2006.01.23

髄膜炎菌性疾患の早期診断では敗血症の兆候を見逃さないことが大切、英国の研究

 小児の髄膜炎菌性疾患は極めてまれで、初期症状が現れてから24時間以内に死に至る可能性があるにも関わらず、日常診療の現場における診断は難しい。しかし、発熱などの非特異的症状の発現から約8時間後、7割の患者に、敗血症による末梢循環障害に起因する下肢痛、皮膚色の異常、手足の冷感のいずれかが見られることを示した。英オクスフォード大学のMatthew J Thompson氏らの研究成果で、詳細はLancet誌電子版2006年1月11日に報告された。

 先進国では、小児の髄膜炎菌性疾患の発症率は10万人あたり約4人と少ないが、患者の10%は死亡する。髄膜炎菌性疾患で入院した小児患者の多くが、入院前に正しい診断を受けていない。症例数が非常に少なく、一般開業医がこの病気の小児患者に遭遇することはまれだ。教科書に書かれている標準的な症状(出血性皮疹、髄膜症、意識障害)を手がかりにするしかないが、それらは病気が進行してから現れる。

 研究の対象となったのは、16歳以下の髄膜炎菌性疾患患者448人(うち103人は死亡)。373人(うち99人が死亡)については、診断は微生物学的技術を用いて確認された。残りの75人(可能性例)には、紫斑性皮疹があり、髄膜炎または敗血性ショックのいずれかが見られた。

 全員について、診察に当たった一般開業医の医療記録と親から、入院前の症状に関する情報を得た。親には、最初の症状が現れた日時(発症)とそれ以降の種々の症状の発現について尋ね、さらに発症の2週間前までさかのぼって、何らかの兆候がなかったか質問した。

 開業医を受診したのは324人。最初の診察のあとで病院に搬送されたのは165人(51%)のみ。発症から入院までの時間の中央値は、15〜16歳が最長で22時間、1歳未満が最短で13時間、1〜4歳は14時間、5〜14歳は20時間で、中央値は19時間だった。

 発症2週間前に何らかの症状を経験していたのは113人(25%)。うち107人が上気道または下気道の感染だった。

 発症から4〜6時間は、自己限定的なウイルス疾患に伴う症状しか見られなかった。最初の症状は、5歳未満では発熱、5歳以上では頭痛だった。94%の患者がいずれかの時点で発熱を経験していた。年齢にかかわらず、初期には食欲不振、吐き気、嘔吐が生じた。多くの患者に上気道症状があった。こうした一般的な症状は、低年齢の患者で約4時間、年齢の高い患者では約8時間持続した。

 髄膜炎菌性疾患特異的な症状の中で最初に現れたのは、敗血症の兆候(下肢痛、皮膚色の異常、手足の冷感)だった。これらを経験した患者の頻度は、下肢痛31-63%、皮膚色の異常17-21%、手足の冷感35-47%。発現時間の中央値は8時間で、初回受診の前だった。

 一方、教科書で指標とされている症状が現れるのは遅かった。典型的な症状とされる皮疹は、当初は非特異的な様相を呈することが多かった。また、出血性皮疹を経験した患者は42-70%に留まった。髄膜炎に特徴的な、頸部硬直、羞明、大泉門膨隆などの症状が現れたのは発症から12〜15時間後と遅かった。最終的な症状である意識障害、せんもう、発作などは、1歳未満で15時間、より年齢の高い患者では22時間後に現れた。

 著者たちは、初期に見られる発熱や食欲不振、吐き気、嘔吐などの症状を基に髄膜炎菌性疾患の診断を下すことは無理だという。が、この段階で受診し、いったん帰宅した場合も、親はその後の経過によっては、再受診を躊躇してはならない。今回の結果は、敗血症の初期症状に留意すれば、髄膜炎菌性疾患を発見できる頻度は上昇し、入院までの時間を短縮できることを示した。それらの症状と髄膜炎菌性疾患の関係を親にも周知させれば、最初の診察で見逃される患者を4分の1程度に減らせるのではないか、と著者たちは述べている。

 本論文の原題は「Clinical recognition of meningococcal disease in children and adolescents」。アブストラクトはLancet誌Webサイトのこちらで閲覧できる。(大西淳子、医学ジャーナリスト)


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