2006.02.01

飲み過ぎ防ぐ酒の価格政策、ベストは安い酒の値上げ? 高級酒の値上げは低級酒の需要増やす――北欧のデータから

 アルコール飲料の価格が需要に及ぼす役割を調べる研究は、数多く行われてきた。が、それらの研究の多くは、多様なアルコール飲料をまとめて扱っている。アルコールと薬物の濫用にかかわる社会的肉体的要因の研究に取り組んでいる米Prevention Research CenterのPaul J. Gruenewald氏らは、アルコール飲料を種類と品質に基づいて9群に分類、価格変化と消費量の関係を調べた。得られた結果は、特定の製品を値上げしても、消費者は購入対象を換えることで対応、消費量は変化しない可能性があることを示した。詳細は、Alcoholism: Clinical and Experimental Research誌2006年1月号に報告された。

 これまでに行われた研究の結果を総合すると、アルコール飲料の価格を上げれば売り上げは減少、アルコールに関わる問題も減ることを示唆していた。が、アルコール飲料は複雑な商品群で、異なるタイプの製品(ビール、ワイン、蒸留酒など)が存在するうえ、それぞれに、高質から低質まで、質の異なる様々な製品が含まれている。そのため、消費者は、価格上昇時には、それまでとは違う種類の製品や、質が一段階低い製品を代替として選ぶ可能性がある。様々な価格の製品の中から選択できることは、消費者に、消費量は変えずに、値上げの影響を小さくする機会を与える。そこで著者たちは、アルコール飲料を質に基づいて分類し、価格が消費に及ぼす影響を調べることにした。モデルの作製に用いられたのは、1984〜1994年のスウェーデンにおけるアルコール飲料の価格と売り上げに関するデータだ。

 スウェーデンでは、1995年1月まで、飲食店で提供される酒類も含めて、アルコール度数3.5%を超える全ての飲料は、Systembolagetと呼ばれる国営の酒類専売店のみで販売されていた。そのため、市販された商品名、アルコール度数、容量、売り上げなどが全て記録されていた。同国では、1992年7月1日に課税方法が変わり、ワインと蒸留酒については価格幅が縮小、ビールについては拡大している。

 著者たちは、1984〜1994年の間に扱われた3716製品を蒸留酒、ワイン、ビールに分類、さらに質の差は価格に反映されると仮定し、無水エタノールにして1リットルあたりの価格でそれぞれを3分した。同国では、9群を価格の低い順に並べると、低質ワイン、中質ワイン、低質蒸留酒、低質ビール、中質蒸留酒、中質ビール、高質ビール、高質蒸留酒、高質ワインとなった。

 著者たちは、売り上げの数字を全て、飲酒年齢の国民一人あたりに販売した無水エタノールの量に換算した。そのうえで、製品価格が消費量に与える影響をSURE(seemingly unrelated regression equations)モデルを用いて分析した。

 その結果、高質のビールとワインの価格が上昇すると、低質の蒸留酒の需要は有意に増加(p<0.001)、蒸留酒とビールの価格上昇は、高質ワインの需要減(p=0.013)と、低質ワインの需要増(p=0.002)をもたらすことが明らかになった。モデルは、一般に、高質製品の値上がりは低質製品の需要増を招くことを示した。

 価格の変化が飲酒量に及ぼす鋭意用を評価するため、モデルを利用して、9種類のアルコール飲料の全てが10%ずつ値上げされた場合(1)、価格の上昇率は平均10%になるが、より高価格のグループほど上昇率が高いとした場合(2)、逆により低価格のグループほど上昇率が高いとした場合(3)の、需要の変化を推算した。その結果、需要は、(1)の場合は1.69%減少、(2)の場合には2.83%増加(ビールの消費増が顕著)、(3)では4.15%減少(蒸留酒の消費減が顕著)することが示された。

 得られた結果は、消費者の行動は価格に敏感に反応すること、値上げがあれば、影響がより小さくなる選択を行うこと、従って、飲酒に起因する問題を予防するために需要減をめざすなら、低価格製品の値上げが最も効果的であることを示した。もし、低年齢の飲酒者や大量飲酒者が、低価格製品を消費しているなら、この方法は特に有効と考えられた。(大西淳子、医学ジャーナリスト)


■ 関連トピックス ■
◆2005.4.14 青年期の深酒はその後の飲酒習慣を左右する、英国研究


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