2006.01.31

携帯電話は悪性脳腫瘍リスクを高めない、英国の大規模研究で判明

 携帯電話を使うと脳腫瘍になりやすいかどうか、という疑問に対する1つの解答が示された。英Leeds Institute of Genetics, Health, and Therapeutics (LIGHT)のSarah J Hepworth氏らは、大規模かつ長期的なケース・コントロール研究を行い、診断前の10年以上にわたって携帯電話を使用し、累積通話時間が113時間を超えていた人々においても、神経膠腫の有意なリスク上昇は認められないことを示した。神経膠腫は成人の中枢神経系の悪性腫瘍の中で最も高頻度に見られるもの。詳細は、British Medical Journal誌電子版に2006年1月20日に報告された。

 疫学的研究の多くは、携帯電話と脳腫瘍は無関係であることを示している。が、電話を使用する側の星状細胞腫リスクが上昇する、農村部では電話の使用と脳腫瘍に関係がある、アナログ携帯電話の使用は脳腫瘍リスクを高める、といった報告も少数ながらある。

 著者らは、「Interphone」プロジェクトの一環として、携帯電話の使用と成人の神経膠腫リスクの関係を調べるケース・コントロール研究を実施した。Interphoneは、携帯電話の使用と頭蓋内腫瘍リスクの関係の評価が目的の研究で、1998年から日本を含む世界13カ国で進められている。

 Hepworth氏らは、英国の5つの地域(英国の全人口の48.3%に相当)で、2000年12月1日から2004年2月29日までに神経膠腫と診断された18〜69歳の966人と、一般開業医のリストから無作為に選出した、年齢、性別などが一致する対照群1716人に面接調査を実施した。

 その中で、6カ月以上にわたって、週1回以上携帯電話を使用したと述べた患者に対してより詳細な質問を行い、携帯電話の機種や通話回数、通話時間などの情報を得た。通話にどちら側の耳を使うか、ハンズフリー・セットを利用しているかなど、脳への影響を変化させる要因も調査した。

 調査の結果、通話時間については、使用期間が10年以上のグループを113時間以下と113時間超に分けて評価したが、オッズ比はそれぞれ0.61(0.36-1.04)、1.11(0.7-1.75)で有意ではなかった。ハンズフリー・セットの使用などで調整しても結果は変化しなかった。都市と農村いずれについても有意なリスク上昇は認められなかった。

 また、神経膠腫発症の診断の1年以上前に6カ月以上の携帯電話を使っていた人を日常的使用者として、未使用者や非日常的使用者と比較したが、日常的使用者の神経膠腫発症のオッズ比は0.94(95%信頼区間0.78-1.13)で有意ではなかった。

 アナログ式の携帯電話の方がデジタル式より出力が大きい。出力レベルが脳腫瘍発症に関係しているなら、アナログ式の方がリスクは高くなると予想された。著者らは、アナログ携帯電話使用者に限定して同様の分析をおこなったが、結果はすべて非有意だった。

 なお、携帯電話を使用する側の神経膠腫リスクは、オッズ比1.24(1.02-1.52)と有意に高く、反対側については0.75(0.61-0.93)と有意に低かった。この結果について、著者らは、同側のリスク上昇のレベルと、対側のリスク減少のレベルが同等であることを考慮し、おそらくはリコール(想起)バイアスによると説明している。種々の情報を基に、患者が、腫瘍は携帯電話の使用が原因で生じたと考えている可能性は十分にある。そうした患者は、腫瘍のある側で電話を使用していたと回答する傾向が高くなるだろう。

 本論文の原題は「Mobile phone use and risk of glioma in adults: case-control study」。アブストラクトはBMJ誌Webサイトのこちらで閲覧できる。(大西淳子、医学ジャーナリスト)


■ 関連トピックス ■
◆2005.7.15 運転中の通話、ハンズフリーでも事故リスクは3.8倍−豪州の研究
◆2005.1.14 子供の携帯電話使用は親が制限すべき、英国での安全性調査から

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