハザード比は5.0(p<0.001)。出産まで追跡できた女性に限定するとハザード比は6.6(p<0.001)となった。

 再発の予測因子について調べたところ、33歳以上だとハザード比0.4(p=0.01)でリスクは減少、逆に、うつ病歴が5年超でハザード比2.7(p=0.009)、再発頻度が高い(エピソードが5回以上)女性のハザード比は3.6(p<0.001)で、妊娠中の再発と有意に関係していた。

 妊娠は大うつ病の再発リスクを高める。抗うつ剤の使用により寛解となっている女性は、薬剤の使用中止により妊娠中に再発する危険性があることに留意しなければならない。再発が妊婦と胎児の健康に及ぼす影響と、抗うつ剤自体の胎児に対する影響を天秤にかけることは非常に難しい。うつ病患者は少なくないだけに、妊娠を望む患者と医師の間で、患者の希望と、それに伴うリスクと利益について十分に話し合い、治療方針を決定する必要がある。

 著者らは、催奇性に対する懸念について、妊娠初期の3カ月間に再発する女性は半数だったことから、この期間は注意深い観察を行いつつ、抗うつ剤の使用を中断するという選択も有効ではないかと述べている。

 本論文の原題は「Relapse of Major Depression During Pregnancy in Women Who Maintain or Discontinue Antidepressant Treatment」。アブストラクトはJAMA誌Webサイトのこちらで閲覧できる。(大西淳子、医学ジャーナリスト)


■ 関連トピックス ■
2005.10.3 パロキセチンの妊娠初期服用は、他の抗うつ薬に比べ先天性奇形リスクが約2倍に


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