2006.02.16

【日本消化管学会:コアシンポジウム2】機能性胃腸症−有効な治療法を求めて

 本シンポジウムで、広島大学保健管理センターの日山亨氏は、1951〜2005年1月までに、6種類の消化管機能改善薬(メトクロプラミド、ドンペリドン、トリメブチン、シサプリド、イトプリド、モサプリド)とプラセボを比較したランダム化二重盲検試験を検索し、メタアナリシスを行った結果を発表した。条件に合致したのは28論文で、全体ではプラセボ群に比べ実薬群の治療成績が約30%優れていた。ただし、この結果に最も影響している要因は出版年であり、最近の論文になるほど治療成績が低下する傾向があったことも報告した。この理由は不明だが、1999年に作成されたローマ基準2の前と最近とでは機能性胃腸症の概念が変わっている可能性が考えられるとした。

 同じシンポジウムで、大阪府立母子保健総合医療センター消化器・内分泌科の依田忍氏は、嘔吐を主訴とする幼児期の牛乳アレルギー症例で、1時間あたりの胃排出率が25±17%と遅延することを発表。アレルゲン対策ミルクでは63%±5%と排出率が正常に戻ることから、小児ではアレルギーチェックも重要であることを指摘した。

 このシンポジウムでは、11人ものシンポジストが講演しながら、ディスカッションの時間を1時間以上確保するという最近の学会では珍しい展開となった。器質的に明らかな病変が見つからないのに症状が続くという、機能性胃腸症(Functional Dyspepsia:FD)を巡る事情の複雑さを反映した、意図的なプログラム構成といえる。

 FDの薬物治療の手順としては、(1)消化管運動改善薬、(2)酸分泌抑制薬、(3)抗うつ薬、(4)H.Pylori除菌治療――という段階を踏むのが各演者にほぼ共通した考え方だ。まず、FD患者の中でも欧米に比べ我が国に多いとされているサブグループの運動不全型を突破口とし、次に潰瘍症状型をカバーして、それでも改善が見られない場合は、非特異型の中に含まれると考えられている心身症を考慮し、最後に除菌の可能性を考慮する。

 愛知医科大学看護学部病態治療学の金子宏氏は、難治性のFD症例として阪神大震災で家を失い転居した69歳男性の症例を紹介したが、「この患者の問診で、サイコソーシャルな背景を把握するには35分かかった。向精神薬が有効なFD患者も存在するが、外来では消化管運動改善薬や酸分泌抑制薬で改善が見られない患者に絞り込んでから心身医学的なアプローチに基づく向精神薬治療を実施するのが現実的だろう」と指摘した。

 東京警察病院消化器センター内科の鈴木剛氏は、「研究のために最終的には分類するとしても、外来診療では、運動不全型と潰瘍症状型と判別しにくいオーバーラップタイプの患者が約7割を占める」と報告。大阪市大消化器器官制御学の門内かおり氏や、北大光学医療診療部の加藤元嗣氏は、消化管運動改善薬と酸分泌抑制薬の併用から始めてもいいという意見だ。

 加藤氏は「今はH2ブロッカーと消化管運動改善薬の併用から始めているが、意外なことにファモチジンの治療成績では、運動不全型と潰瘍症状型で差がつかなかったので、最初からプロトンポンプ阻害薬を使うことも今後検討しうる選択肢の1つだ」と話した。(平田尚弘)


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