2006.01.30

周産期医療の施設格差が明らかに 37施設のうち5施設で死亡率が20%超える

 全国の周産期母子医療センターにおいて、1500g未満出生の低体重児の死亡率に大きな格差があることが明らかになった。厚生労働省研究班の「アウトカムを指標としベンチマーク手法を用いた質の高いケアを提供する『周産期母子医療センターネットワーク』の構築に関する研究」(班長:大阪府立母子保健総合医療センター病院長、藤村正哲氏)が集計した。解析した施設の死亡率には、20%以上から0%までのばらつきが見られた。同班では、今後さらなるデータの蓄積と分析精度の向上をしながら、集積されたデータを活用した周産期医療の均てん化(全国的に質の高い医療を提供する)を進める考えだ。


 この調査は、全国の周産期母子医療センター42施設を対象とし、2003年に発生した出生時体重1500g未満の低体重児出産のデータ提出を求め、解析可能な37施設2145例が集計された。

 平均死亡率は10.8%であったが、死亡率は約20%から0%まで、広い範囲にほぼ均等に分布した(グラフ1)。例数58で死亡数ゼロ、例数77で死亡数2(死亡率2.6%)といった好成績のセンターもある一方で、例数100で死亡数16(死亡率16.0%)、例数83で死亡数17(死亡率20.5%)、例数85で死亡数18(死亡率21.2%)など、成績が不良のところもある。5施設で死亡率が20%を超えた。統計学的に有意な差も一部では生じた。例数と成績に関する相関は不明確で、例数が多く死亡率が高い施設も存在する(グラフ2)。また、出生時週数でリスク調整した死亡率はさらに拡大し、0%から30%までほぼ均等にばらついた。

 このデータベースをまとめた東京女子医科大学母子総合医療センター教授の楠田聡氏は「日本の周産期医療のレベルは国際的に高いと思っていたが、これほどの格差があることが分かって正直驚いた。まだ成績を上げる余地があるということでもある。データを活用して成績向上に活用するため、今後ともデータを蓄積し、精度も高めていきたい」と語る。

 愛育病院新生児科部長の加部一彦氏は、「成績が低い施設の実績が、成績が高い施設の実績に収れんし、全体の成績が均てん化したと仮定した場合」の死亡抑止数の試算を提示した(表1)。全体平均までそれ以下の施設の成績が上昇すると51人(現死亡数の22%)、上位50%の平均までそれ以下の成績が上昇すると120人(現死亡数の52%)の死亡が抑止できるとされた。このデータベースは全国1500g以下出生数の30%程度をカバーしている。したがって全国ベースでは400人(120人×100/30)程度の死亡が抑止できることになる。

 この調査は、ベンチマーク(成績比較)事業として実施されており、全国集計と当該施設の実績を比較したデータが参加施設には返送された。成績が低かった施設では、原因の検討が始まっている。

 研究班では今後の課題として、データの精度を上げるため、(1)データの継続的蓄積、(2)データ定義の統一や提出データの精度向上、(3)患者背景因子の違いによるリスク調整――を行っていく考え。また、優良施設と不振施設へのサイトビジット(施設訪問)も検討していく。優良施設のノウハウを広め、不振施設の改善の手助けをするためだ。

 研究班では、まだ症例数の蓄積やデータの精度が不十分であり確実なことは言えないものの、成績不振施設が存在する懸念が明らかになったため、2004年、2005年のデータを注視していく考え。

 現在進行中の診療報酬改定の議論の中で、新生児医療はすでに重点的強化項目に入っているが、人員体制や採算性が成績に関連しているならば、この領域に十分な資源配分が必要なことになる。一方で、ベンチマーキングを継続しても成績不振が解消しない施設があるならば、成績優良施設と同様なテコ入れを一律に継続していくことが疑問視されることにもなりかねない。(埴岡健一、日経メディカル編集委員)


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