2006.02.27

HIV感染者の抗ウイルス療法で頸動脈アテローム性動脈硬化リスクが8倍超に

 併用抗レトロウイルス療法は、HIV感染者の死亡率を劇的に減らしたが、心筋梗塞と脳卒中の強力な予測因子となる無症候頸動脈アテローム性動脈硬化リスクが8.65倍にものぼることが新たに判明した。

 併用抗レトロウイルス療法(CART: combination antiretroviral therapy、従来のHAART)では、治療期間が長びくにつれて、脂質代謝異常、体脂肪の再分布と蓄積、インスリン抵抗性、アテローム性動脈硬化などの副作用に対する懸念が高まることが分かっている。これらの副作用は、HIV感染者の心血管疾患リスクを増大させる可能性がある。これまで、CARTが直接HIV感染者のアテローム性動脈硬化に関与するかどうかは明らかではなかった。スペインBarcelona自治大学のCarlos Jeric氏らは、冠疾患リスクが異なるHIV感染者を対象に、無症候頸動脈アテローム性動脈硬化とCARTの関係を調べた。得られた結果は、CARTによりSCAリスクが8.65倍になることを示した。詳細は、Stroke誌電子版に2006年1月26日に報告された。

 研究の対象としたのは、20歳以上のHIV感染者で、心血管疾患の危険因子が1つ以下の68人と、危険因子を2つ以上持つ64人の計132人。頸動脈壁の内膜-中膜の厚さ(IMT)を高解像度のBモード超音波測定器を用いて測定、0.8mmより大、またはプラークが検出された症例をSCAと判定した。

 このうち、CARTを受けていたのは70.5%、抗ウイルス剤使用歴なしが29.5%だった。後者の方が平均年齢は低く(37.4歳対45.6歳、p<0.0001)、総コレステロール値も低かった(170.2mg/dL対238.3mg/dL、p<0.0001)。性別、喫煙、収縮期圧、HDLコレステロール、BMIには差はなかった。

 感染者を心血管リスクで層別化。米国高脂血症治療ガイドライン(ATPIII)に基づいて、64人をリスクが非常に低いA群(冠動脈10年リスクが5%未満)、34人を低リスクのB群(同5-9%)、34人を中-高リスクのC群(同10%以上)に分類した。非CART群の人数はそれぞれ、A群32人、B群6人、C群1人だった。IMTの中央値は、A群0.54mm、0.59mm、0.65mm。A群の26.6%、B群の35.3%、C群の76.5%に無症候頸動脈アテローム性動脈硬化が見られた。

 無症候頸動脈アテローム性動脈硬化と判定された群とそうでなかった群を比較したところ、有意差が認められたのは、年齢、CD4細胞数最低値、HIV感染期間、冠動脈10年リスク、CART暴露などだった。

 多変量ロジスティック回帰解析を実施し、無症候頸動脈アテローム性動脈硬化に関係する因子を探したところ、CART暴露(オッズ比10.5)と冠動脈10年間リスク10%以上(オッズ比4.2)が独立な因子だった。また、冠動脈10年リスクが非常に低い(5%未満)群については、年齢が10歳上昇(オッズ比4.01)、縮小期圧1mmHg上昇(同1.07)、CART暴露(同8.65)が独立した予測因子であることが示された。

 これらの結果から、CARTが単独で無症候頸動脈アテローム性動脈硬化のリスクを高めることが明らかになった。現在のところ、CARTの利益が副作用に優ることは明白だが、治療が長期にわたり、その間に感染者が歳をとっていくことを考えると、心血管毒性がより低い抗ウイルス治療の使用が望ましい、と著者たちは述べている。

 本論文の原題は「Subclinical Carotid Atherosclerosis in HIV-Infected Patients. Role of Combination Antiretroviral Therapy」。アブストラクトはStroke誌Webサイトのこちらで閲覧できる。(大西淳子、医学ジャーナリスト)

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