2006.02.21

末梢血管障害は脳卒中死の強力な危険因子 高齢者6800人に対する前向き観察研究から明らかに

 末梢血管障害(PAD)は全身の動脈硬化症と並行して進行し、それ自体、血管イベントの危険因子であるといわれる。しかし、血管イベントのなかでも脳卒中については、PADが脳卒中のリスクを高めるとする疫学成績がある一方、PADが有意な危険因子とは認められないとする成績もあり、脳卒中リスクに及ぼすPADの影響については、まだ確たる結論が得られていない。本学会では、大規模な前向き観察研究getABI(German Epidemiological Trial on Ankle Brachial Index)の成績が発表され、PADが脳卒中死の有意な危険因子であることが明らかになった。Municipal Hospital of Munich-HarlachingのR.Habert氏(ドイツ)がポスターセッションで報告した。
 
 研究対象はドイツ国内344のプライマリケア施設を受診した65歳以上の高齢者6880人(平均72.5歳)である。PADの診断はドップラー法により測定されるABI(Ankle Brachial Pressure Index:上腕血圧/足関節血圧比)により、ABIが0.9未満のものをPADと判定した。この方法により被験者をPAD群と非PAD群に分けて予後を3年間追跡、両群の血管イベント発生率を比較した。

 3年の観察期間を通じて94%の被験者が受診を継続した。生存に関する情報が捕捉できなかった被験者は1人だけであった。観察開始時にPADと診断されたものは全被験者の18%、間欠性跛行が認められたものは2.8%、PADに起因する下肢切断術または血行再建術の既往を有するものは2.3%であった。

 観察期間における両群の死亡率とイベント発生率を原因別に示す(表)。

 狭心症を除くすべての致死性・非致死性イベントについて両群間に有意差が認められた。PAD群のハザード比は全脳卒中死では2.2(95%信頼区間1.0-4.8)、虚血性脳卒中死では3.2(95%信頼区間1.1-9.5)であった。

 上記の成績は、PADが全原因死、脳卒中死のリスクを有意に高めること、なかでも虚血性脳卒中死に対してはきわめて強力な危険因子であることを明らかにした。また、この研究ではABIと脳卒中死の関係についても解析が行われたが、ABIが低いほどリスクが上昇することも明らかになった。Habert氏はこれらの成績に基づき、高齢者に対してはPADのスクリーニングを実施することが望ましく、ABIが診断指標として有用であると述べた。(小林 圭)

Information PR

ログインしていません

Close UpコンテンツPR

ログインしていません

もっと見る

人気記事ランキング

  1. アルツハイマー治療薬開発が進まない理由 理化学研究所神経蛋白制御研究チームシニア・チームリーダーの西道隆臣氏に聞く FBシェア数:118
  2. JCHO東京高輪病院で感染症内科医7人一斉退職 2017年4月から、ほぼ全科で土曜休診に FBシェア数:640
  3. 広がる中学生のピロリ検診・除菌 ニュース追跡◎エビデンス乏しく副作用の懸念も FBシェア数:547
  4. 酸素療法で飛んで行ったメガネ 倉原優の「こちら呼吸器病棟」 FBシェア数:69
  5. 急性肺塞栓除外のための新臨床ルールの提案 Lancet誌から FBシェア数:288
  6. なんでこんな検査を定期健診に入れている? 記者の眼 FBシェア数:206
  7. 「救急医にはアイデンティティーがない」の呪い 薬師寺泰匡の「だから救急はおもしろいんよ」 FBシェア数:55
  8. 57歳男性。両下腿から足背の浮腫と紫斑 日経メディクイズ●皮膚 FBシェア数:0
  9. 大型マンション近くでも埋まらない医療モール その開業、本当に大丈夫ですか? FBシェア数:1
  10. 高齢者の微熱、実は重篤なケースも 大井一弥の「即解!高齢者薬物治療のピットフォール」 FBシェア数:34