2006.02.20

抗血栓治療は頭蓋内動脈狭窄例における予後増悪因子ではない WASID試験の解析結果を報告

 頭蓋内動脈狭窄病変を伴う脳血管障害患者を対象にアスピリンとワルファリンの再発抑制効果を比較したトライアルWASID( Warfarin Aspirin Symptomatic Intracranial Disease )研究によれば、2年間の虚血性脳卒中発生率はアスピリン群20%、ワルファリン群17%であり、このタイプの患者では抗血栓治療を行っても再発リスクの高いことが明らかになっている。また、抗血栓治療下で虚血イベントをおこした症例は再発リスクがより高いこと、アスピリン投与中に脳梗塞を発症した症例に対しワルファリンが救済治療にならないことを示唆する報告もあり、抗血栓治療に対する懸念を生じる一因ともなっている。本学会では、これらの問題に答えるためWASIDのデータを再解析した成績を米Emory 大学のLucian Maidan氏が報告、抗血栓治療に伴う再発リスクの上昇、抗血小板治療下で発症した脳梗塞に対するワルファリンの有効性はともに認められなかったと述べた。

 WASIDでは50〜99%の頭蓋内動脈狭窄が認められる脳血管障害患者568例をアスピリンまたはワルファリンによる治療に無作為割付し、再発予防効果を検討したが、今回の解析では対象患者を試験開始前から抗血栓治療を受けていた群(抗血栓治療群)と受けていなかった群(非抗血栓治療群)に分け、その後の脳卒中、血管死のリスクを比較するとともに、前治療として抗血小板薬だけを投与されていた群(抗血小板治療群)におけるアスピリンとワルファリンの再発抑制効果を比較した。

 抗血栓治療群と非抗血栓治療群の試験開始時の背景因子を比較した結果、前者は後者に比べ年齢が高く、脳卒中既往例が多く、高血圧、冠動脈疾患、高脂血症などの合併症が高頻度であったが、背景因子の違いを補正した多変量解析の結果、抗血栓治療群の非抗血栓治療群に対する脳卒中と血管死のハザード比は0.93、狭窄病変領域における脳卒中のハザード比は0.98であり、いずれも有意ではなかった。
 
 次に、前治療として抗血小板薬だけが投与されていた症例においてアスピリンとワルファリンの再発予防効果を比較したが、アスピリン群のワルファリン群に対する脳卒中と血管死のハザード比は1.32、狭窄病変領域の脳卒中のハザード比は1.92であり、アスピリン群でややリスクが高かったが、いずれも有意水準には達しなかった。

 Maidan氏は以上の成績から、抗血栓治療中に脳卒中を発症したとしても、それに伴う予後の悪化は抗血栓治療に起因するものではないと述べるとともに、抗血小板療法が失敗した症例に対する治療としてワルファリンが決め手とならないことが明らかになったとし、より有効な治療法(たとえば狭窄病変に対するステント治療など)の検討が必要と強調した。(小林 圭)

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