2006.02.10

乳児ボツリヌス症にボツリヌス中毒免疫グロブリンが有効、入院期間、費用ともに半分以下に

 ハチミツを食べさせると希に発症のおそれがあるとして、日本でも話題になった乳児ボツリヌス症に対する特異的治療法として、ボツリヌス毒素を中和するボツリヌス中毒免疫グロブリン静注(ヒト)(BIG-IV、製品名:BabyBIG)の有効性と安全性が米国で確認された。

 乳児ボツリヌス症は希な病気だが、米国で報告されるボツリヌス中毒例の中では最も患者数が多いという。カリフォルニア州保健局(CDHS)は、職業上、暴露リスクを負う職員を5価(ABCDE)ボツリヌス毒素で免疫し、その血液から、ボツリヌス毒素を中和するボツリヌス中毒免疫グロブリン静注(ヒト)(BIG-IV、製品名:BabyBIG)を作製した。安全性と有効性を評価したところ、投与しなかった場合に比べ、入院期間や入院費などが半分以下になることが明らかになった。CDHSのStephen S. Arnon氏らの研究成果で、詳細は、New England Journal of Medicine(NEJM)誌2006年2月2日号に報告された。

 乳児ボツリヌス症は、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)の芽胞が大腸で増殖して神経毒素を産生、これが血流に入り神経筋接合部に不可逆的に結合することによって発生する。臨床スペクトルは、軽度で外来で対応できるものから突然の呼吸停止まで、幅広い。米国では毎年、80〜110人がこの病気で入院する。それらの症例のほぼすべてが、A型またはB型の毒素による中毒だ。日本では1997年までに16例、感染症法が施行された1999年以降では、2003年までに1例報告されているのみだ。

 成人患者の治療には、ウマ・ボツリヌス抗毒素が用いられている。が、深刻な副作用(血清病やアナフィラキシー)があるうえ、半減期が5〜7日と短く、患者がウマたんぱく質に感作されてしまうことから、乳児の治療には適用されていない。

 著者らは、1992年2月24日から1997年3月24日まで、カリフォルニア州内全域で二重盲検の無作為割付比較対照試験(RCT)を実施。続いて、BIG-IVが市販許可を得た2003年10月まで、全米でオープンラベル試験を行った。

 RCTの対象は、乳児ボツリヌス症疑い症例(急性の弛緩性麻痺を示し、後に検査で確認された)122人。75人はA型毒素、47人がB型毒素による中毒だった。59人を治療群、63人を対照群に割り付け、入院から3日以内にBIG-IVまたは偽薬を投与した。BIG-IVの用量は、体重1kgあたり50mg。50mgに、抗A型毒素抗体は15 IU以上、抗B型毒素抗体は4 IU以上含まれている。

 主要アウトカム評価項目である平均入院期間は、対照群5.7週、治療群2.6週(p<0.001)で治療群の方が有意に短かった。集中治療部門の滞在期間は5.0週と1.8週(p<0.001)、人工呼吸器装着期間は4.4週と1.8週(p=0.01)、経管または静脈内栄養補給の継続期間は10週と3.6週(p<0.001)、患者1人あたりの平均の医療費は16万3400ドルと7万4800ドル(p<0.001)と、すべての評価項目で治療群は対照群に比べ良好な結果を得た。原因毒素がA型かB型かにかかわらず、結果は同様だった。治療群に深刻な副作用は見られなかった。

 引き続いて行われた6年間の全米オープンラベル試験では、37州の382人の確認症例に、入院から18日以内にBIG-IVが投与された。うち366人は入院から7日以内に投与を受けた。これらの患者の平均入院期間は2.2週だった。うち、3日以内に投与を受けた287人では平均入院期間は2.0週、4日目から7日目までに投与を受けた79人では2.9週(p<0.001)で、早期投与がより有効が示された。患者1人あたりの入院費用の平均は5万7900ドルで、BIG-IVの使用によって節約できた金額は、推定3420万ドルだった。

 これらの結果から、迅速なBIG-IV投与は乳児に対して安全で、入院期間短縮やコスト削減を可能にすることが明らかになった。なお、ボツリヌス毒素はバイオテロに用いられる危険性があることから、米国では、完全ヒト組換え抗毒素の開発も進行中だ。

 本論文の原題は「Human Botulism Immune Globulin for the Treatment of Infant Botulism」。アブストラクトはNEJM誌Webサイトのこちらで閲覧できる。(大西淳子、医学ジャーナリスト)


■ 関連トピックス ■
◆2005.6.30 毒素10gで50万人超に被害、死亡率は最悪60%に、牛乳供給過程にボツリヌス毒素を混入するテロ対策の研究
◆2002.1.11 米国で、炭疽菌や天然痘などの診断方法を教育するサイト開設


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