2006.02.16

【日本消化管学会:コアシンポジウム4】消化管癌の診断・治療戦略−消化管癌早期発見、サーベイランスの現状と展望−

 本シンポジウムでは、消化管癌をいかに効率良く早期発見するかについて、12人の演者が口演した。対象となったのは、食道癌(1題)、胃癌(3題)、小腸癌(1題)、大腸癌(5題)、潰瘍性大腸炎からの癌化(2題)で、幅広い分、議論はやや散漫になった印象があった。

 シンポジウムの中で、特に活発な意見が交わされたのは、胃の内視鏡検診の意義と、効率的なスクリーニングのあり方について。上部消化管のスクリーニング検査が内視鏡に移行しつつある一方で、対象の選定、標準的検査方法、制度管理、その後のフォローなどは各施設でまちまちなのが現状。検診現場の熱意と戸惑いを反映した意見がやり取りされた。

 福井県立病院外科の細川治氏は、1993年1年間に同病院で胃内視鏡検査を受け、胃癌と診断されなかった8364人を対象にした、長期サーベイランスの結果を報告した。被検者に3年に1度程度の定期的な検査を受けるよう推奨し、5年以上追跡者が2101人、8年以上追跡者が1404人だった。

 1994〜1996年に3672人が再検査を受け、32例で胃癌が発見された。最終的にはこのほかに54例で胃癌が発見され、計86例中77例が早期癌だった。累積内視鏡発見率は、男女別では男性、年齢別では55歳以上で、有意に高率だった。また、粘膜萎縮が高度である場合の発見率も高かった。

 細川氏は「原則として3年程度の間隔で検査を繰り返すことが胃癌の早期発見には重要。また、検査間隔は一律にせず、年齢、性別、胃粘膜所見に応じて間隔を変えることが費用効果の面から有効だ」と述べた。

 座長の棟方昭博氏(弘前大学第一内科)は集団検診における内視鏡検査の今後について細川氏に意見を求めた。細川氏は「X線写真を読影できる医師や技師が減っており、将来的には内視鏡検査が主流になるだろう。しかし、安全性、コストなどを考えると被験者の絞り込みが重要になる」とした。また、共同座長の名川弘一氏(東京大学腫瘍内科)が3年に1度という検査間隔の根拠を聞いたところ、「1年に1度受けるように、と言っても実際には2〜3年に1度しか受けない。現実に合わせた結果だ」(細川氏)とした。

 このやり取りの中で「名川先生も毎年、内視鏡検査を受けるわけではないでしょう」との細川氏の問いかけに対し、名川氏が「私はこれまで一度も検査を受けたことがありません」と答え、会場の爆笑を誘った。

 続いて、松江赤十字病院内科の井上和彦氏が、同病院人間ドックで1990年4月から2005年3月までの15年間に検査を受けた延べ5万6595人(内視鏡受診率87.1%)について、胃癌スクリーニングの成績を検討した結果を報告した。胃癌発見率は0.30%(172例177病変)、内視鏡治療率36.6%だった。また、最近8年間の発見率は0.36%(101例/2万8136例)、内視鏡治療率48.5%で、内視鏡検査が早期発見・早期治療に有用だとした。

 一方、95年4月から2005年3月までにHp抗体測定、PG法、内視鏡検査を同日に受けた受診者について分析したところ、PG(+)の受診者の胃癌発見率は2.34%(32/1366)で、Hp(-)・PG(-)受診者の0%、Hp(+)・PG(-)受診者の0.21%(5/2504)に比べ、有意に高率だった。

 井上氏は「血液検査による対象の絞り込みが、内視鏡による胃癌スクリーニングの効率を高める可能性がある」とした。


 名川氏が、精度の高い内視鏡検査によって粘膜萎縮などを調べることが、血液検査に替わる検査になり得るかを尋ねたところ、井上氏は「内視鏡を見る目がすべての医師で同じであれば可能だ。しかし、粘膜萎縮の程度などを一致させることは難しい。それに対しPG法は客観性が高い」と血液検査の有用性を強調した。

 また、「内視鏡検査では見落とし症例が存在するとのことだが、どんな対策を立てているのか」とのフロアからの質問に対し、細川氏は「写真を撮って保存し、後で見直すことが第一。当たり前だが、検査技術の向上こそが重要だ」とした。さらに、Hp(-)・PG(-)の受診者の扱いについては、「内視鏡検査から除外していいだろう」との考えを示した。

 シンポジウムの最後に、棟方氏が「すべての消化管癌のサーベイランスにおいて、ハイリスク者の絞り込みが非常に重要であることが再認識できた。臨床現場でも治療の効率化が求められるようになった。こうした積み重ねが、わが国の消化管癌による死亡を減らすことに寄与するはずだ」と締めくくった。(坂本正)

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