2006.02.06

北米は深刻な状況、A型インフルエンザウイルスの9割超がアダマンタン耐性に タミフル、リレンザで同じ過ちを犯すな、米研究者が警鐘

 長い間、A型インフルエンザウイルス感染に対する第1選択薬として世界各国で用いられてきたアダマンタン(アマンタジンとリマンタジン)の耐性ウイルスが急増している。北米では2004年から2005年末までのわずか2年弱の間に耐性株の割合が1.9%から90%超に急増した。米疾病対策センター(CDC)のRick A. Bright氏らの研究成果で、詳細は、雑誌掲載に先立ち、2006年2月2日、JAMA誌Webサイトに緊急掲載された。なお、CDCは本研究の結果をもとに、今年1月14日、インフルエンザの予防と治療にアダマンタンを使用しないよう勧告を発している(関連トピックス参照)。

 アマンタジンは1966年から、リマンタジンは1993年から、米国でインフルエンザの予防と治療に用いられてきた。著者らは先に、耐性株の世界的な増加をLancet誌に報告している(関連トピックス参照)。1994-1995年の流行期には0.4%だった耐性株が、2003-2004年には12.3%に増加。米国では、2004年には1.9%だったが、2004年10月から2005年3月までの6カ月間に分離されたウイルスの14.5%が耐性を獲得していた。CDC未発表データによると、2004-2005流行期全体では、耐性ウイルスの頻度は11%だった。

 アダマンタン耐性は、ウイルスのM2蛋白質の1アミノ酸(26、27、30,31、34位のいずれか)の置換により生じる。耐性獲得後も、病原性はほとんど変化しない。

 今回の研究で著者らは、CDCのサーベイランスの一環として米国内26州で分離されたインフルエンザウイルスを分析し、M2遺伝子上にアダマンタン耐性を付与する変異が存在するかどうか調べた。

 その結果、H3N2型ウイルス209株中193株(92.3%)に、M2遺伝子の31位のアミノ酸の置換(セリンからアスパラギン、S31N変異)が起きていた。H1N1型ウイルス8株のうち2株(25%)にも同じ変異が見られた。S31N変異を持つ193株のうち3株には、27位の置換(バリンからイソロイシン、V27I変異)も生じていた。CDCはこれらの変異が共存しても耐性は維持されることを先に確認済みだ。

 これまで、アダマンタン耐性ウイルスは、老人ホームや介護施設などの長期入所者から分離されることが多かった。しかし、今回対象となったウイルスが分離された患者の平均年齢は23歳と若く、老人ホーム、介護施設などの入所者は14人しかいなかった。したがって、米国全土に広く流行しているウイルスが耐性を得ていると考えられた。現時点では、耐性ウイルス感染者がアダマンタン投与を受けていたかどうかは明らかではない。

 著者らは、さらに、メキシコで分離されたH3N2型ウイルス10株、カナダで分離されたH3N2型ウイルス3株の耐性も調べた。それらは、すべてS31N変異を持っていた。カナダでは先頃、2005-2006流行期に入ってから調べた47株中43株(91%)がS31N変異を持っていたと報告している。

 CDCの未発表データでは、アジアにおける耐性株の割合はさらに上昇しており、2004-2005流行期には中国で96%、香港72%、韓国36%、シンガポール42%になっていたという。

 得られた結果から、アダマンタン耐性ウイルスの頻度は、非常に迅速に上昇することが明らかになった。このことは、耐性ウイルスの出現と感染拡大の監視を怠らず、その結果に基づいて適切な予防治療法を選択することの重要性を強く示唆している。

 本論文の原題は「Adamantane Resistance Among Influenza A Viruses Isolated Early During the 2005-2006 Influenza Season in the United States」。現在、全文がこちらで閲覧できる(PDFファイル)。

 同じ号に掲載された論説(Editorial)で、米Memorial Sloan-KetteringがんセンターのDavid M. Weinstock氏らは、世界的な耐性ウイルス急増の背景と対処法を概説し、ノイラミニダーゼ阻害剤については、同じ過ちを決して犯してはならないと警告している。著者らは、以下のように述べている。

 アダマンタン耐性ウイルスの頻度が最初に上昇したのはアジアで、最大の原因はアダマンタンの濫用にあった。中国、ロシアなどでは、アダマンタンは処方箋なしに購入できる。また、中国や東南アジアの国では、トリインフルエンザH9型ウイルスに対処するため、家禽や家畜にアダマンタンを投与した疑いがある。H5型トリインフルエンザウイルスのアダマンタン耐性獲得頻度は、東南アジアでは1979-1983年には0%だったが、2000-2004年に31.1%まで増加した。一方、北米では、2004年まで0%を維持していたことが確認されている。これは、アダマンタン耐性ウイルスの選択がアジアの鳥類の中で起きた可能性を示唆する。

 インフルエンザは、他の感染症とは異なり、地球規模での管理が必要だ。公衆衛生担当者の判断と医師たちによる治療方法の決定が、地球の裏側にすむ人々の発症率と死亡率に直接影響するといってよい。薬剤感受性検査を含む確実な監視と、その結果に基づく迅速な対応が不可欠だ。また、治療薬を不適切に使用すると耐性獲得を招く。ノイラミニダーゼ阻害剤も見境なく使用すれば、同じ結果に至る可能性がある。

 医療従事者は、患者と地域社会を教育し、政府および非政府機関を通じた国際的な対応を実践し、抗ウイルス剤の市販薬(OTC)化の阻止を訴えるとともに、濫用も含む抗ウイルス剤の不適切な使用を引きおこす種々の要因を認識しなければならない。

 アダマンタン耐性については、適切な対処により感受性を回復させられることが、過去に実証されている。対応は、国際的に迅速に行われねばならない。

 論説の原題は「Adamantane Resistance in Influenza A」。現在、全文がこちらで閲覧できる(PDFファイル)。(大西淳子、医学ジャーナリスト)


■ 関連トピックス ■
◆2006.1.18 今シーズン流行の香港型インフルエンザウイルスで91%が耐性獲得 アマンタジン、リマンタジンの使用控えて――米CDCが緊急勧告
◆2005.9.29 アダマンタン耐性A型インフルエンザウイルスが2003年からアジアで急増−−米国研究

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