2006.02.02

日本のアテローム血栓症患者のリスク管理は不十分か、抗血小板薬やスタチンの投与率は最も低い――REACH Registryの分析結果

 日本のアテローム血栓症患者は、国際的に見て、肥満度などが明らかに低い半面、抗血小板薬やスタチンの投与率は低く、症候性患者の喫煙率は高いことが分かった。44カ国の5000人以上の医師が参加、アテローム血栓症イベントリスクを持つ7万人弱の患者を対象とした大規模な国際前向き観察研究「Reduction of Atherothrombosis for Continued Health (REACH)」Registryのこれまでの研究成果。全体としては、世界的に危険因子保有者の頻度が高いこと、確立された治療法があるにもかかわらず、リスク軽減に必要な治療が十分に行われていないことなどが明らかになった。

 REACH Registryは、世界の広範な地域の多様な人種を対象に、アテローム性動脈硬化の危険因子の存在頻度や治療の内容、アウトカムなどに関するデータを1次医療機関で広く収集、初の大規模な国際的データベースの構築を進めている。米Cleveland Clinic財団のDeepak L. Bhatt氏らは、今回、これまでに得られたデータを利用して、危険因子の存在頻度と、それらを標的とする治療に焦点を当てた分析を行った。詳細は、Journal of American Medical Association(JAMA)誌2006年1月11日号に報告された。

 REACH Registryは、アフリカを除く、北米、南米、西欧、東欧、中東、アジア、豪州の44カ国のデータを収集している。2003年12月から2004年7月まで7カ月間に対象者を登録、最長24カ月間の追跡が現在進行中だ。

 対象は、症候性(冠動脈疾患、脳血管疾患、末梢動脈疾患)の患者、または、無症候だが以下の危険因子を3つ以上保有する患者(糖尿病、糖尿病性腎症、足関節上腕血圧比(ABI)が0.9未満、無症候性の70%以上の頸動脈狭窄、1カ所以上の頸動脈プラーク、3カ月以上の治療を受けても収縮期圧が150mmHg以上の高血圧、治療中の高コレステロール血症、1日15本以上の喫煙、男性で65歳以上、女性で70歳以上)。

 今回の分析の目的は、ベースラインにおけるアテローム性動脈硬化症の危険因子の存在頻度と薬物療法を受けている患者の割合を調べ、リスクがどの程度管理されているかを知ることにあった。

 対象は、ベースラインのデータが完全だった6万7888人(うち日本人は5048人。日本のみ登録が遅れたため、今回のデータ分析は他のアジアの各国とは別個に行われた)。症候性患者は計5万5499人(冠動脈疾患4万258人、脳血管疾患1万8843人、末梢動脈疾患8273人)。危険因子を3つ以上持つ無症候者は1万2389人。全体の平均年齢は68.5歳。女性は36.3%だった。

 危険因子(糖尿病、高血圧、高コレステロール血症、肥満、喫煙)の存在頻度は、世界的に類似した傾向を示した。全体では、治療中の高血圧患者81.8%、治療中の高コレステロール血症患者72.4%、治療中の糖尿病患者または糖尿病の既往がある患者が44.3%で、いずれも頻度は高かった。

 全体では、過体重(BMIが25-30)39.8%、肥満(同30-40)26.6%、病的肥満(同40以上)3.6%で、多くの場所で同等だった。が、最も高値を示した北米では、それぞれ37.1%、36.5%、5.8%で有意に多かった。アジア、および日本では、いずれの頻度も明らかに低かった。

 リスク管理のための治療薬を投与されていたのは全体の78.6%。薬剤によっては投与頻度に地域差が認められた。世界的に、スタチン(全体の69.4%に投与されていた)、抗血小板薬(同78.6%)、その他のリスク低減効果が証明ずみの治療薬が十分に使用されていなかった。一般的なはずのスタチンを見ても、投与状況には地域差があり、最低は日本の44.6%だった。禁煙も徹底されておらず、全体では症候性患者の14.4%が喫煙を続けていた。なかでも日本は14.7%と最も高かった。

 ベースラインで、50%の患者が高血圧(収縮期圧140mmHg以上、拡張期圧90mmHg以上)を示した。高血圧と診断されている患者の54.9%、診断されていない患者の27.6%で、血圧はこのレベルにあった。また、糖尿病と診断されていなかったにもかかわらず、空腹時高血糖(126mg/dL以上)を示した患者が4.9%、空腹時血糖異常(100mg/dL以上126mg/dL未満)が36.5%いた。

 また、症候性患者の15.9%は、症候性の動脈疾患(心血管疾患または脳血管疾患、あるいは両方)を複数持っていた(polyvascular disease)。これは、アテローム血栓症を全身性の疾患として捉えて治療する必要があることを意味する。

 得られた結果は、すべての地域で危険因子は高い頻度で認められるにもかかわらず、確立された治療およびライフスタイル介入は不十分で、推奨治療と実際に行われている治療の間にギャップがあることを示した。スタチンや抗血小板薬など、豊富なデータに裏打ちされた薬剤でも、その使用頻度は適切なレベルになく、リスク低減の目標となる血圧、血糖値、コレステロール値、体重および禁煙を達成していた患者は一部に過ぎなかった。著者たちは、より積極的な介入を行い、目標達成を図れば、再開通術の必要性を減らせるのではないかと述べている。

 本論文の原題は「

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