2006.02.16

【日本消化管学会:スポンサードフォーラム4】NSAIDs起因性胃粘膜障害をいかに制御するか

「超高齢化社会を迎え、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は解熱・鎮痛薬としてだけでなく抗凝固療法としても広く利用されているが、それと共にNSAIDs起因性の胃粘膜障害が問題視されている。超高齢化社会を迎え、今後、NSAIDs起因性胃粘膜障害障害をいかに制御するかは、臨床的にも重要になってくる」−−本フォーラムの冒頭で、座長の獨協医科大学内科学教授の平石秀幸氏は指摘した。

超音波造影で粘膜血流を測定
 川崎医科大学検査診断学講師の畠二郎氏は、超音波で消化管粘膜を造影して粘膜血流を測定する手法を用いて、NSAIDsによる胃粘膜障害の予防、胃および小腸の粘膜障害を起こしにくいNSAIDsを評価した結果を発表した。会場からは、「通常、粘膜表面を見ているので、粘膜を(造影超音波で)断面で捕らえる、という解析手法は興味深い。血流量が見える手法は、薬剤の評価、特に小腸潰瘍をどう治療するか、という点で、大事な手法になるかもしれない」と声が上がった。

 畠氏は、次世代超音波造影剤「Definity」(現在のところ日本では未承認)を用いて、イヌの胃壁の造影超音波像を撮影した。そしてNSAIDsの1つであるインドメタシンとプラセボを投与した例では胃壁の血流障害が起こっているのに対し、インドメタシンと粘膜防御性胃炎・胃潰瘍治療剤「ガスロンN」を併用すると、胃壁の血流量はほとんど変化が見られず、「ガスロンN」が胃粘膜の血流低下を抑制することを確認した。さらに、同じNSAIDsでも、「ハイペン」はインドメタシンに比較して、胃粘膜および小腸粘膜の血流低下作用が少ないことを確認した。

NSAIDs潰瘍の予防は本当に必要なのか?
 「非アスピリンNSAIDsによる潰瘍は減少しているが、処方が増えている低用量アスピリンに起因する潰瘍は増えており、今後も増える見通しだ」−−東京医科大学第五内科(霞ヶ浦病院)助教授の溝上裕士氏は、NSAIDs潰瘍の現況を解説した。現在、NSAIDs潰瘍の治療には、プロトンポンプ阻害剤(PPI)もしくはプロスタグランジン製剤(PG)が用いられている。ただし、狭心症でアスピリン81mgを内服していた78歳女性で、PPIを16週間投与したところ潰瘍が悪化したため、PGに切り替え8週間後には潰瘍が治癒した症例を挙げ、「NSAIDs継続投与下ではPPIが有効と考えられるが、前庭部潰瘍ではPG製剤も考慮すべき」と述べた。

 また、NSAIDs潰瘍の予防について「PPIもしくはPGということがガイドラインに示されているが、日本人でのエビデンスがまったくない。H2ブロッカーではだめなのか、「ガスロンN」をはじめとする防御因子系ではどうなのか、といったことも含めて、今後、日本でのエビデンスを構築していく必要がある」と訴えた。

 会場からは「NSAIDs潰瘍の予防は、本当に必要なのか?」と問題が提起された。この問題に対して溝上氏は、「低用量アスピリンを飲んでいる患者が潰瘍により出血すると重篤化し、止血も非常に難渋することが多い。また、出血を契機に脳梗塞を再発することもある。潰瘍出血の既往があれば予防すべきだ」と述べた。また休薬の仕方について「1週間前から休薬することが多いが、血小板の寿命を考慮すると、2週間ぐらい休薬しないと効果が薄れることはないのではないか。いずれにしても、消化器内科が勝手に判断して休薬するのは危険だ」と語った。

ガイドライン改訂でNSAIDsは変更なし
 最後に、座長を務めた獨協医科大学内科学教授の平石秀幸氏は、「胃潰瘍診療ガイドラインのエビデンスは、すべて海外のデータに基づいている。海外のエビデンスに基づいたガイドラインでいいのか、と指摘されるが、日本人のデータがまったくないため海外データに頼らざるを得ない、というジレンマがあることを理解して欲しい。2005年度から厚生労働省班研究症によるガイドライン改訂作業がスタートし、2005年度、2006年度で改訂される見通しだ。NSAIDsについてはあまり大きなエビデンスの変化はないと思われる。H.pyloriの除菌どうするか、といったことが追加されるだろう」と語った。(佐原加奈子)

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