2006.02.13

【日本消化管学会速報】NSAIDs惹起性の小腸潰瘍は食物繊維が関与、「低繊維食」で予防できる可能性も

 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)投与時の副作用として知られる小腸潰瘍は、線維成分を除去した無繊維食(または低繊維食)により予防できることが明らかになった。東京・新宿の京王プラザホテルで開催された第2回日本消化管学会で2月11日、動物実験の結果として、鳥取大学農学部獣医学科薬理学教室の佐藤宏氏が発表した。

 近年、NSAIDs投与により、胃や十二指腸だけでなく、小腸にも、慢性出血などを伴う潰瘍が形成されていることが明らかになったが、現時点では予防や治療の方法が確立されていないため、臨床現場で簡便に実施できる予防法が模索されている。今回、低繊維食という、患者に負担の少ない予防法の有用性が報告されたことは、関節リウマチなど長期のNSAIDs服用が必要となる患者にとって朗報と言えそうだ。

 佐藤氏は、実験動物としてラット、イヌ、ネコを使用。これらの動物に対し、1日1回朝食後にインドメタシン(ラットは10mg/kg、イヌとネコは3mg/kg)を投与したところ、いずれの動物種でも小腸に明らかな潰瘍が形成された。しかし、この潰瘍形成は、食物繊維を含まない餌(無繊維餌)で飼育するとほとんど認められなかった。

 次に、これらの無繊維餌に、不溶性食物繊維のセルロースを3%もしくは10%添加したところ、再び小腸潰瘍が形成されたが、可溶性の食物繊維であるペクチンを同量添加しても潰瘍はほとんど形成されなかった。小腸潰瘍形成の有無(餌中の食物繊維の有無)と、抗炎症効果の間には相関はなかった。また、このスキームに、胃酸分泌を抑制するH2ブロッカーのシメチジンを追加投与しても小腸潰瘍形成は抑制されなかったが、消化管運動を抑制する作用を持つアトロピンを投与すると小腸潰瘍の形成は抑制された。

 これらの実験結果から、佐藤氏は、「NSAIDsによる粘液減少と消化管運動亢進の条件下で、不溶性食物繊維などの未消化固形分が小腸粘膜とこすれあい、表層粘膜細胞が物理的に傷害される。これが発端となり、腸内細菌や胆汁酸といった増悪因子が存在することで、小腸潰瘍形成につながっていくのではないか」と考察した。

 古くからNSAIDs投与時の胃や十二指腸の粘膜障害は知られてきたが、近年、カプセル内視鏡やダブルバルーン内視鏡の登場で、小腸にもNSAIDs潰瘍が形成されていることが明らかになり、注目を集めている。一時、胃腸への作用が少ないCOX-2阻害薬の登場で、抗炎症薬による胃腸粘膜障害の副作用は解決できると思われた時期もあったが、その後、COX-2阻害薬には血栓症など、他の重大な副作用が存在することが明らかになり、使用頻度が減少。これに代わる薬剤がないことから、再びCOX選択性のない従来のNSAIDsが注目され、その副作用防止策が議論の的になっている。

 これまでNSAIDsによる小腸粘膜損傷を防ぐ方法としては、その発症機序から、プロスタグランジンの補充、消化管運動抑制薬の投与、抗菌薬の投与(腸内細菌対策)、胆汁酸吸着薬の投与などが考案されてきたが、その有用性はまだ確立されていない。今回、佐藤氏が報告した食事療法は、少なくとも動物では劇的な効果を示している。今後、ヒトでもその有効性が確認されれば、NSAIDsの適正使用が大きく前進することになりそうだ。(田島健)



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