2006.02.16

【日本消化管学会:教育講演5】消化管癌の新しい化学療法

 「消化管癌に対する化学療法は、この5年で激変した」−−本講演の冒頭、国立がんセンター東病院消化器内科の大津敦氏はこう述べた。特に大腸癌、消化管間質腫瘍(GIST)に対する分子標的治療薬の登場が大きな影響を与えている。

 切除不能な進行大腸癌に対しては、かつての標準治療であった5-フルオロウラシル(5-FU)とロイコボリン(LV)に、イリノテカンを併用するFOLFIRI、またはオキサリプラチンを併用するFOLFOX療法の治療成績が示された。すでに、外来で問題なく治療ができるようになっており、国立がんセンター東病院でも150例以上の実績がある。

分子標的治療薬の登場で生存期間は約20カ月に
 こうした細胞毒性抗癌剤に加え、分子標的治療薬による治療成績向上も多数報告されている。大腸癌で最もインパクトが高いのがヒト型抗血管内皮細胞増殖因子(VEGF)抗体のベバシツマブ(BV、商品名:アバスチン)。BVは単剤では効果はないが、ほかのどんな薬剤に組み合わせても上乗せ効果が得られている。国内でも大腸癌を対象に一昨年から治験を開始、現在申請作業に入っており、早ければ年内に承認される見込みだ。BV以外にも複数のVEGF抗体が開発中で、日本でも治験が進行している。

 また上皮増殖因子受容体(EGFR)に対しては、抗EGFR抗体のセツキシマブ(CM)がイリノテカンとの併用で効果が認められている。CMは、現在のところ感受性規定因子はわかっていないが、皮膚毒性と、効果や反応性、生存期間などが相関する(皮膚毒性が強いほど効果が高い)ことがわかっている。国内では、臨床試験第1相の患者登録が終わった段階だという。また現在、CMとイリノテカンにBVを併用するという、分子標的薬の上乗せ効果が注目されている。さらにCMに続き、マツズマブ(EMD72000)も日本での治験がほぼ完了、パニツムマブも日本で臨床試験第2相がもうすぐ始まる見通しだ。

 「BVやCMなどの登場で、生存期間は約20カ月まで伸びた。さらに3年に延長できるのでは、と期待を抱かせるデータが出てきた。まだキュアのレベルにはいかないが、新たな化学療法剤が効いた症例で手術が可能になれば」と大津氏は期待感を表した。

GISTの治療体系も大きく変わる
 一方、従来の細胞毒性抗癌剤が全く効果を示さなかったGISTの治療も、イマチニブ(商品名:グリベック)の登場により、大きな変貌を遂げている。切除できなければ治療法のなかったGISTが、「2年生存率でいうと60%ぐらい違う」までになった。さらに「イマチニブの耐性例に対する2次治療として、SU11248が米国で認可された。日本でも治験が進んでいるが、米国での認可で承認申請が早まるかもしれない」。GISTに対する治療体系も、大きな変化が見られている。


 このほか、日本人に多い胃癌においても、BV、トラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)の治験が、国際臨床試験として近く国立がんセンターで開始される。大津氏は「国際臨床試験に参加することで、欧米と時差なく承認を取りにいけると思う」と話した。(佐原加奈子)

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