2006.02.23

低脂肪+野菜豊富な食生活は心血管疾患、乳がん、大腸がんリスクを下げない、米国の大規模介入試験で判明

 低脂肪の健康食は、心血管疾患、乳がん、大腸がんリスクを下げるか。5万人弱の閉経女性を対象に、対照群を置き、平均8年間にわたって追跡した米国の大規模介入試験の結果は、いずれの疾患についても否定的なものになった。疾患ごとにまとめられた3本の論文は、Journal of American Medical Association(JAMA)誌2006年2月8日号に掲載された。

 米国の研究者たちは、総摂取カロリーに占める脂肪の割合(脂肪熱量比率)を20%にし、野菜や果物、穀類を豊富に摂取するよう指導した介入群と、食事指導を行わない対照群を平均8.1年追跡した。被験者は50〜79歳の閉経女性4万8835人(平均年齢62.3歳)。背景や人種には様々だった。1993〜1998年に米国内40医療機関で登録。全体の40%にあたる1万9541人を介入群、60%にあたる2万9294人を対照群とした。

 介入群には強力な生活改善指導を行い、脂肪熱量比率を20%、飽和脂肪を7%に減らし、野菜/果物を1日5皿、穀類を1日6皿摂取するように指示した。総熱量と体重を減らすことは要求しなかった。対照群には、食事に関連した教育用の資料を与えただけで、指導は一切行わなかった。

 米MedStar Research InstituteのBarbara V. Howard氏らは、致死的、非致死的冠動脈疾患(CHD)、致死的、非致死的脳卒中、CHDと脳卒中を合わせたCVDの発症率と低脂肪食の関係を調べた。

 結果は、平均8.1年の追跡で、食事介入はCHD、脳卒中、CVDのリスクを有意に減らせなかった。CVD危険因子に対する影響も小さかった。有意な結果が得られなかった理由について、著者らは、LDLコレステロール値の減少幅が少なかったためではないかと考えている。これまでに有意が示された研究では、脂肪摂取量、特に飽和脂肪の摂取量の介入による減少が今回より大きかった。

 追跡期間中のCHD、脳卒中、CVDの発症者数は、介入群でそれぞれ1000人(1年あたりの発症率は0.63%、以下同)、434人(0.28%)、1357人(0.86%)。対照群で1549人(0.65%)、642人(0.27%)、2088人(0.88%)だった。ハザード比は、CHD 0.97(95%信頼区間0.90-1.06)、脳卒中1.02(0.90-1.15)、CVD 0.98(0.92-1.05)で、いずれも有意にならなかった。ベースラインでCVDがあった女性(3.4%)の場合には、CVDのハザード比は1.26(1.03-1.54)で有意だった。

 飽和脂肪またはトランス脂肪の摂取量が最も少ないグループに属する人、野菜や果物をより多く摂取する人では、CHDリスクに減少傾向が見られた。脂肪熱量比率が6.1%未満のハザード比は0.81(0.69-0.96)、トランス脂肪の比率が1.1%未満では同 0.88 (0.69-0.95)、野菜や果物を6.5皿/日以上摂取している場合は、同 0.88(0.76-1.03)だった。

 全米健康栄養調査(NHANES)のデータによると、女性の総摂取熱量に占める脂質の割合は、1977年は40.5%、1987年には35.9%、2000年には33%に減少している。また、飽和脂肪摂取量の平均は、1970年代には18-20%だったが、今は11%程度にまで減少している。従って、1970年代に行われた研究に比べ、食事介入で脂肪摂取量を大きく減らすことが難しくなっているといえる。こうした現状に基づき、著者らは、CVDの危険因子を改善し発症リスクを減らすためには、より焦点を定めた食事介入とライフスタイル介入が必要と考えている。

 同じ女性たちを対象として、低脂肪食が浸潤性大腸がんの1次予防に有効かどうかを評価した米Washington大学のShirley A. A. Beresford氏らの研究では、8.1年の追跡期間中に大腸がんを発症した女性は480人。介入群201人(発症率は年間0.13%)、対照群は279人(同0.12%)で、ハザード比は1.08(0.90-1.29)となり、リスク減少を示せなかった。

 さらに、乳がんと低脂肪食の関係を調べた米Fred HutchinsonがんセンターのRoss L. Prentice氏らの研究では、8.1年の追跡の間に浸潤性の乳がんを発症したのは、介入群655人(0.42%)、対照群1072人(0.45%)。ハザード比は0.91(0.83-1.01)で、非有意だった。

 サブグループ分析では、ベースラインで脂肪摂取量が多く、その後指示をよく守った女性でハザード比が小さいこと、乳がん細胞のエストロゲン受容体が陽性でプロゲステロン受容体が陰性だとリスク減少は有意、などが明らかになった。著者らは介入による利益が大きいと思われる女性(日頃から高脂肪食を好む女性など)を対象とする追加試験を行えば、有意な結果が得られる可能性があると述べている。

 米国人の食生活にも変化が見られ、脂肪熱量比率が減少している中で、これを20%に減らそう、という指導を受けた介入群の脂肪熱量比率の平均は、37.8%から24.3%に減少、6年後は28.8%になっていた。が、このレベルの変化では、CVD、大腸がん、乳がんのリスクには影響は見られなかった。

 日本では、成人の脂肪熱量比率の推奨値は25%以下となっている。厚生労働省の2003年の国民健康・栄養調査によると、脂肪熱量比率は、20〜30歳代男性と20〜40歳代女性で25%を超えていたが、それ以外の年代では推奨値以下で、全体として今回の介入群と同等かそれ以下だった。

 こうした状況で疾患リスクを減らすためには、ライフスタイル全般を見直すことがまず必要だろう。その上で、ハイリスク群を見出し、適切な医学的介入を行うことが望ましいのではないか。(大西淳子、医学ジャーナリスト)

 各疾患についての論文の原題などは次のとおり。
「Low-Fat Dietary Pattern and Risk of Cardiovascular Disease」。アブストラクトはこちら。 
「Low-Fat Dietary Pattern and Risk of Colorectal Cancer」。アブストラクトはこちら。 
「Low-Fat Dietary Pattern and Risk of Invasive Breast Cancer」。アブストラクトはこちら


■ 関連トピックス ■
◆2005.5.20 低脂肪食に大豆、食物繊維、ニンニクなどの追加摂取でさらに効果−−米国研究
◆2005.1.14 米国が食事ガイドラインの新版を公表

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