2006.02.15

【訂正】【日本消化管学会:モーニングセミナー1】経鼻的上部消化管内視鏡検査の実際〜安全で楽しい内視鏡検査を目指して〜

 咽頭反射がほとんどなく、挿入から抜去まで患者さんと笑顔で会話ができる経鼻内視鏡。その概要を紹介した本セッションは、早朝にもかかわらず、来場者の強い関心を集めた。出雲中央クリニック理事長・院長の宮脇哲丸氏は、約4年間に5000例弱という群を抜く施行経験をもとに、経鼻内視鏡の利点と手技のポイントを報告した。

 経鼻内視鏡の最大の特徴は、患者の苦痛が著しく軽減される点にある。このため、検査を体験した患者から強い支持が集まっているという。

 出雲中央クリニックが経鼻内視鏡を導入したのは2002年2月1日のこと。以来、今年1月までに4780例を施行した。経鼻内視鏡の導入後、年率2〜3割もの勢いで受診者が急増したという。

 通常の経口内視鏡は、挿入中、舌根部に広くスコープが触れる。これが咽頭反射を引き起こし、患者に強い苦痛をもたらす。マウスピースを装着し、口内にスコープがあるため、会話もほぼ不可能だ。経鼻内視鏡ではスコープが舌根部に接触しないため、咽頭反射がほとんどない。同クリニックにおける経鼻内視鏡検査2738例中2545例、実に93%で、検査中、1度も咽頭反射が起きなかった。

 同クリニックで経鼻内視鏡を受けた患者にアンケートをとったところ、93%の患者が経鼻内視鏡を希望したのに対し、経口内視鏡は4%に過ぎなかった。また、経鼻内視鏡による検査前には、経口内視鏡による検査を2度と受けたくないか、との問いに対し、「受けてもよい」が45%、「受けたくない」が45%と拮抗していたが、経鼻内視鏡の検査後には、経口内視鏡を「受けてもよい」は19%に激減、「受けたくない」が70%に跳ね上がった。

 経鼻内視鏡は、咽頭反射の軽減という点では大きなメリットがある半面、痛みに敏感な鼻腔内をスコープが通過するため、鼻腔内の効果的な局所麻酔が成功のカギになる。宮脇氏も、苦痛の少ない手技の確立に導入後1年を要した。導入当初の2002年中は、鼻の痛みを軽減する麻酔法に試行錯誤を重ねた。この時期の成功率は97.8%で、860例中19例で経口内視鏡への変更が必要だった。

 苦心の末、宮脇氏がたどりついたのが「スティック法」。4mm径から6mm径のスティックに8%と高濃度のリドカインスプレーを噴霧することで、十分な麻酔効果が得られた。この方式に切り替えた2003年1月以降、今日までの成功率は99.9%。3907件の施行例で経口に切り替えたのはわずか7例だった。

 宮脇氏が上映した検査風景のビデオ映像では、座位で経鼻内視鏡を挿入されている被験者が、医師の説明を受けながら、終始、笑顔で質問に答える印象的な光景が示された。安全性についても、鎮静剤、鎮痙剤が不要、表面麻酔剤も経口内視鏡の半量で済むという。

 気になるポイントの1つが、経口内視鏡に比べて解像度が低いため、癌の見落としが生じないか、という点。フロアからもこの趣旨の指摘があった。これに対して宮脇氏は、「解像度が低かった旧機種を用いていた時には確かに見逃しの不安があった」という。対策として同氏は、近接観察をした上で少し薄めのインディゴを撒き、もう一度観察して万全を期したという。ただし、解像度が向上した新機種では経口内視鏡と遜色がない画質になっており、「現在では自信をもって観察できる」と強調していた。

 さらに、解像度では一歩譲るものの、経鼻内視鏡は小回りがきくため、十二指腸内や食道内における反転観察も可能という。総合的な観察能力は劣らないというものだ。

 宮脇氏は、統計的分析は未完としながらも、苦痛が少ない経鼻内視鏡が早期発見に有利という印象を持っているという。自院における経口内視鏡による検査では、4946例中50例の胃癌を発見しているが、うち早期23例、進行27例だった。これに対して経鼻内視鏡による4739例の検査では、ほぼ同数の48例の胃癌を発見しているが、早期32例に対して進行胃癌は16例で、早期例の発見が多い傾向があるという。受けやすさのメリットが大きいことを改めて強調していた。(中沢真也)


訂正 上記本文中の最終段落で、「自院における経口内視鏡による検査では、494例中50例の胃癌を発見しているが」とありましたが、脱字がありました。正しくは、「自院における経口内視鏡による検査では、4946例中50例の胃癌を発見しているが」です。読者の皆様と発表者、関係者の皆様にお詫びして、上記のように訂正致します。

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