2006.02.06

中等度以上のCO中毒では心筋損傷に要注意、長期的な死亡リスクは2倍強

 欠陥暖房機による事故から若者の練炭自殺まで、日本でも一酸化炭素(CO)中毒事故が頻繁に報じられているが、長期的な予後に目を向けた研究は世界的にみて多くない。このほど、新たな研究により、CO中毒が心筋障害を引き起こし、長期的な死亡リスクが2倍強に高まることが明らかになった。米Minneapolis Heart Institute Foundation のChristopher R. Henry氏らの研究成果で、詳細はJournal of American Medical Association(JAMA)誌2006年1月25日号に報告された。

 Henry氏らは、中等度から重症のCO中毒に心筋障害が少なくないことを先に発見、今回は、心筋損傷のある患者の長期的なアウトカムを調べた。その結果、院内死亡は7.1%だが、7.6年の追跡期間中にさらに38%の患者が死亡、うち44%が、心血管系に起因する死と見なされた。結果は、心筋障害は、長期的な死亡の独立した予測因子で、ハザード比2.1を示した。

 米国では、年間4万人がCO中毒により救急部門を訪れる。COは、自動車の排気ガスに含まれているほか、火災、暖房器具の故障などにより発生する。中毒症状としては、めまい、吐き気、倦怠感、頭痛、嗜眠などがある。神経系への影響については詳細に調べられているが、これまでの研究は、急性のアウトカムに目が向けられていた。

 そこで今回、著者たちは、心筋障害の長期的な死亡率への影響を調べる前向きコホート研究を行うことにした。

 対象は、1994年1月1日から2002年1月1日までに中等度から重症のCO中毒で入院、高圧酸素治療を受けた19歳以上の230人の患者。平均年齢は47.2歳。135人(59%)は事故、91人(40%)は自殺企図による中毒で、原因不明が4人(1%)いた。追跡期間の中央値は7.6年。主要アウトカム評価項目は、あらゆる原因による死亡に置かれた。

 230人中、心筋障害が認められたのは85人(37%)。うち52人は心臓トロポニン-I値が0.7ng/mL以上、29人はクレアチン・キナーゼMB値が5.0ng/mL以上を指標に診断された。これらの心臓マーカーの値が利用できなかった4人については、心電図の変化に基づいて診断した。

 入院期間の中央値は3日。全体に症状は深刻だったが、院内死亡は12人(5%)に留まった。内訳は、火傷と無酸素性脳障害の併発による死亡が8人、心停止が無酸素性能障害と死を引きおこしたケースが4人。心筋障害があった患者の院内死亡は6人(7.1%)、心筋障害がなかった患者も6人(4.1%)だった。しかし、退院後、心筋障害が見られた85人のうち32人(38%)、心筋障害がなかった145人のうち22人(15%)が死亡した。

 心筋障害群では、心血管系に起因すると推定される死(心停止、心筋梗塞、致死的な不整脈、脳卒中、心血管合併症に関係する死亡など)が14人(44%)、心血管系以外の原因による死亡(4人は自殺)が12人、6人は死因不明だった。

 心筋障害は無かったが死亡した22人については、心血管系に起因すると推定される死は4人(18%)のみで、11人はそれ以外の原因で死亡しており(3人は自殺)、7人については死因不明だった。

 多変量解析で、長期的な死亡の独立した予測因子として有意が示されたのは、心筋障害(調整済みハザード比2.1、p=0.009)と年齢(同1.2、p<0.001)だった。

 こうした結果を基に、著者たちは、CO暴露の可能性がある患者については心筋損傷の有無を調べる必要がある、という。さらに、心筋損傷が明らかになった患者については、心血管リスクを層別化する必要があり、引き続き研究が必要だと述べている。

 本論文の原題は「Myocardial Injury and Long-term Mortality Following Moderate to Severe Carbon Monoxide Poisoning」。アブストラクトはJAMA誌Webサイトのこちらで閲覧できる。(大西淳子、医学ジャーナリスト)


■ 関連トピックス ■
◆2002.10.4 一酸化炭素中毒への高圧酸素療法、無作為化試験で有用性が実証

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